第21話 制服で書店へ

「制服で書店か。しかも白中と一緒か。楽しみだな! 」


 ご機嫌な口調で、架純は晴斗の隣を歩く。2人共に紺色のブレザーを着用する。


 さらに、晴斗は紺色のパンツ、かすみは同色のスカートを身に纏う。


 上下合わせて新緑高校の制服だ。


 緊張しながら晴斗も架純の歩幅に合わせて進む。2人は帰路の途中だ。


「それで、白中はどんなラノベを購入する予定なんだ? 」


 晴斗も架純も目的が一致し、書店に足を運ぶわけだ。両者共にライトノベルを購入する予定だ。


「以前に図書館で借りたラノベを買う予定だよ。『彼女にフラれたらメガネ美少女達に好まれた』の2巻を」


「おお。昨日、レインを媒介して電話で感想を教えてもらった作品か。話を聞いた限りでは最高に面白そうだったな」


 あれから図書室で借りた例のライトノベルを読み終わった。そのライトノベルの新巻(2巻)が本日発売だ。


 昨日の夜、ワクワクから晴斗は寝つきが悪かった。


「着いたな」


 他愛のない会話をしているうちに、晴斗と架純は学校から最寄りの書店へ到着する。


 学校から5分ほどで到着する立地であり、『パッツ』という建物内に大手書籍店TYATAYAが設置される。


 パッツは岡山の西大寺では目立つランドマークだ。


「1階はスーパーだからTYATAYAは2階だね」


 エスカレートに揺られ、晴斗と架純は2階へ移動する。


 10秒ほどでエスカレーターは晴斗達を2階へ運び終わる。


 晴斗達はラノベコーナーに向かう。


 その間に雑誌コーナーや漫画コーナーなどを通過する。様々なジャンルの書籍が本棚に並ぶ。


「おぉ〜。たくさんのラノベでいっぱいだな〜。しかも図書館で見ないタイトルばかりだ」


 架純は目を輝かせる。興奮気味に鼻息も漏らす。本棚に並ぶ書籍を隈なくすべて網羅するように、視線をあちこちに動かす。


「すごい食いつきだね。本当に雫さんはラノベが大好きなんだね」


「当然だ。ラノベの魅力はたくさんあるぞ。まず文章が読みやすい。挿絵がありつつ、キャラも可愛い。さらにだな——」


 興奮気味にラノベの魅力を捲し立てる架純。弁は収まらない。


「おっといけない。喋りすぎたな。あたしは書店を訪れた目的を達成しないとな」


 禁著の書籍を発見するなり、10冊ほどか架純は両手に抱える。


「え…。もしかして10冊全部購入するつもり? 」


 疑うように晴斗は尋ねる。一般的には10冊も同時にライトノベルは購入しない。


「うん? そうだが。何か変か? 」


 不思議そうにコテンッと架純は頭を傾ける。


 大した仕草ではないが、架純の美貌も相まって絵になる。


「…変ではないよ。お金たくさんあるのだと少し驚いただけだよ」


(10冊で6000円はするよね。高校生にしては痛い出費だよね。おそらく雫さんはお金持ちなんだろう。多分)


「お金か? そこまで所持してないぞ。ただ幼少期からコツコツ貯金していたお金をラノベを購入するために使用してるだけだ。だから、同学年の人間よりも少なからず多くお金を保持しているかもな」


 えっへんと貧乳の胸を架純は張る。誇らしげに。


「それにしても、白中は目的の商品を購入しなくていいのか? あたしは既に購入の準備まで済ませたぞ」


「あ、あぁ。そうだね。すっかり頭から抜けてたよ」


 新商品コーナーに晴斗は視線を走らせ、『彼女にフラれたらメガネ美少女達に好まれた』を探す。


 世の注目作品なため、目立つ場所に陳列されていた。容易に目的物を発見できた。


 表紙も晴斗好みのアニメチックな絵だった。


「どうやら簡単に見つけられたようだな。長居もする予定もないから。そろそろレジで会計を済ませないか? 」


 晴斗と架純はレジに移動する。

 

 2、3人並ぶ列にの後ろに着く。


 すぐに前の人間達は会計を済ませたので、晴斗と架純は順に会計に着手する。


 店員を介さず、現代的なセルフサービスを利用する。


 ライトノベルのバーコードをスキャンし、会計に移る。


 最後に、お金をセルフサービス機に投入し、会計は終了した。


 なんだか一般的な彼氏彼女のデートに似ていた。ラノベ好きカップル限定な匂いはプンプンするが。


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