第2節③魔力適正ゼロの俺が賢者となって魔法で無双するまで。
「という訳で、苦戦しましたが何とか撃退しました」
と、なんとも生産性のない報告をすると口々に、
「いや、魔族なんだから殺しとけよ」
「所詮賢者と言ってもこの程度ですか」
「俺ならノーダメだったな」
はい。素敵な評定ありがとうございます。
アンナロッテの居た先、鋼鉄製の扉を見つけた俺は
厚すぎて重すぎる扉を脳筋剣士と自称勇者に開けてもらい、最奥へと踏み入れた。
そこに安置されていたのは勇者(笑)シリーズ装備の一つ【勇者の鎧】。
「おお、ついに最後のひとつだな!」
雑魚の言葉に驚愕した。
最後の一つ? だと?
「既に他の装備を手に入れていたのですか?」
「あぁ。クソ魔王に呪いをかけられててな。一度全ての装備を大聖堂に預けて解呪してもらってんだよ」
「私の解呪でも対処出来ないほど強力な呪いでした。それこそ大聖堂の聖域効果も併せてやっと太刀打ちできるくらいの強力な呪いでした」
なるほど。
それでこいつらはいつまでも通常の装備のままだったわけね。
まぁ、別に何を装備していても関係ないが……。
ん、待てよ……?
「全装備が揃ったということは、ついに魔王に挑むのですか?」
「まぁ、そうなるだろうな」
「魔王が恐れる武具を揃えたのです。楽勝でしょう」
……なるほど。
ここで不審死されるよりはいい方法を思いついた。
コイツらにはより整った環境で、正々堂々とお亡くなりになってもらおう。
「んでよぉ」
どうした脳筋。
「これどうやって持って帰るんだ?」
このダンジョンには、特殊な魔力に覆われており、金属の装備の重量が約二十倍になる仕掛けが組まれている。
しかもここにあったのは勇者装備の中で最重量の勇者の鎧。
伝承によればこれを身につけた勇者には鉄壁の防御と羽のような身軽さを与えるらしいのだが。
残念ながらこれは【勇者の鎧(呪)】だ。
身につけたらどうなるか分からない。
全員の沈黙と共に、場の空気が凍りつく。
こうなってしまっては致し方ない。
「解呪にはどれくらい時間がかかりますか?」
「およそ一週間かと……それがなにか?」
「ちょっと大きい魔法を使います。……これによって魔力はすっからかんになってしまうので少しお休みの時間が必要になってしまうので」
杖を地面に突き立て、そこを中心とした球体をイメージする。
「
十秒ほどの探知。
巧妙に隠された目的のものを見つけそちらに杖の先をむけた。
「これからダンジョンのコアを破壊します。金属装備の重量変動は解除されますが、数分せずにダンジョンも崩壊します。私はルルに運んでもらいますので、皆さんは鎧を」
杖の先に赫灼の魔力が集約する。
「そ、それはまさか、赤の四天魔の最大魔術……ッ!?」
御明答。
「
斜め上方に放たれた赤の波光は真っ直ぐにダンジョンコアに直撃し、融解せしめた。
そのまま貫通し、勢いそのままに地表まで一直線の通路を作り出した。
「崩壊します! 止まらず走って!!」
魔力が尽き、倒れかけたところをそのままルルに担がれ、彼女の全力ダッシュに身を委ねながら叫んだ。
少し遅れて鎧を担いだ三人が全力で追いかけてくる。
まぁ、お前らはここで生き埋めでもいいけどよ。
せいぜい生き延びて見せろや。
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