第1話③ ヒカリの能力
あの後、何も会話を交わさずに帰ってしまった。
あの異能取得者の灰茶さんと仲良くしてたからもしかしたら異能取得について何か知ってるのではと着いてきたのに...実際は変な神社でただ祈っただけじゃん。
あの後、変な空気のまま黙って帰っちゃったけど怒ってないかなと不安に思うヒカリ。やさしい...のか?
ヒカリの家は豪邸、白林財団のご令嬢である。母は敏腕のIT会社社長。父は財団の会長候補。現白林銀吉会長は私のおじいちゃん、白林十蔵。こんな裕福な家庭で育ったけど、私は凡人。計算力もコミュ力もない。ましてや経営力なんてありもしない。本を読んでいても何も得てない。ただ本を読む機械となってるだけだ。
こんな私を変えたい、特質すべきわたしの個性がほしい。だから、異能が必要なのに。得られなかった。
執事やメイド長に迎えられて、ディナーを過ごし、明日の課題を済ませて浴場に入り髪を乾かしてからベッドへ向かう。
明日もまた同じ日になるんだろう。
■
小鳥の囀りと共に目覚める。私の部屋の近くには大きな木があって、そこに鳥小屋が設置されてる。エサは執事長がいつもしてくれてる。毎朝、決まった時間に小鳥が来るから自然とその鳴き声で目覚めるのだ。
いつもは清々しく気持ちのいい朝だが、今日はなんか気怠い。ゆっくり起き上がり、洗面所のもとへ向かう。大きな鏡、そこに映し出されるのは赤と青のオッドアイの私だった。目の色、こんなんだっけと変わらず思ったが、サッと顔を洗い、寝癖をとかした。
執事長やメイド長に見守れながら朝食をとり、制服に着替え学校へ行く。私の豪邸から徒歩20分。途中大学生らしき男集団とすれ違ったが、何事もなく1人で歩く。でも、私は気づいてる。いつも後ろを見守るSPの人。いつもならそのまま登校するが、今日はなぜかからかいたかった。
十字路を曲がったら、ひたすら走り、横道に隠れよう。それを実行した。案の定、SPは見失った。ふふ、と笑い声が出...
あれ?声が違う。
「え?何...」
明らかに男の声、私は手元鏡で自分を映してみたら、あの大学生らしき組のある一人の顔だった。どうしようとあたふたしながらも、心の中で(もどれ!)と念じたら元の姿になった。
ついに異能を得た?とウキウキになりながら学校の近くまで来ていた。そしたら目の前に人だかりを見つけた。私はそのまま素通りしようとしたら誰かがその人だかりを飛び越えるのではないか。昨日のあの人だ!でも確かあの人も異能なんて持ってないはず...
彼が向こうへ飛んでいった瞬間...
ドゴっと爆音と突風が舞う。人々の隙間から見れば腕を上にグーして掲げたままのあの人の姿が見えた。上空に人が飛ばされてる。
私はすでに力を自覚していた。その力で警察の1人に成り変わり、彼の近くへスッと行く。彼は気を失っている。すぐに悟った、私と同じなんだなって...
■
そう思ってから、私は学校を初めてサボった。彼が運び込まれた病院へ向かう。はじめは警官のままで、隙を見て看護師に成り変わった。彼は特に目立った外傷はないため、1人だけの病室に入れられた。
そこで私は彼の病室へ近づいた。気になるじゃない、彼が能力を本当に得たのか。その病室の目の前に立った。しかし、いつの間にか後ろにいた刑事?2人が咳払いをしたことにより、私は...
「どうかされましたか?」
「いえ、これからその部屋にいる彼とお話がしたくて...」
若い刑事が言った。
「おかしいですな?彼とだけお話ししたいから病院の者は面会中来ないでくれって伝えましたが?」
緊張感が走る。
「...いや〜多分伝達不足ですね〜すみません」
「ははは!そうですか〜伝達不足、よくありますよね〜!!」
笑顔で若い刑事が言う。
「それでは...」
私は会釈して逃げるようにその場を離れた。2人だけになった刑事。
「あいつも一応調べとくれ」
「わかりました」
そう言って、中へ入った。近くの角で待つヒカリ。
「あの刑事さん、いったい何者...?」
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