大学④

 その1か月後、早くも僕は内定を辞退した事を後悔していた。

 地元に帰ろうと思い立ったのは良かったが、その地元はこっちに比べればかなりの田舎で、企業も少なければ求人数も桁違いに少ない。

 求人を出している企業はそれなりにあるが、大抵は見るからにブラックな営業職だったり三交代の工員だったりで、働きたいと思える企業が殆ど無かった。

 そこで県境を一つ跨ぐ、車で1時間程の所にあるIT関連の企画をしている企業に目が留まり、そこを受けてようやく内定を貰えた。


 正斗:隣の県だけど内定出た。


 浩香:おめでとう!やったね!隣の県なら今よりだいぶ近いね。


 正斗:帰ろうと思えばすぐ帰れる距離だな。浩香の方はどうだ?


 浩香:私もA製薬の事務で内定貰ったよ!


 正斗:A製薬!?すごいじゃん。おめでとう。


 浩香:ありがとう!今度帰って来たら内定祝いしようよ。


 正斗:分かった。


 メールのやり取りを終えてベッドに寝転がり、今のやり取りをもう一度見返していた。

 『A製薬』と言えば地元に本社があり全国各地に支社を持つ大企業で、地元の学生の就職したい企業ランキングで常に上位にある人気企業だ。

 そんな企業から内定を貰える浩香を素直に凄いと思いつつ、自分がようやく手にした内定先が何だか急に小さく感じてしまっていた。

 僕の就職先がみすぼらしく思えるような企業からあっさり内定を貰える浩香なんて大嫌いだ。

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