第2節(終)魔力適正ゼロの俺が賢者となって魔法で無双するまで。


「あら、起きたァ?」


 目を開けるとすぐ隣に傾国の美女とも言えそうな、妖艶な笑みの女が居た。


 魔王直属の幹部、闇のアンナロッテ。

 人間の容姿をしているがれっきとした魔族であり、俺のスキルをフル活用しても勝てる見込みは無い。


「ダンジョン攻略の当日の夜に来るか? 普通……」


「あなた達の常識なんて知ったこっちゃないわよ。私はあなたがどうやって私を楽しませてくれるかって事を確認しに来ただけなんだから」


 隣のベッドを見るとルルが深い眠りに着いていた。

 こちらに気づく様子は無い。


「あの子なら少し眠ってもらってるわよ?」


「さすが【闇の】」


 アンナロッテはこちらの胸元を人差し指でつつつっと弄びながら微笑む。


「あまりに面白いこと考えてたから、読心も途中で辞めちゃったのよ。私全部ネタバレされるの嫌いだから。……だから、ね?」


 なにが、ね?


「この後の話がどうなるのか、私はどう動かされるのか。楽しみで仕方ないのよ」


 頬から口元へ。

 指を滑らせてくる。

 抗い難い甘い香りが脳髄を溶かす。


 はぁ……。


「え!? ちょっと、私の魅了チャームかき消したわね!?」


「俺はね、操られるのは嫌いなの」


「うふふ、私の術にかからない男がいるなんて……ますます気に入ったわぁ」


 マジ勘弁してください……。


「頑張ったご褒美に、お姉さんが一つだけ言うこと聞いてあげる」


「その言葉、偽りじゃないだろうな?」


読心スキャニングでもしてみたら?」


 ダンジョン内での意趣返しのように両手を上げてこちらにクスクスと笑いかけてくる。

 強調される胸元と甘い香りにどうにかなりそうになるからマジやめてください。


「なら、頼みたい事が一つある。……なに、飽きさせやしないさ」


 物好きな魔族の女に計画の一旦を握らせた。

 ……ただ、想定通り動いてくれるかは怪しいの一言だが。



 後は、行動に移すのみ。

 全てをさらけ出すその時が近い。

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