第2話② ヒカリに集う
病室に耳を傾けて、聞こうとしたがなぜか聞こえない。いったいこの中でヤミくんとあの刑事は何を話しているのか...
■
それから1日後、私はいつものように学校へ向かう。ヤミくんの席にはもちろんいないだけでいつも通りのクラス風景...
「おいおい聞いた?」
「昨日のアレだな」
「あのヤミ助が銀行強盗をぶちかましたらしいぞ」
一人一人がうわさをし始めている。いきなり能力を発現したみたいなとか、もしかして闇の組織に精通してるとか、根も葉もない半分陰口の噂や讃える噂と混同していた。
「灰茶、どう思うんだ?」
「ん?別に良くね?たかが能力発現に興奮しすぎ。理には必ず例外なんてあるんだから」
「能力持ちはさすがやな〜」
「そないことより、昨日のテレビ番組見た?」
彼の発言を境に周りから一気にその話が消えた。彼の能力、ハートブレイカー。自己意識他者反応型。彼の意識間での考え・価値が周りの他者へ伝播していく能力。人の心・思考を書き換える。
この能力を知ってからは絶対に裏切るぞと睨んできたが、普通にいい奴そうなんだよな。医師志望だし。余談だけど、昨日の夜に自分の能力を研究した結果、自己意識自己変化型だろう。私がこうなりたいという気持ちが私の身体を変化させる。変身能力であるはずだ。まあまだまだ深く研究のしがいはあるけれど。
私の趣味、家族には本読みと思わせてるが実際は異能力研究。執事の爺やにしか言ってないこと。この趣味、政府の許可なしじゃできないから。
つまりは違法行為だもん。
御令嬢がこんな違法行為してるなんて知れたら親の仕事に汚名が着くに決まってるから。それに、親には私がお淑やかであると思わせたいから。
だから私の部屋には隠し部屋を作ってある。本棚のある本を所定の位置にはめ込むことで本棚が動き、隠し部屋が現れる。その部屋には様々な医療器具、資料で乱雑にされている。ちなみにカルシウム投与して異能を獲得しようとした後が残ってる。だって、どの資料にもカルシウムと異能の因果関係について語られてあったから、まあ実際は嘘っぱちだろうけど。
そんなことよりも、なぜ私とヤミくんが異能?を手に入れたのかを解析しなければと私の血を採取し、成分分析してみた。もしカルシウムが増えていたらあの論理が成立する可能性が増したのに。結果は変わらず。でも、一応ヤミくんも分析にかけてみなければわからない。
そんなことを考えながら、糸目関西弁クソ怪しいマンが私の方へ来た。
「なあ、ヒカリちゃんだよね?」
「...そうですけど」
「今日の放課後、屋上に来てくれないか?」
「え、まあうん...」
側から見れば告白?かもしれないが、そんなわけないと授業が全て終わり、屋上へ向かう。春風が吹き、桜吹雪を舞わせる。バックに陽が下りようとしている。
■
「なあ、お前さ、異能持ってるよな?」
「え」
いきなりの困惑。
「大丈夫、誰にも言わんよ。昨日、能力の煙が出始めたんだ。君とヤミから」
「煙?」
「見えるんや、異能を持つ者から出る謎の煙。原理はわからんがな」
いったい何が起こってるのか分からなかった。煙とは、私からは全く見えない。
「俺は特別な眼らしいわ、特別な...」
なんだか、悲しそうに遠くを見つめる。
「ま、煙、見んくてもいきなりそんな目になったら誰でもわかるんちゃうか」
そう彼の言う通り、私とチラッと見ただけだが、ヤミくんの目も同じオッドアイだった。この目についてはよくわからなかった。
「違う、こんなことを言いに来たんちゃう...ヒカリちゃん、気ぃつけや。最近、異能狩りが出てきたんや...異能を狩り尽くして、元の何の個性のない世界を作りたいんやと。じゃ、忠告したで。ヤミにも後で、言ったってや」
そう言って、灰茶はその場を去った。あなたが直接、ヤミくんに言えばいいのにと思ったヒカリだった。
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