最終節②魔力適正ゼロの俺が大賢者となって復讐を果たすまで


 勇者(笑)の快進撃は続いた。


 魔王城の城門を突破。

 無限回廊と呼ばれる幻術をぶち破り、幹部の一人【泡沫のエンリケ】を屠った所で、勘のいいやつが首を傾げた。


「敵の反応が鈍いですね」


「あ? 楽でいいじゃねぇか」


「仮にも本拠地ですよ?」


「罠、かもしれませんね」


 賛同しておいてやる。

 別になにかしてやるつもりは無いがな。


「魔王の居場所の付近に戦力集めてるかもしれねぇな。この前の闇の何とかってのも出て来てねぇしな」


 勇者(笑)、意外とまともなことを言う。


「何が出ても俺が叩き斬ってやるから大丈夫だっつーのよ!」


 ハイハイ脳き……、


「いかにもな扉、見えましたね」


 大賢者の杖をグッと握り、サーチをかける。


「扉の向こう……一人ですね」


「魔王か?」


「その奥、まだ通路があります。おそらく【闇のアンナロッテ】……。勇者様、申し訳ないのですが、奴は私にやらせてください」


「あぁ? 全員で行ったほうがはえぇだろ?」


「奴は幻覚、催眠に特化してます……ここで時間稼ぎをするのが奴の目的なら、その策を成らせる訳にはいかないのです」


 絶対に折れない。

 その意志を見せながら、最後にひと押し。


「ここは、私に任せて先に行ってください。魔王を討てるのは、貴方だけなのです」


「そこまで言うなら仕方ねぇなぁー!!」


 チョロすぎんだろうがよ!!!




 ―――――――――


「という訳で分断成功だ」


「じゃ、奴らが魔王様のとこに着くまで一戦ヤッちゃう?」


「アホ抜かせ……、幹部とガチ喧嘩したくないって言ってるだろうが」


 俺があの日の夜アンナロッテに頼んだのは【俺たちの邪魔をするな】だ。


 俺の復讐劇をエンタメにしたいなら尚のこと、下手にコントローラーが増えてしまっては巨大帆船も山の頂上へまっしぐらだからな。


「それで? 次はどうするの?」


 期待を込めて訊くアンナロッテに、なんの悪びれもなく答える。


「魔王に会わせろ」


「わぁお、ほんと発想が頭おかしいわ」


 くつくつと笑いながら、アンナロッテは空間に黒いゲートを出現させた。


「あとは見ていろ。次にあった時は同胞だ」


 俺の言葉に、アンナロッテの双眸が三日月の如く細まったのが見えた。


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