5.師弟関係
「え~と、助けてくれてありがとう……」
「ん、うん。まぁ、当然の流れよね!」
「す、凄いね。あんな魔法を行使できるなんて……」
「まぁ、生きている時間が大抵の魔法使いよりも何倍も生きてるからね」
その言葉にリーネは驚き、魔法を学んだ時に魔法を研究する魔法使いの中には長寿の人もいると……。
その大半がエルフや元々長寿である魔法使いが該当するが、目の前にいる少女はエルフの特徴である尖った耳もなく、普通の人間だった。
「でも、貴方は……」
「私のことはいいとして、君は少し人の中身の見た方がいいよ」と尻餅をつくリーネに手を伸ばす。
その手を取り、立ち上がる。
彼女はエルフのようだ。
「え……」
「だって、あの男達に利用されたんでしょ? 見た目だって信用できないのに何で一緒にいたの?」
ミーシャに問い掛けられ、リーネは自分の中にある大事なものが抉られたように感じる。
でも、それは自分の過ちであることを知っていた。
「私は、凄い魔法使いになりたいんです!!」少女は自分の胸の内にある夢を叫んだ。
「へぇ……」
「え?」ミーシャの反応は薄かった。
「魔法を扱う大半の者達がそれを目指すからね、当たり前の解答だよ」とミーシャの冷たい言葉にリーネは俯く。
「なら、どこかの魔法学院にも入学すればよかったんじゃない?」
「……それは最初に考えました。だけど私はお金がないんです……だからまずは――」
「なるほど、ごめん」
「いいえ、当然の流れです!」
「じゃあ君は魔法学院に入学するためにお金を稼いでいると……でも試験とか、それも……」
「はい……不安は山積みです。私にはこれしかないから……両親のためにも……」現実は厳しく簡単には先に進ましてくれない状況を認め、俯き、涙を流す。
「……冷たいこと言ったけど、実際それが現実……今のままじゃ魔法学院に入学するのも、最終的に夢も叶うことはない……。あの男達に君は利用され、私に助けられた。今まで教えてもらったことはあったけど、教えたことはなかった……長年生きてきた私からしたら何か縁を感じるんだよね~」リーネに後ろを見せ、表情を見せないミーシャは話す。
「え……」
「今存在する魔法使いの中を凌駕する実力と知識を持つ万能の魔法使いである私が教えれば魔法学院に入学しなくても、君を一流の魔法使いとして育てることができる」
「いいんですか……?」
「もちろん!」
万能の魔法使いと名乗った少女は笑顔で自分に魔法を教えると言い、再び手を差し伸べる。
リーネは迷うことなく、差し出された手を握る。
「じゃあ決まりね! え~と……」
「あ、申し遅れました! 私はリーネです。よろしくお願いします!」と慌ただしくお辞儀をする。
「私は、ミーシャだ。よろしく!」
「ミーシャ……あ、でも私は教えられる立場だし、しかも年齢だって年上だから何て呼べば……じゃあ師匠と呼んでもいいでしょうか!」
「え、まぁ別に構わないけど……」
「じゃあ師匠、これからよろしくお願いします!!」
これで二人は師弟関係となり、お互い師匠という立場が初めてであることと凄い魔法使いの弟子になれたことを楽しんでいた。
「で、師匠。これはどうするんですか?」二人の横ではリーダーのコボルトが気絶で倒れていた。
「あぁ、この迷宮は難攻で有名だからな。実際私も初めてだから何か情報を持っていないか聞こうと思うんだけど……」
「そういえば、この迷宮の攻略が止まっている階層はここからいくつか下に下がった層みたいです」
大迷宮は頭に大がついていることから広さが攻略難攻の理由にもなる。
難攻理由として広さ、モンスターレベル、トラップなどなど理由を上げたら幾つも出てくる。
「つまりそこがボスフロアか……こんな迷路みたいな所にコボルトが住んでいるなんて以外だったけど……」
「師匠は何しに迷宮へ来たのですか?」
「ん、私は鉱石を見つけて加工したりして魔法国で高値で売ろうとね……」
「そ、そうなんですか……」
「あはは、理由は別にいいでしょ! お金は国で暮らすのに必要でしょ!」
「まぁ、そうですね……」
「さてまずは……」
「ン……ンン?」
「あ、起きましたよ!」
「ん、やっとか……」
「ン、ナンダ!!」リーダーのコボルトは縄で縛られ、魔法で浮遊していた。
「悪いけど、少し情報を吐いてもらうよ!」少女二人はリーダーのコボルトを連れて森の中を進んでいた。
「クソ……ナ、ナニヲキキタイ?」
「そうだね。私は珍しい鉱石を求めて来たんだ! だからそんな類のようなものに心当たりは?」
「メズラシイ、コウセキ……」
ってコボルトに聞いたけど、身なりからしてそんなものはないし、やっぱりない可能性はあるな。
「ソウイエバ、コノ階層ノ奥デ珍シイモノヲ見ツケマシタ!」とコボルトは気になる情報を吐いた。
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