第3話
5歳から貴族の教育も始まって、褒められると調子に乗る前世からの性格もあり、礼儀作法やマナーは上達していった。
学業も柔らかい脳みそのおかげかどんどん吸収し、10歳にしてお兄様達に追いついた。
それどころか、前世の記憶のある私は理数系に関しては家庭教師よりも上だったと思う。
『打倒ドルチアーノ殿下!!』を掲げる私は何もかもを頑張った。
カサンドリア王国には頂点に王族、順に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と爵位があり、我がディハルト家は公爵家。
あの王宮でのお茶会から自信をなくし王都の邸と我が領地以外の外出はせず、引きこもっていたが15歳になるとお母様の命令で少しづつお茶会に参加し、他の貴族家とも交流を持つようになった。
その中でも友人と呼べる令嬢も何人かできた。
学院の入学式では、入学前の試験結果から新入生代表に選ばれ挨拶をし、在校生代表の第2王子にもその時に挨拶はさせてもらった。
今の学院には第2王子と第3王子が通っている。
第2王子は3学年。
あの第3王子ドルチアーノ殿下は2学年にいる。
貴族の子息子女は学院に通うことは義務付けられているが、他にも優秀な平民が通っている。
『学院内では皆平等』と謳われていても爵位を傘にきて横暴な貴族の子息子女は意外と多いのも仕方の無いことだと思う。
だって皆んなお坊ちゃま、お嬢様として育てられているからね。
私は元日本人で差別の少ない世界の記憶があるから一部の人達を除いて偏見なく付き合えるんだけどね。
その一部の人間が、ドルチアーノ殿下とその婚約者候補の令嬢たちだ。
うん、仲良くする必要なんてないよね?
だって私が入学してからドルチアーノ殿下が睨んでくるようになったんだ。
会うのだって約10年ぶりだよ?
あと半年もしない間に候補から外れるんだよ?
うん、やっぱり仲良くする必要ないよね。
そして奴と交流も無ければ、会話もあるはずも無く、無事婚約者候補から外れたのだ。
第2王子のジョシュア殿下とは学院内で会えば挨拶ぐらいはする。
彼にも婚約者候補はいるが、ドルチアーノ殿下ほど令嬢達を侍らしている姿は見たことがない。
王族特有の黒髪に金色の瞳は王子三兄弟とも同じだが、第2王子は柔らかいお顔のイケメンで、第3王子もイケメンかもしれないが私には魅力的には見えない。
だってこの歳で女を侍らしているんだよ?
将来あんなのと一緒になったら浮気され放題じゃん!
元日本人の私には夫を共有する側妃や妾など受け入れられない!
浮気する奴は絶対に嫌だ!
あ~本当によかった。辞退できて!
辞退してから数カ月。
私の視界に奴が映ることはなくなった。
だって気にならないんだもん!
だから存在すら忘れていた。
この日も私が入学してから私の友達とリアム兄様の友人も含めて日課になっているランチタイム中だった。
美味しい食事に楽しい会話はいつもの事。
「・・・おい!」
「おい!」
ん?
「おい!」
誰かを呼んでいる声が聞こえた。
友人達も気づいたようで私の後ろを見ている。
リアム兄様だけは珍しく怒った顔をしているが・・・
何だと振り向けば奴がいた。
「お前耳が悪いのか!お前俺の誕生日プレゼントはどうした?」
・・・・・・・・・。
うん、私以外の誰かに話しかけていようだ。
私は姿勢を戻して食事を続けた。
「おい!お前だ!いい加減にしろよ!」
そう言って私の肩に触れようとしたが、そこはリアム兄様がすぐに払い除けてくれたが・・・
「・・・何故付き合いもない貴方に赤の他人の私がプレゼントをしなければならないのですか?」
少し食堂内がザワついたような気がする。
「はあ?お前は俺の婚約者候補だろうが!」
「いいえ違いますよ?私は辞退しましたから」
「嘘を言うな!」
「本当ですよ。帰ったら確認して下さい」
「分かれば僕の可愛い妹に二度と話しかけないで下さいね」
普段は優しいリアム兄様が絶対零度の目を奴に向けると、黙って立ち去って行った。
「ヴィクトリア嬢、辞退の話は本当かい?」
リアム兄様の友人の言葉に私の友人も頷いている。
「もう何ヶ月も前に辞退したのよ?皆んな知らなかったの?」
何度も頷く友人たちは本当に知らなかったようだ。
さっきよりも騒がしくなった食堂に甲高い声が響いた。
「まあ!ディハルト嬢が辞退なさるなんて、余程自信がありませんでしたのね」
「あれだけ睨まれて無視されていれば自信なんて持てませんわよ」
「そうですわね。いつも貴女が可哀想でわたくし同情していましたのよ」
なんだ?黙って聞いていれば、次々好き勝手なことを言われているようだ。
でも言い返すのも面倒臭いんだよね。
どうしよっかな。
「僕のヴィーが辞退したのは本当だよ。それは王家も認めているんだ。だから君たちはヴィーのことは気にせず切磋琢磨してただ1人の婚約者になれるよう頑張ってね」
さすがリアム兄様!
角が立たないように上手くまとめてくれた。
それも誰もが見惚れる笑顔付きで!
「リアム兄様ありがとうございます。大好きです」
「僕もヴィーが大好きだよ」
そう言っていつものように頭を撫でてくれた。
今日の会話を聞いた生徒達からその親に伝わり、釣書が山のように我が家に届いたことも、かたっぱなしからお父様とお兄様達が断ったことも随分あとになってから知った。
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