第3話② 語り尽くす


物心をつき始める頃合い、具体的に小4辺り。俺と灰茶は同じクラスになっていた。彼はいつも100点をとる秀才でクラスの人気者、対して俺はあまり人と打ち解けず、孤立していた。さらに、当時では不良少年少女らも一定数おり、それのパシリとして、俺は扱われいた。毎日毎日つらかったのを覚えている。


そんな中、事件が起こる。


クラス内のある少女の大事な大事なペンダントが何者かに盗まれたという。それは彼女の母の生前写真が入ったブレンド物の形見である。


彼女は極めて正義感が強く、犯人探しに尽力をそそぐ。そして、見つかった。俺のランドセルの中に。

全く知らない。誰がここに入れたんだ?きっと十中八九不良どものせいだろうが、俺は先生に席を立たされ、クラスの目の前で罪を認めさせようと強要してきた。絶対に犯人ではないと伝えようとしたら、周りからの突き刺さるような血塗られたナイフを俺に向けられる。


そのまま、肯定してしまった。


そこから、俺はいじめられたのである。地獄が始まった。


靴箱には落ち葉が詰められ、黒板消しを頭から落とされたこともある。当時、おそらく先生らは気づいていたかもしれない。けれども、誰も俺のことを見向きもしない。奴隷の気持ちをすぐにわかるほどには。


「...あんたがわるいのよ、あいつらにパシられてるから」


俺を陥れたあの少女が語る。黒く染まる夕焼けの空だった。


俺はその後、家に帰らず高遠山の山頂公園をただ導かれるように歩みを進めた。純黒に染まる空に散らばる煌めきの下、白髪がいた。


それが灰茶夜紅葉との出会いだ。


俺は同級生が近くに来たと、そそくさとその場を離れようとした。


「待てよ」


俺を引き留める声。


「お前、犯人じゃないだろ?」


「...いや、僕が犯人だよ...」


またしても肯定、後ろ向きで彼の顔は見えなかったがひとつのナイフが突き刺さりそうだ。だけど、そのナイフは血塗られてない。


「嘘だよ、すべてぼくのせいなんだよ...ぼくが不良らを注意していれば」


俺はその時、溢れ出る感情が高まっていた。


「すべて僕のせいだ!あいつらに気に入られなかった僕がちょっと反抗しちゃったから!」


溢れた涙が夕日に照らされ、復讐の炎に引火しようとしていた。


「バカ!」


彼は俺のことを叩いた。


「世界は理不尽なんだ!ヒーローなんて来ない!でもな、いつもヒーローはいるんだよ!」


「は?どこに!?」


「ヒーローは...お前だろ...」



夜紅葉があの時、言った言葉。俺は闇に堕ちてはいけない。ヒーローは闇に堕ちてはいけない。彼の死の真相を暴きたい。エゴに塗れたヒーローが。



なんて私は傲慢なの。覚悟を決めたヤミくんがかっこいいって思ってしまう。これは恋か愛か、わからない。でも、私は彼と一緒にいたいって思う。彼は絶対、そんなこと思っていないのに...




「なあ、ヒカリ?夜紅葉を殺した謎の人物に会いたい」


「...会って、どうするの?」


「復讐?いや、そんな単純ではない。そいつに言いたいんだ!俺の親友の方が立派だとな!!」


ヒカリはキョトンっとする。いつの間にか、紅く染まりし空の下にて...




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