第2話③ ヒカリは流れ
屋上に一人取り残された。いやむしろ考え事するにはちょうど良い。彼が言ってた煙のこと、昨日事故したばかりのはずの彼がどこでヤミくんと接触したのかということ、異能狩りについて何か他にも知っていそうなこと。陽はだんだん落ちてゆき空は黒く染まりつつある。
灰茶くんは何かを知っていると感じた。私は明日、彼の同行を探ることにした。彼の能力は、例えばテレビがなぜ映るのかを考えたときにアンテナから電波を受信して映す、それと同じ要領で彼から電波を出して脳細胞を刺激していることはわかってる。趣味の延長線上で調べたから。
それさえわかれば、対策の試用はある。彼の近くを超小型数ミリのドローンを飛ばしている。その装甲には電波を弾く塗料で塗られている。きっと気づかないはず。それが調査している間は、私は普通の学校生活を過ごす。
過ごしていたはずだったのに...
いきなり校門の方で爆発音が鳴り響いた。生徒一同は授業そっちのけでそちらの方を向いた。私たちの教室からちょうど見える位置に、黒のロングコートで白髪のお兄さんって感じの人がいた。彼は白い手袋をしていて、右手のそれを外す。爛れた手が現れた。まるで大火傷を覆ったような...
私は気づいた。さっきまでいたはずの灰茶が一瞬にして校門前にいることを。もちろん、少し後にして他のみんなも気づいた。彼以外に5人。そうあれこそが安全執行部であった。
顧問教師、
リーダー、
副リーダー、灰茶夜紅葉
以後副官
しっかりと、安全執行部の面々異能は履修済みだ。全く学校の表舞台には出ないけれど、私に掛かればすべてわかっている。彼らの恐ろしい能力も...
何やら彼らと怪しげな男と対話してるようだが、全く聞こえない。空間を操る能力、代田牧越の能力であろう。それにより、私たちと彼らとの間に見えない狭間を創り出した。
でも、灰茶の周りを飛ぶドローンがきっと教えてくれるはず。その時を待とう...
だが、その怪しげな男が手を広げ、両手から蒼く染まる炎の渦を絡め出し、瞬く間に辺り一帯を焔の海にした。
彼らはそれに包まれ、私たちからは全く見えなくなった。いったいあの炎の中で何が起こっているのかわからなくなった。
数分後、炎は徐々に消えていく。その跡地に残ったのは、倒れ込んでいた安全執行部の面々。悲鳴が轟く中、彼らは救急車で運び込まれた。大量の火傷痕、怪我の感じからしてほぼ瀕死状態。ただ彼らがどこに運び込まれたのかわからない。あの救急車は一見普通に見えたが、向かった方向には今ヤミくんが入院している病院ではなかった。
私は気になって、彼らがどこに運び込まれたのか調べた。けれども、有力な情報は出ず、手詰まりとなった。
▪︎
そして、1週間が経つ。そろそろ、ヤミくんが目を覚ますと看護師になり変わり、わかっていた。きっと彼なら...
「やっと会えたな、バカやろ!」
私はまだ帰って来ない灰茶に変身した。一度見たものなら記憶がある限りなんでも変身できる。
私は彼にこの1週間のことを伝えようとしたが...
私がヤミくんの病室へ向かえば、目の前にあの刑事2人組がいた。
「おや?灰茶夜紅葉くんではありませんか?先日、亡くなったとの一報が飛んできたはずでは?まさかフェイクなのか?」
私は驚いた。灰茶くんが亡くなったという事実、そしてなぜそれを彼らが知ってるのかという疑問。
「あるいは、あなた、別の人物?になり変わってるだけか?」
明らかに怪しんでいる。
「はは、フェイクや。ヤツに生きてること、バレへんように流したんや。それで、もう2度と表世界へ帰って来れへんからせめてこの中の彼と...」
「ほー...知ってます?」
彼らは不可解な笑みを浮かべた。
「いや、君はまだ置いておこう。来るべき駒は多いに越したことはないからね」
そう年寄りの方は言い、その場を立ち去った。あの刑事さんは味方なのか、敵なのか。
ヒカリにはわからなかった。
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