第33話

「今いる島民はどうなるんだ、出てけってわけにはいかないだろう」


「そうね、でも子作りさせなければ少なくとも今いる世代で日本人は消滅、場合によっては殺害するかもよ」


「そんな事をすれば日本の警察はだまっていない」


「あんな離島でだれかが殺害されて証拠が残るかしらね、証言するのは在日朝鮮人ばかり、うまく証拠を掴んで逮捕できたとしても、逮捕した警察官がそのあと爆弾抱えたキチガイに吹き飛ばされるなんて、ぞっとするわね」


 最近頻繁に起きている在日朝鮮人の報復行為のことだろう、それくらいはニュースを見て知っている。


「お前、まさかあの事件の黒幕が成美ちゃんだっていうのか?」


「え」


 オンニが犯人――。


「餌を撒いている、と考えるのが自然よね」


 典子の考えでは宣美は在日朝鮮人だけの独立国家を青ヶ島に作り、日本人を排除、本島に残る仲間を守るためにインパクトのある報復行為を敢行、抑止力としている。


 石川孝介を取り込んで在日朝鮮人の選挙権や青ヶ島の独立を支援させるのは偽装で、本当の目的は傍観させる事、交渉中は敵も攻撃できない。


「冷戦、みたいなもんか?」


 石川がぬるくなった珈琲に口をつけた、唇がカサカサに乾いている。


「選挙権はともかく、独立国家が不可能なんて宣美が理解していないはずがない、無茶な要求を突きつけて人質がいる間は日本の警察も動きずらい」


 典子の目はなぜかキラキラと輝いているように見えた、話し方にも熱を帯びてくる。


「どうしたら……」


 麗娜にはどうすれば良いのかわからない。


「行きましょう、青ヶ島に」


「え?」


 典子の言葉に麗娜と石川が同時に言葉を発した。


「石川孝介、あんたも行くのよ」


 断固拒否の姿勢を見せていた石川だったが麗娜の「おねがい」の一言であっさりと考えをかえた。


 もう自分一人ではオンニを止められない、協力者は少しでも多い方がいい。口元に笑みを浮かべる典子に一抹の不安を感じながらも麗娜は美容室を休む理由をどうするか思案していた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る