第87話 牽制
7月になり、ジメジメした季節ももう少しで終わる。
俺は1日高校を休み、新幹線で東京へ向かっている。
今日が両親の命日だからだ。
去年までは1人で墓参りに行っていたが、今年はいとこの
駅に美優たち家族が迎えに来てくれることになっている。
駅につき、改札を抜け、ロータリーに向かう。
白色のミニバンが停まっていて、窓ガラスが開き、美優が顔を出す。
「ここよ、蓮」
俺が車に乗ると、中の人から話しかけられる。美優の両親の
3人とも東京でも指折りのギルドである
車が出発して、15分ほどすると大きな寺に着いた。
ここに九条家のお墓があり、両親もそこに入っている。
俺は美優たちと花や水の入ったバケツを持ってお墓に向かう。
俺たちはお墓の前につくと、掃除をし、花を供える。
美優たちは先に車に戻っているようだ。
俺に気を使ってくれたんだな。
俺は両親に近況を報告し始める。
「父さん、母さん、俺いまハンターやってるんだよ。火の魔法と剣で戦ってるんだ。
ギルトをつくって、仲間も沢山できたよ。恋人はいないけど、仲良くしてくれる人が沢山いて毎日が楽しいんだ」
自分でも驚くほどスラスラと言葉が出てくる。
「だけど、父さんたちの事件の真相だけはどうにかして明らかにしたいと思ってる。
2人はそんなことしなくていいって言うかもしれないけど、これだけはやらせてもらうよ。これからも俺の事を見守っていてね」
今日はここにこれて良かった。
自分のやるべきことがクリアになっていく。
まずは両親の事件の真相を知りたい。
そして、誰かに殺されたなら犯人を見つけて倒さないといけない。
車に戻り、美優たちにお礼を言う。
「来年も一緒に行くからね」
美優がそう言ってくれる。
車が走り出し、駅に向かう。
「本当にもう帰っちゃうの?少しは東京観光していけばいいじゃない!」
「やることがまだあるからね。早く帰らないと」
「またうちに来なさいよ。あそこも蓮くんのうちなんだからね」
朱美さんがそんな言葉をかけてくれる。
「はい、また来ます」
車が駅につき、俺は車から降りる。
「今日はありがとうございました。」
俺は大阪行きの新幹線へ乗り、帰宅した。
○
俺は
俺は帽子を被り、メガネをかける。
これだけでもだいぶ印象が違うはずだ。そして雷光放送の三橋さんも小型のビデオカメラ片手についてきてもらっている。
俺たちは後ろから気配を消して2人について行く。
ハンター協会に到着した。
2人が依頼書を見ていると少し離れたところから、3人組が2人に近づいていく。
俺ももう少し近づく。茅森さんたちに3人組が何か言っている。
三橋さんには協会の職員の方の動きも撮影してもらう。
「ライズギルドなんて九条におんぶにだっこのギルドじゃない」
女のハンターがそう言うと、
「他の奴らは腰抜けばかりだろうな、ハハハ」
男のハンターがそう言った。
流石くんが言葉の撤回を求めると、急に男が殴り掛かる。流石くんは簡単に避ける。
「何するんですか!?」
流石くんが抗議する。
「悪い悪い、手が滑っちまった」
「頭の悪い男」
茅森さんが呟く。茅森さん、平然と煽っていくね。
「なんだとこのアマが」
男の1人が反応する。
このやり取りの間も協会の職員は見て見ぬふりをしている。しっかりと動画に収めておく。
そろそろ間に入るかな。
「うちのギルドメンバーに何してるんですか?」
「お仲間か?丁度いい。また腰抜けの…」
男は振り向き、俺を確認すると言葉を失う。
「腰抜けのなんですか?」
俺は笑顔で聞く。
「い、いや、なんでもねえよ」
男は立ち去ろうとするが、そう簡単には逃がさない。逃げようとする方向に立ち塞がる。
「あんた、どうしたの?そんな子やっちゃいなよ」
女は俺を知らないみたいだ。まだ茶番を続けてくれる。
「うるせぇ、黙ってろ」
男はそこで初めて三橋さんのカメラに気づいたようだ。かなり焦っている。
「あー、すいません。面倒事になるかもって思ってカメラ回してました。
協会の職員さんが助けてくれるかもと思ったんですが、全く見て見ぬふりだったので」
職員の方をみると、いつも嫌がらせをする受付嬢は顔を伏せる。
「どこのギルドの方か教えてもらえますか?」
男は観念したのか話し出す。
「
月夜見ギルドとは直接的な関係は無いギルドだが実際は裏で繋がっていることが調査で分かっている。
「ちょっとそちらのギルドに伺いますね。
一緒に来てください」
俺は男のハンターを連れて相手のギルドホームへ向かうことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます