第100話 海水浴(3)

 ライズギルドメンバーで海水浴に来ていた俺たちは近くで悲鳴を聞き、モンスターに襲われている人たちを助けた。

 海水浴場から少し離れた場所にある旅館の裏手にあるダンジョンがダンジョンブレイクしていた。


 俺とヒデキ、かれんさん、瑠衣さん、総一郎さん、ひなたさん、天霧くん、ゆうりさんの8人で他のギルドメンバーが到着するのを待ってからダンジョンへ入る。


「多分なかはモンスターだらけだから、気を引き締めていくよ」


 ダンジョンブレイクの対応は前に一度経験したが、今回はあれよりもダンジョン規模が大きい。そこは不安だな。


 入ってすぐにモンスターの群れがいた。

 ゴブリンの群れだ。俺はすぐにファイヤーストームを放ち、殲滅する。


 そこまで狭いダンジョンでは無いので、モンスターが列をなすことも無いな。囲まれないように注意していこう。


 何回か戦闘を重ね、まだ強いモンスターは上がってきていない。このレベルなら外のメンバーに任せていいな。


 俺たちは1階のモンスターはスルーして、下の階を目指す。


 地下1階への階段はすぐに見つかる。モンスターが上がってきているため、倒しつつ階段を降りていく。


 地下1階~地4下階まではそこまで強いモンスターも現れずスムーズにきた。

 さすがに全てのモンスターをスルーすると外のメンバーが大変なので間引きつつ進んでいる。


 地下5階に降りる。この階は平原エリアか。

 上の階はどこも石畳エリアで小さな部屋に分かれていた。ここは開けたエリアなので、全体が見える。まだかなりの数のモンスターがいた。


 うん?エリアの端の方にモンスターの集団が見える。

 ゴブリンの集団で中心にいるのは何だ?

 こういう時はゴブリンキングがいるのが殆どだったが、今回は違う。

 ゴブリンキングより少し小さいが、かなり強そうだ。


 俺はメンバーに確認した。


「この先にゴブリンの集団がいるんだけど、中心にいるモンスターが何かわかる?ゴブリンキングじゃなさそうなんだ」


 俺がそう言うとメンバーがゴブリンの集団を確認する。


「嘘!?どうしてゴブリンロードがいるの!?」


 ひなたさんが驚いている。


「あれはゴブリンロードよ。突然変異で産まれるゴブリンの王様の中の王様よ。

 あいつがいる集団のゴブリンは能力全般が強化されているらしいわ。気をつけて。ロード自体の能力はゴブリンキングより少し強いくらいよ」


 なるほど、あれがゴブリンロードか。こんな所で遭遇するとはな。そうするとあの集団は絶対に上に行かせちゃダメだな。


 まだ距離があるから、他のモンスターを先に倒して邪魔が入らないようにしよう。


 俺たちは手前にいるオークなどを魔法や接近戦で倒していく。


 少ししてゴブリンロードの集団が近づいてきた。


 俺たちは先手を打ち、魔法攻撃を仕掛ける。


 俺がファイヤーストームを放つと、天霧くんが風魔法で竜巻を発生させ、炎の柱と合体し、火炎旋風となる。ゴブリンの集団を巻き込みかなりの数を倒せた。


 あとは瑠衣さんの水魔法に、ヒデキが雷魔法を重ねていく。かれんさんも瑠衣さんの水魔法に氷魔法を重ねていきゴブリンたちに大ダメージを与えている。


 次の瞬間、ゴブリンロードが何かを唱える。

 周りのゴブリンたちがまた元気になった。

 戦意高揚系のスキルか?厄介だな。


 戦意の衰えることの無いゴブリンの様子に戦慄を覚えつつ、俺たちはゴブリンを倒す。


 あと10数体となったところでゴブリンロードが前に出てきた。

 何だ?1対1でもやろうってことか?


「ギギギ、ニンゲン、ショウブシロ。

 オウハドレダ?」


 驚いた。話せるのか。


「王様ではないけど俺だ。1対1だな、やろうか」


「大丈夫?」

 かれんさんが心配してくる。


「大丈夫だから、みてて」


 俺はゴブリンロードの前に立つ。対峙するとゴブリンキングよりももっと強いことがわかる。これは気が抜けないな。


 戦いが始まる。俺はゴブリンロードに近づき接近戦に持ち込む。相手もそれを望んだのか近づいてくる。


 先にゴブリンロードが攻撃を仕掛けてくる。俺はそれを剣で弾き、剣を振りかざすが防御される。


 その後も一進一退の攻防を繰り広げた。


 本当に強いな。俺は更にギアを上げていく。


 ファイヤーソードを唱え、攻撃を繰り出す。少しずつゴブリンロードの反応が間に合わなくなってくる。いい感じだ。


 周りのゴブリンはかれんさんやヒデキが倒してくれている。


 こちらもそろそろ終わらせたいな。

 俺はあえて攻撃を相手に弾かせ、隙を作る。ゴブリンロードはチャンスとばかりに大振りで剣を振り下ろす。俺は盾でタイミング良くガードする。シールドカウンターが発動し、ゴブリンロードは後ろに吹き飛ぶ。

 俺は全力で斬りかかり、ゴブリンロードは絶命する。


 ふぅ、これでこのダンジョンブレイクは終わるかな。


 俺達は上に上がろうとするモンスターがいないか確認した。地上のメンバーは大丈夫かな?急いで戻ろう。俺たちは地上へと戻る。


 地上も問題なく、モンスターを殲滅できたようだ。スレイヤーズギルドも駆けつけてくれていた。


 俺はスレイヤーズギルドのメンバーにお礼を言う。


 あとハンター協会からも職員の人が来ていた。


 話を聞くと、あのギルドの管理人は前はハンター協会にモンスター退治を依頼していたが、最近は資金繰りに困っていて自分たちでどうにか対処していたようだ。だが無理がきて夜逃げしたようだ。


 こういうのを無くしたくてライズギルドとして頑張っているが、まだまだ地域全体はカバー出来ていない。もっと頑張らないと大変なことになってしまう。

 もう一度地域のダンジョン所有者で困っている人がいないかを確認しよう。


 その後、海に戻るともう夕方近くになっており、海水浴客も少なくなっていたが、一連のライズギルドの働きを見ていた人たちが感謝の言葉をかけてくれた。


 最初に助けた2人もいて、改めて感謝の言葉をもらった。


 新聞社やテレビカメラも来ていて、インタビューを受けた。


 この日はこのまま帰ることになった。

 折角の海水浴だったけど、ダンジョンブレイクを防ぐことが出来て良かったと思う。

 あれを防げていなかったら、あの辺一帯は血の海になっていたと思う。


 ○


 次の日、新聞では各紙ライズギルドの活躍を報じており、テレビでも同じ流れとなっている。


 インタビューの中で今のハンター協会を中心としたダンジョン管理方法は限界にきており、新たな管理方法を作る必要があると提案した。その場面が色んな番組で流れている。


 ワイドショーではダンジョン管理の専門家を呼んで議論している。少しでも今の管理方法に疑問を持ってくれれば大きな1歩だな。


 思いがけない所でハンター協会にとって厳しい状況へ持っていけそうだ。


 少しずつ準備が整ってきた。


 ――――――――――――――――――


【★あとがき★】


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