高校①

 高校に入ると早速浩香の人気が爆発していた。

 入学式すら始まっていないのに、早くも数名の男子に声を掛けられている様子。

 それを笑顔で受け流している浩香に貫録の様なものを感じた。


 浩香とは別のクラスになった。

 クラスも違うし中学からの同窓生も居ないので、もう諜報部員のような真似はしなくて済むと思ったのは初日だけだった。


 『宝城って隣のクラスの井藤さんと幼馴染なんだって?』


 誰が広めたのか、僕と浩香の関係はあっという間に学年の中に行き渡っていた。


 『仲良くしようぜ!』


 中学の頃と違ったのは、僕が浩香と顔見知りである事を使って僕と仲良くしておいて浩香に近付こうとする輩が多かった事。

 別に友達を作るのは悪い事では無いので適当に仲良くしていたが、そいつらと遊ぶ時は絶対に浩香を近寄らせなかったので、次第にまた諜報部員のような真似をさせられるようになっていった。


 『井藤さんの好みは?』


 『好きな奴とか付き合ってる奴とかいるのか?』


 僕は当時浩香に訊いた事をそのまま伝えた。


 『一緒に居て落ち着ける人が好み。好きな奴は居るけど誰かは知らない。』


 そう答えた後、妙に落ち着いた雰囲気を醸し出す男子が増えたのは中学の時と同じだった。

 たかが好みを伝えただけで、こうも大勢の男子の性質を変えてしまうような浩香なんて大嫌いだ。

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