中学校⑤

 結果的に学年主任のお陰と言ってもいいかもしれない。

 試験問題は気が抜ける程簡単に解けたし、多くの同級生が3年になった当初志望していたよりも上のランクの高校に進学する事が出来た。


 卒業式では女子の殆どと、男子も大半が泣いていた。

 中学になる時と違って結構進路がばらけていたので仕方ないかと思う。

 それでもやはり僕は何だか冷めた気持ちで泣いている同級生を眺めていた。


 『ついに高校生だね。』


 卒業証書の入った筒を持って校門前に立っていた僕に、また泣き腫らした目でやって来た浩香が声を掛けてきた。

 勉強したお陰か、あまり成績の良く無かった僕も浩香と同じ高校に進学する事が決まっていた。

 浩香ならもう一つ上の高校に入れたんじゃないかと思ったけど敢えて何も言わなかった。


 『あぁ。』


 『高校生になっても仲良くしてね。』


 泣いていたせいか、長い睫毛を涙でキラキラとさせながら浩香が笑顔でそう言った。


 『あぁ。』


 『もぉ!素っ気無いんだから。』


 ハンカチで涙を拭きながら笑う浩香。

 (やっぱ浩香って可愛いな……)と思いながら、浩香の頭を撫でたくなって手を伸ばそうとした瞬間、母親sから『写真撮るよ!』と声を掛けられ我に返った。

 相変わらず現像された写真には、無愛想な僕と輝くような笑顔の浩香が写っていて、その写真を見た両親が浩香を褒め千切るのはテンプレと化していた。

 いつもいつも、他家の親の賞賛を集める浩香なんか大嫌いだ。

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