第32話 息子を溺愛
「晴斗~朝よ~」
平日の午前7時。晴斗の母親の洋子が起こしに来る。
「すぅすぅ」
一方、ベッドの上で晴斗はリズミカルに寝息を立てる。熟睡だ。
「ねぇ晴斗! 起きてってば!! 」
洋子は熟睡する晴斗の身体を揺する。
「…もうちょっと…寝か…せて」
寝ぼけながら、晴斗は無意識に応答する。言葉を選んだ記憶はない。
「もぅ。まあ仕方ないわね。疲れてるのよね。じゃあ、今日は学校や休んでもいいから。お母さんと一緒に寝ましょ! 」
洋子は薄く微笑みを浮かべる。どこか嬉しそうだ。
「よいしょっと。お邪魔します」
躊躇せずに洋子は晴斗のベッドに侵入する。
「本当にかわいいわね。息子だからかもしれないけど」
優しく洋子は晴斗の頭を撫でる。
気持ちいいのか。晴斗の顔も熟睡しながらも、わずかに綻ぶ。
「ふふっ。かわいい」
ギュー。
洋子は晴斗を抱きしめる。晴斗の顔が洋子の胸に覆われる。
「うぅぅん。なんだ? 」
徐々に晴斗の意識が覚醒する。洋子の豊満な感触が心地よい。だが、それと同時に違和感から目も覚め始める。
晴斗の視界がだんだん明瞭になる。嗅覚も稼働し始め、洋子の大人の香りがする。
「はっ。これは胸? それにホールドされてる。どうして? 」
「ふふっ。驚いちゃって。おはよう晴斗。安心して私の胸だから」
安心させるように優しい口調で洋子は説明する。
「そういうことか。って何でお母さんが俺のベッドにいるのさ」
当然の疑問が反射的に口から飛び出す。
「それは。晴斗が起こしても起きないからよ。正直、今日は晴斗を休ませて一緒に寝るつもりだったんだから」
「いやいや。それにしても最近、寝て起きたら隣にいること多くない? 」
「当然よ。息子が可愛くて仕方ないもの」
誇るように洋子は得意げな顔を形成する。
「そろそろベッドから起きなさい。学校に遅刻するわよ。学校は休まないんでしょ? 」
洋子はベッドから降りる。
「朝ご飯もうできてるから一緒に階段降りようか? 」
洋子は晴斗に向けて右手を差し出す。どうやら起き上がらせてくれるみたいだ。
「…うん。…ありがとう」
そっぽを向きながらも、晴斗は洋子の手を取り、立ち上がった。
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