6.魔石と属性の基本

 リーダーのコボルトが話したのは、いつからか分からないがこの階層の奥へ行ったら、見たこともないものを見つけたと……。

 

 この階層はやっぱり迷路だった。

 だけど彼らはその身体能力で壁の上に乗り、移動や侵入者の監視なども容易い。

 

「どこ?」

「アソコデス……」


 リーダーのコボルトは自力で、二人はミーシャの下位魔法――《飛行フライ》で壁を登る。


「ほう……まぁ、行って見るか!」

「いいんですか? 罠という可能性は……」


「まぁ、その可能性も捨てきれないけど……もし罠だったら……」とミーシャは鋭い視線をリーダーのコボルトに向ける。


「イイエ、ケシテソンナコトハ…………」



「そう、ならいいけど……」

「私ガ案内シマス!」と二人の先頭に出て、軽々と移動する。


 壁の上を移動すれば、簡単に階層の端まで着くことができる。

 まぁ、造った者からしたらズルい行為だと思うが、頭を使うか、経験豊富の人間なら思いつくことだ。


 そしてミーシャとリーネは手を繋ぎながら、コボルトの背中を追う。


「アレデス!!」と階層の端は迷路の壁と同じ素材の壁がある。


 これが階層の壁なのだろう。

 迷路からだとここは行き止まりになるようだが、階層の壁に妙なものがあった。

 どこからか生えたのか分からないが、壁の角に結構な大きさの紫色の結晶があった。


「鉱石か……だったら高純度のレアものだ!」

「え、本当ですか!?」


「あぁ、ん? リーネ、鉱石については?」

「あ、いえ、純度が高ければレアということは知っています。武器屋に行ったとき教えてもらいましたが、その他の知識は……」


 なるほど。

 早速師匠として自分の出番みたいだな。


「じゃあまずは鉱石について詳しく教えてやろう! まずは降りよう」三人は降りて、ミーシャの授業が始まった。


 

「鉱石の誕生は自然なら長い時間を経て、大地の中にあるものが結晶化したものだ。まぁ、全体の種類では武器製造に使用される鉱石、だけど私が求めるのは魔法分野で使用される鉱石だ。例えば、杖の先端についている魔石や魔道具に使用する魔石などは内部に魔力を含んだ石で種類は六大属性の石や珍しい五大属性外の石……私達の目の前にあるのは珍しいものだね!」


「へぇ、だからこの杖高かったのか……」

「まぁ、普通杖は剣より高いよ。魔石は自分の適正の合う魔石を付けると魔力増大などメリットもあるし、火属性の魔石なら魔法行使しなくても、衝撃を与えれば火が発生したりなどなど……需要性は高いね!」


 珍しい魔石に近づき、魔道具のルーペを使用する。


「師匠、それは……?」

「魔力判定ができるルーペだね。これは無機物だけじゃなくて相手の中にある魔力も判定できるよ! まぁいくら私でも肉眼では魔力は判定できないけど……ん――」


 突然ミーシャは眉を歪ませ、言葉を止める。

 

「どうしました!?」

「……属性判定が完了しないな」


「え、それはどうゆう――」

「――属性は基本の五つだけど普通に考えれば属性と種類と魔法の種類は比例しないよね」


「あ、そういえば、確か上位版とかは……」

「あぁ、まぁ上位版が分かりやすいと思うが、属性を合わせることで魔法を成立できたのはかなり前のこと……水の派生は氷、炎と闇で黒い炎などなど……」


「うぅ……頭が痛くなってきました」属性の組み合わせで魔法の種類は多くなり、説明すれば当たり前に長くなり情報量が多くなるせいかリーネは頭を抱える。


 リーネは情報過多に弱いみたいだ。


「まぁ、簡単に言えば通常であれば属性の組み合わせは形では無理で魔法開発で誕生するのだが、形で誕生したらしいぞ」

「え~と、つまり六大属性以外の属性は魔力同士で開発されるけど、この鉱石の中にもう既に組み合わされた属性が……?」


「その通り……でも属性判定ができないということは当然五大属性でもなく組み合わせた属性でもない新種ということだ……」

「新たな属性ですか……」


「あぁ、色は闇属性に似てるが……色だけ見れば闇系かもしれないな……じゃあッ!!」とミーシャは懐の本を広げ、その中からツルハシを取り出した。


「まずは未知を知るには熟練でも苦労するもの……」


 カンカンッ!とツルハシで砕く。

 ミーシャの武具は全てがオリハルコン製だ。


 ガンガンッ!と戦う音が重く響き、ガシャンと塊の一部がミーシャの手に零れる。


「よし!」

「鑑定はどうやってやるんですか?」


「まずは、仲の魔力を抽出してあらゆる属性との反応を見ないといけないから時間はかかる」

「そうですか、私は先生にもっと魔法を教えてもらいたいです!」


「そうだな~、まだ鉱石は集まってないから鉱石収集から魔道具づくり、そして魔法国で売るからね。正直長く生き過ぎて、やることがあまりないんだよな~」

「師匠はいつから生きているんですか?」


「ん? まぁ、大体二千年くらいは……」

「二千年!!」


 まぁ、誰が聞いても驚く数字だろう。

 私だってそんなに生きるつもりはなかったけど、魔王様のお願いだから……とミーシャの頭に過去の風景が映る。

 

 だけどさっき魔王様の時代に名を上げていた奴にあったんだけど……。

 ん? 

 そういえば、何で奴は王国に居たんだ?

 確かライゲルが来訪者とか言ってたけど……まぁ、生きていたのは驚きだが、もう私には関係ないよね。

 まさか私の存在を認識されていたなんて、と心の中で呟いていると一人のコボルトが現れ、三人に近づく。


「リーダー!! たった今大勢の人間が迷路の奥を進んで行きました!」

「ナンダト! 人数ハ?」


「恐ラク、三百人以上ハイマス!!」


 三百人、数で言えばどこかの団か?

 いや、三百人以上、この大迷宮の攻略組の情報と似ている。


「へぇ~、今日は珍しいことばかりだね!」

「行クノカ?」


「あぁ、暇つぶしに……それにまだまだ鉱石採取は続けるつもりだから!」

「ソウカ、ゴ武運ヲ……強キ者ヨ……」


 そしてコボルト達とは別れ、ミーシャとリーネは攻略組を追った。

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