最終節①魔力適正ゼロの俺が大賢者となって復讐を果たすまで

 勇者パーティが、いよいよ魔王の討伐に向かう。


 そんな噂話は鎧を得た日の夜には王都中に広がっていた。


 翌日には国王に謁見。

 以前下賜された杖は俺の名を冠して【大賢者ライアルの杖】と名を変えられた。

 杖よ……可哀想に……。


 魔王城へは六日後の勇者(笑)装備シリーズの解呪が終わり次第出立という事になり、それまではじっくりと準備を行うこととなった。




 ――出立まであと三日。


 俺は毎晩恒例のルルの解呪を行っていた。

 背骨に沿ってとん、とん、と体内の呪術反応を叩いて探り、心臓の裏辺りに差し掛かったところで、手を止めた。


「なぁ、ルル」


「……?」


「もし、お前の最後の呪いを解いた時、ルルがルルで無くなってしまうとしたら、どうしたらいい?」


 気がつけばルルの背に覆い被さるように彼女を抱き締めていた。

 ……何でこんなことをしたのか俺にも分からなかったが、きっと、俺は失いたく無いのだろう。


「どうもしなくていいんじゃ?」


 ルルは俺の手に自分の手を重ね、


「どう変わってもルルは、ルル。根底は変わらない、と思う」


「ルル……俺はこの最後の呪を解くのが怖い」


 一つ一つの呪いを解いてきて気付いた。

 いちばん深い所に、根幹を書き換える呪い。

 それを取り巻くように身体能力減少や能力封印、外見変更などが刻み込まれていた。


「でも、多分ご主人様にとって必要な事、でしょ?」


「……多分な」


「ねぇ、ご主人様、コレちょうだい? 」


「なんでそんなもん……別にいいけど」



 その日は遅くまで二人で話し、

 明け方に、最後の呪いを解いた。


 そのまま抱き合いながら眠りにつき、

 目覚めた時――



 ルルの姿はどこにも無かった。



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