最終節(終)魔力適正ゼロの俺が大賢者となって復讐を果たすまで


 結論から言うと。


 あたしの使った【虚無ヴォイド詐欺師スキャマー】は大陸全土に伝播し、勇者(笑)パーティに悪意を持って関わった人間を全て虚無の世界に引きずりこんだらしい。


 悪意の形もそれぞれだけど、勇者(笑)パーティに取り入って甘い汁を吸ってたヤツら、と言えば間違いないと思う。


 大半が国の重鎮だったり、町長だったり、村長だったり。

 政治に関わってる奴らばかりで。


 混乱に陥った国を無理やりまとめたのは王都ギルドだった。


 その上【ライアル】にしか分からない情報と【大賢者ライアルの杖】を提示し、【あたし】=【ライアル】である事を認めてもらい、本来の姿を取り戻した上で【幼き大賢者】という二つ名を貰い、国の政治を任される立場になった。


 勇者(笑)達が消えた理由や、魔王の真実なんかは、上手いこと話をまとめた。

 魔王や魔族のヒト達は本当は共生しようとしていた、とか、まぁ、罪は全部勇者(笑)達になすり付けて、解決という流れだ。



 そして、今日。

 やっと状況が落ち着いたので、魔王に彼の娘と面会してもらうこととなったのだった。



 魔王の娘……ルルは、呪いを全て解除したときに、ケットシーであった時の記憶も、姿も失ってしまっていた。


 最初の方は記憶は残っていたらしいが、徐々に【ケットシーとしてのルル】の人格は消え【魔王の娘のルル】としての人格と切り替わっていったらしい。


 あたしはルルを一時的にギルドに預け、勇者達を処理してから、ルルに全てを話し、全てを受け入れた頃合いを見て、魔王の元へ返した。


 少し寂しそうな顔をしたルルは、別れ際にあたしの傍に駆け寄り、


「いくらお礼を言っても足りない。……本当にありがとう……。あと、コレ」


 胸元から取りだした比翼の十字架。

 ルルがあの日の夜に欲しがった物だった。


「『ご主人様、いつまでも愛しています』って」


 知れず、涙が溢れて止まらなくなった。


「【前の私】はそう言ってたよ。今のルルも、あなたの事、大好きだからね」


 気付けば身長差も逆転してしまっていたが。

 ルルにギュッと抱きしめられ、あたしはただ、本来の年齢に合う泣き方で、みっともなく泣いてしまっていた。


「ねぇ、ルル」


「なぁに?」


「あたしがまた……ルルと旅がしたいって言ったらどうする?」


 ルルは少し考えて。



運送屋ポーターとして雇ってくれるなら考えてもいいかな」



 はにかんで笑うのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔力適正ゼロの俺が大賢者になって勇者パーティに復讐するって話 ノヒト @akirakatase

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画