小学校⑤

 6年生が行く修学旅行は京都と奈良だった。

 京都まで新幹線で行き、そこからバスで観光地を巡るプランだったが、不幸にも接近していた台風の影響で1泊目のホテルから出られなくなって連泊になってしまった。

 大雨の影響で外にも出られず、ホテルに缶詰めになった僕たちは、宴会場に集められて注意事項を聞かされた後、ホテル内での自由行動を言い渡された。

 自由行動と言ってもこれと言って大きくも無いホテルの中ではすぐにする事が無くなってしまう。

 大半が退屈になって部屋に戻ってしまう中、僕はホテルの売店で親の為の土産品を物色していた。


 そこでふとロビーの方を見ると、浩香が5年の宿泊訓練で『浩香が好き』と言っていた奴と何処かへ歩いて行くのが見えた。


 取り敢えず暫く売店でウロウロしていると、突然背後から声を掛けられた。


 『よっ。』


 浩香だった。


 『よ。何かあったか?』


 『正斗クンが見えたから来たの。』


 『ふぅん。』


 さっきまでクラスの男子と一緒に居たのに、その事に一切触れずに平然と僕に話し掛ける態度に胸がもやついた。


 『ところでさ……』


 僕はさっきの様子を探ろうと浩香に質問した。


 『浩香って好きな奴いるの?』


 『いるよ。』


 ドクンッと心臓が跳ねた。


 『誰?』


 『それは言えないなぁ。』


 『僕の知ってるやつ?』


 『よく知ってると思うよ。』


 さっきの奴だと確信した。


 『そっか。』


 『?あぁ、おじさんとおばさん正斗の両親にお土産買ってたの?私も何か選ぼうかな。』


 何だか浩香の言い方が、さっきの事を誤魔化そうとしているように思えてしまい、そこから浩香とは殆ど喋らず、買うものだけ買って売店を後にした。

 ずっと僕と一緒に過ごしてきたくせに、いつの間にか好きな奴が出来ていて、それを一言も言おうとしてなかった浩香なんて大っ嫌いだ。

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