大学③
その後は僕らしく平々凡々と大学生活を過ごし、いよいよ就職に向けて動き出さないといけなくなってきた3年生の終わり頃、特に何も考えていなかった僕は、就職サイトで適当にエントリーし、適当に会社説明会に参加したりドタキャンしたりして、4年になった4月初旬に大学の近くにある印刷会社から内々定を貰った。
そんな時、週1回くらいのペースで送られてきていた浩香からメールが届いた。
浩香:いよいよ就活だね。準備は出来てる?
正斗:準備どころかもう内定1つげっとしてる。
浩香:すごい!どこ?こっち帰って来るの?
そのメールを見た時、こっちに就職して社会人になれば、今まで以上に地元に帰る事は少なくなるだろうし、そうなれば浩香に会う機会も益々減るのだと気付いた。
正斗:まだ迷ってる。
浩香:うんうん。まだ時間はあるからじっくり考えた方がいいよ。
文字だけなので浩香がどういう感情でこのメールのやり取りをしているのかが読めず、何だか落ち着かない気分になっていた。
正斗:浩香はどうなんだ?
浩香:私はこっちで就職するよ。夏のインターンシップである程度絞ってるから。
浩香は3年の夏から動いていたと知り、少し焦りのようなものを感じると同時に、浩香と会う機会を増やすには地元に戻った方がいい……戻らなければ、という気持ちになっていた。
正斗:そうか。お互い頑張ろうぜ。
浩香:うん!もし就活でこっち戻る時あったら連絡してね。
正斗:分かった。
メールのやり取りが終わると、僕は数日前に届いた内定通知を取って広げ、そこに書かれた採用担当に電話を入れた。
会う機会を増やす為に折角貰った内定を辞退させる浩香なんて大嫌いだ。
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