第22話 僕が行ったことがない幸せになれる場所?

「わざわざ家まで来て嫌味を言うって何しに来たんだろうね」


「きっとダレルに遊んで欲しかったのね。ほら、双子の姉だから好きになる男性のタイプも似てるのよ」


「僕は殺されるくらいの殺気を感じたよ」

「それより魔法新聞作っているところに行きましょうか」


 彼女はまだいくつもりだったらしい。


「行かないよ。それはそのままでいいよ。僕は誰にもバレない自信があったんだ。サファリは気が付くかもって思ったけどね。だけど、それを君が知ってくれていたってだけで十分嬉しいんだ」


「いいこと言ってくれるじゃないの。せめて私の家族の前でもそう言ってくれると嬉しいんだけどね」


「それはない。僕たちは一番上と一番下の離れた位置にいるんだ。シェリーがあまりに自然に接してくれるから忘れそうになってしまうけど、僕たちが一緒になるなんてことはないんだよ」


「そうやってすぐに自分のことを下にいうんだから」

「別に事実を言っているだけだよ」


「でも、昨日の海王イカを倒したり、本当の力を見せてくれればすぐに……」


「それはダメだよ。それをしたら、最年少魔法使いとか名前つけられてきっと僕は監禁されて死ぬまで君に会えなくなっちゃうからね」


「それもそうね。それより今日は新聞屋へ行く予定だったのに、予定がなくなってしまったわ。誰か相手にしてくれる心優しい人はいないかしら」


 シェリーが僕の方をチラチラ見てくる。僕から何か言って欲しいようだ。

 こういう時はスルーするに限る。


「ソラン、シェリーお嬢様の予定がなくなったらしいよ。家に連れて帰ったら?」

「そうですね。それなら暇なダレル様と遊んでもらってはいかがでしょうか?」


 まさかのブーメランとして僕の方へ戻って来た。


「そうだね。仕方がないから暇なダレルに付き合ってもらうことにしよう」

「僕の意見はやっぱり無視か。それでどこへ行くの?」

 彼女は少し考えながら空を仰ぎ、キラキラした笑顔を僕にむけた。


「そうだな。君が今まで行ったことがない、幸せになれる場所にしようかな」

 彼女は非常に演技臭い言い方をしてきた。長く付き合って来たからわかる些細な違いだ。なにか違和感を感じるけど、それが何かはわからない。


 僕が行ったことがない幸せになれる場所?


 サファリに言って天国にでも連れていくつもりだろうか?

 あまりいい予感はしない。注意を払っていた方がよさそうだ。 

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