第4話 共通の趣味
「おっ! 白中、奇遇だな」
偶然にも図書館に足を運ぶと、晴斗は架純に出会う。
「本当に偶然だな」
まだ架純とは話し慣れていないため、しっかり目を見て話が叶わない。口調も普段とは打って変わり、スムーズではない。
「何用で図書室に足を運んだんだい?」
意味深な笑顔を作り、架純は尋ねる。非常に興味津々な様子だ。
「うん。ちょっとね。ライトノベルを見に来たんだよ」
嘘を付いてもしょうがないので、晴斗は正直に答える。
「本当か!? もしかして君もライトノベルが好きなのか?」
食い気味に架純は前のめりになる。テンションも1段階上がる。
「君も?」
繰り返し、晴斗は疑問を投げ掛ける。
「ああ。あたしもライトノベルが大好きなんだ。その上、大手サイトのライトノベル系のネット小説も読む」
荒々しい鼻息を吐きながら、架純は力説する。
「そうなんだ。雫さんが…意外かも」
ようやく少し晴斗のテンションが普段に戻る。共通の趣味により同士を発見し、じんわりと気分が上昇する。
「意外か。確かにそうかもな。だが、あたしは決して隠さない。堂々と自分の趣味を公言する!」
自信満々の顔で、架純は言い切る。瞳から迷いなど存在しない。
「とにかくライトノベルのコーナーに行くぞ! 同士がまさかの興味持った白中だった事実にテンションが爆上がり中なんだ!」
晴斗の手を引き、架純は図書室におけるライトノベルの本棚コーナーへ向かう。
「ちょっ。まっ!?」
架純の力は想像以上に強く、簡単に晴斗は自由を奪われる。
そのまま、流されるように晴斗はライトノベルコーナーへ連れて行かれた。
「SCOだったり禁著。他にも大ヒット作品が山ほどあるな」
クールな表情で、本棚を視認した感想を架純は述べる。貧弱な胸の前で両腕を組んだ状態で。
「すごいね。でも今回借りるのは王道じゃないんだよね」
晴斗は本棚に整って並ぶライトノベルを物色する。タイトルを流し目で追う。
晴斗は目当ての書籍を手に取り、手中に収める。
「ほぉ。それはライヨムのランキングで不動の1位を取り続けて書籍化した作品ではないのか?」
「雫さんもこの作品を知ってるの?」
わずかに驚く。大手サイトとはいえ、ライヨムまでチェックしているとは予想だにしなかった。
「ああ。『彼女にフラれたらメガネ美少女達に好まれた』だろ。この作品はあたしも熱中して読んでたよ。白中はセンスがあるな」
「そうだよね! 本当に面白いよね!」
自身の小説選択のセンスを褒められ、晴斗は嬉しさを隠せない。自然と顔や口元が緩む。
「それではあたしも目当てのものを借りようか」
架純は禁著と訳されるタイトル書籍を手に取る。
「雫さんは超王道を借りるんだね」
「まあな。しかも、あたしはこの作品を読んだ経験がないからな」
2人は並んで歩きながら、図書室のカウンターは移動する。
「学生証を提出してください」
図書の女性教諭の要望に答え、晴斗と架純は学生証を提出する。
架純の写真映りは学生証においても高クオリティだ。
図書委員の業務を経て、晴斗と架純は無事にライトノベルを借りる。
「時間もわずかしかないが、趣味も共通していることだし。連絡先を交換しないか」
SNSのレインを起動し、架純はQRコードが表示されたスマートフォンを差し出す。
「いいの? 俺と交換しても」
半信半疑ながら、晴斗は問う。学年でも有名な美少女である架純と連絡先を交換する日が来るなんて。思ってもみなかった。
「気にするな。あたしは白中に興味津々なんだ。連絡先を交換しない手はない」
晴斗もレインを起動し、QRコードを読み取り、架純の連絡先を登録する。登録できたか、確かめるために一応、適当に考えたメッセージも送信する。
「うん。しっかりメッセージは届いたぞ。これから宜しくな白中。いっぱいメッセージを送り合おうな!」
にこっと、嬉しそうに架純は優美な笑顔を浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます