第10話 教室にも逃げる場所はない
「ねぇねぇ風紀委員の週報見た?」
「うん見た。やばいよね」
ホームルーム開始5分前。大部分の生徒が登校を完了する。ほとんどの席は生徒達によって埋まる。
男女共に話題は風紀委員の週報に記載された岸本と今水に関するものだ。
どうやら晴斗のクラスメイト達も週報に目を通したらしい。
「今、思ったけど警察を呼んだ白中君もやばいけど、いじめの加害者の今泉君、岸本君、今水君もやばくない?」
「確かに。いじめなんて論外だよね」
「俺達はいじめの傍観者だったけど。やってた本人達はただの弱い者いじめをしているだけで。頭がイッていたのかもな」
声のボリュームを落とさずに、口々にクラスメイト達は意見を述べる。好き放題に言葉を発する。
もちろん教室に身を置く岸本と今水にも彼らの声は届く。
岸本と今水は隣同士の席だ。2人とも肩身が狭そうに縮こまる。
わずかに身体も震える。恐怖に怯えているのだろう。
教室に足を踏み入れてから会話もせず黙って席に座った状態だ。
岸本と今水の心境など露知らず、クラスメイト達は会話を加速化する。
岸本や今水に対する間接的な悪口が留まらない。嵐のように悪口が教室内に渦巻く。
(すごいな。クラスメイトの悪口を堂々と口にしている。今まで俺がいじめられる姿を黙って静観することしかできなかったのに)
クラスメイト達の行動に、少なからず晴斗は苛立ちを覚える。苛立ちに呼応して身体は熱を帯び、わずかに視界もボヤける。
まるで自分達は関係ないと言わんばかりの口ぶりだ。
今泉、岸本、今水以外にも晴斗が暴力を奮われていた際に笑ったり見て見ぬふりをしていたクラスメイトが大半だった。
いや、笑ったり見て見ぬふりをしていたクラスメイトの数を合計すれば、全員だと推量できる。
それにも関わらず、無関係な態度を取り続ける。自分の身を守るために。
そんな最低なクラスメイト達に怒りを覚えるのは当然だろう。
(だが、彼らのおかげで岸本と今水は苦しんでるのは間違いない。その点は感謝しないとな)
晴斗の視界に岸本と今水が映る。
両者共にいじめをしながら楽しんでた頃の面影は皆無だ。
あの頃の嬉々した笑みはどこにいったのやら。
居心地が悪そうに岸本も今水も俯く。彼らの視界には茶色の教室の床しか存在しない。
(申し訳ないけど。ざまぁだね。いじめをした罰だよ。それにしてもこれが他人の不幸は蜜の味か。確かにこの言葉は的を得ているな)
岸本と今水の弱々しい姿を視認しながら、内心で晴斗は笑いを抑えられない。
嬉しさと共に心の顔はケタケタ笑っていた。
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