第31話 ハーレム弁当

「晴斗一緒に昼食を食べよう! 」


「晴君! 私と一緒に食べよ! 」


 昼休み突入後、架純と祐希が晴斗の席に駆け寄る。架純は1つの弁当袋を持ち、祐希は2つの弁当袋を持つ。


「う、うん。いいよ」


 2人の勢いに押され、晴斗の返事はぎこちない。


「はい! 晴君の弁当! 」


 祐希は片方の弁当袋を差し出す。前と同様に青色の弁当袋だ。


「ありがとう。毎回ごめんね」


 お礼を言って、晴斗は弁当袋を受け取る。


「今日も手作りだから。完食してね」


 周囲に見せつけるように祐希は暴露する。


「お、おい聞いたか」


「ああ。あの野末さんが白中に手作り弁当を作っているだと」


「ただでさえ、あんな美少女に高頻度で話し掛けられる羨ましいのに。手作り弁当まで」


 クラスメイトの男子達から晴斗に嫉妬の視線が集中する。明らかに男子達は羨み、苛立ちも覚える。


「ちょっと待て。初耳だぞ。おい晴斗。毎日のように野末から手作りの弁当を受け取っているのか? 」


 真剣な表情で架純は晴斗に問う。普段の余裕は見受けられない。どこか焦っているように見える。


「うん。ここ1週間は毎日作ってもらってるかな。ありがたいことに」


 晴斗は祐希に視線を移す。


「ねぇ~。毎日、完食してくれるし、晴君はいつも褒めてくれるもんね」


 満面の笑みを浮かべた後、祐希は得意げな表情を架純に向ける。マウントを取るように。


「くっ。ポイント稼ぎか。晴斗の胃袋を掴まえてるわけか」


 悔しそうに架純はわずかに顔を歪める。


「私が1歩リードだね」


 ふふんっと祐希は鼻を鳴らす。


「あ~。やっぱり2人は早いな。玲香も混ぜて! 」


 玲香と千里も共に合流する。共に片手に弁当袋を提げながら。


 晴斗以外の美少女は周りの席に座る。偶然にも周囲の席が空いていた。


「いただきます」


 一旦、皆が食事前の挨拶をする。今では、架純も祐希も席に腰を下ろす。


(今日はどんな食べ物が入ってるだろう?)


 ワクワクしながら、晴斗は祐希から受け取った弁当箱を開ける。弁当箱の中身が露になる。


(うわぁ~。美味しそう~~)


 弁当箱の中には唐揚げ、ブロッコリー、ひじき、スクランブルがおかずにあり、ふりかけの掛かったご飯もある。


「白中君のご飯は美味しそうだね。お母さんの手作り? 」


 興味が惹かれ、千里が晴斗の弁当箱を覗き込む。


「いいや違うよ。野末さんの手作りだよ! 」


「そうなの! いつも美味しそうに食べてくれるんだよ。それと、できれば祐希って呼んで欲しいな」


 おねだりするように祐希は甘い声を漏らす。


「…善処するよ」


 今できる限界の返答だ。


「ふぅ~ん。手作りなんだ。もしかして白中君は女子の手作り弁当が好き? 」


「嫌いじゃないし。どちらかと言えば好きだけど」


「そうなんだ。じゃあ、うちも明日から作って来ようか? もちろん野末さんとは違うタイプの弁当を作るよ」


「あ! それはNG。晴君に弁当を作っていいのはこの学校で私だけだから! 」


 祐希が横やりを入れる。


「それは無理な言い分かな。晴君はあなたのものではないと思うから」


 バチバチ。


 学級委員と生徒会書記の目線が火花を散らしながら衝突する。両者ともに主張を譲るつもりはない。


(明日から手作り弁当が2つ。しかも、学級委員と生徒会書記の美少女から。そんな展開ありか。お腹も持つだろうか。俺、大食いじゃないし)

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