星に願いを

翌日、天文部の週一回の定例会が開かれた。僕は、椿と話ができると期待していたが、彼女は姿を見せなかった。彼女が部活を休んだのはいつ以来だろうか?僕は彼女が部活を休むほど傷つけてしまったのか?

そんなことを考えていると、後輩が心配そうに話しかけてきた。

「先輩、今日の定例会で観望会の話をする予定でしたが、椿先輩がいないのでどうしましょうか?」

観望会の話は急に決まったため、開催まで時間がなかった。僕は彼女が計画した観望会を壊すわけにはいかないと思い、後輩に準備を進めるように伝えた。

準備には二つの問題があった。一つは、僕が提案した恋愛に関する星座の話と星座を映すプラネタリウム機材の準備で、もう一つはビラのキャッチフレーズの決定だった。

プラネタリウム機材は、後輩から聞いたところ、椿が準備していることが分かった。残りの問題は台本の作成だったが、後輩の一人が天文に詳しく、すぐに内容を決めることができた。しかし、全員が素人だったため、脚本とアナウンスには悩んだ。最終的に、僕は知り合いの放送部の友達に頼み込んで助けてもらうことになった。

次にビラ用のキャッチフレーズの選定が必要だった。椿はいつも、無駄にセンスのある案を出してくれたが、今回はすぐに印刷しなければならなかった。僕たちは無い知恵を絞り、話し合いの末、「星に願いを。星空からの贈り物お届けします。」というフレーズを決めた。椿に比べたら稚拙だが、悪くない案だと思った。すぐに後輩が美術部の知り合いに連絡し、最終案を椿を含めて確認することになった。問題がなければ、その日に印刷してしまうことにした。

僕たちはたかだか二時間で疲労困憊なり、いつもの椿の情熱には頭が下がる思いだった。

僕は観望会を無事に開催できそうなことに安堵し、翌日には椿に部室で展望会の準備と僕の情熱について話ができると期待していた。しかし、翌日も、その翌日も椿は部室に現れることはなかった。

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