そして……

 僕は浩香が重ねて来る唇を静かに受け止めた。

 涙に濡れる睫毛が微かな光を拾って輝いていた。

 どれだけの時間お互いの唇を啄んでいたのだろうか。

 やがて唇を離した浩香が『はぁっ』と小さく息を吐いた。


 『ごめんなさい……』


 浩香は掠れる声で謝った。


 『何で謝るの?』


 僕は浩香の頭を撫でながら訊ねた。


 『もう抑えられなくなったから……』


 浩香はもう一度『はぁっ』と息を吐くと唇を僕の頬に押し当てた。

 ただ僕は浩香が愛おしく思えて頭を撫でた。

 圧し掛かる浩香の重みが心地良くてそっと背中に手を回して抱き締めた。


 『ごめん。』


 僕は浩香に謝った。


 『どうして謝るの?』


 浩香は訊ねながら何度も唇を僕の頬に押し付けた。


 『浩香と出会った時からずっと好きでいたから……』


 浩香は僕の首に腕を回して強く抱き付いた。

 首筋に唇を当てていた。

 その唇が喉元から顎を通って再び唇を重ねて来た。


 僕の事をいつも見ていて何でも知っていて、いつもいつも僕の心を乱して、自分の思うように振り回して来る浩香が……




 ……大好きだ。

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