第74話 戦闘狂との戦い
俺は新幹線の改札前で声を掛けられた。
声の方を振り向くと、月華ギルドにいた
「なんですか?」
「お前強いんだってな?
ちょっと勝負しようぜ」
まさか追ってくるとは思わなかったな。
根っからの戦闘狂か。
「はぁ…いいですよ。
どこかいい場所はありますか?」
「近くにハンター協会があるから、そこの施設を借りよう」
ハンター協会の本部か、ついでに見ておくのもいいな。
俺は一応美優に連絡を入れておく。
大曽根さんと一緒なら不自然では無いし。
「わかりました」
俺は大曽根さんの車に乗り、ハンター協会へ移動する。
車の中では特に変な感じもなく、ただ早く目的地に行こうとしている。
遊びに出かける子供のようだ。
この人本当にただ戦いたいだけの人なんだな。
少し移動すると大きなビルが見えてきた。
これが本部か、さすがに良い立地にあるな。
車をビルの駐車場に止め、建物に入る
大曽根さんが受付で訓練施設を借りている。
無事借りれたようで、俺たちは訓練施設へ向かう。
「誘っておいてなんだが、装備はあるのか?」
「ありますよ」
俺は指輪に魔力を通し、亜空間から装備を取り出す。
どうしても欲しくて購入したアイテムだ。
「じゃあ準備もあるだろうから15分後に始めるぞ」
「わかりました」
俺は着替えていると、携帯が鳴る。
美優からだ。
電話に出ると、電話の相手は朱美さんだった。
「もしもし、蓮ちゃん。
ごめんね、大曽根が絡んでるって聞いて」
「模擬戦をやるくらいなんで大丈夫ですよ」
「本当にごめんなさいね。
あと、大曽根はうちのギルドでも上位のハンターだから無茶はしないでね」
「そうなんですね。もし倒しちゃったらすいません」
「まぁ、そんなふうに言えるようになったのね。おばちゃん嬉しいわ。
とにかく怪我は気をつけてね。
大曽根にも伝えておいて」
準備を終え、闘技台に向かう。
大曽根さんはもう台でスタンバイしている。 気が早い人だな。
大曽根さんは槍と盾を手に持ち、鎧をきている。ぱっと見はタンカータイプだが、実際どうだろう?
俺も台に上がり、模擬戦が始まる。
月華ギルドのハンターの実力を見せてもらうかな。
相手はゆっくりと近づいてきて、様子を伺っているようだ。
俺も合わせるように近づいていく。槍の間合いに入ると、連続突きが俺を襲う。
盾で防御し、シールドカウンターを発動させる。うまく発動し、衝撃が相手を襲う。
「ちっ、カウンタースキルか、厄介だな」
「ならやめますか?」
「やめるわけないだろ、こんな楽しいことをよー!!」
相手は突進スキルで突っ込んでくる。
俺はファイヤーボールを足元に放ちつつ、槍を回避できるよう備える。
ファイヤーボールで相手の足場を少し崩したが、全く意に介さず突っ込んでくる。
俺は盾で槍の先端をいなすように受ける。
よし、うまくいった。
相手は体勢を少し崩したため、畳み掛けるぞ。
俺はファイヤーソードを唱え、連撃を放つ。初撃は盾で防御されるが、二撃目は相手の腹部を捉える。
深めに剣がはいり、鎧を切り裂いた。
俺はヒールを大曽根さんの腹部にかける。
とりあえず出血は止まったので、ヒールを掛けるのをやめる。
「これくらいでやめておきますか」
「あぁ」
模擬戦は終わった。
模擬戦の途中で美優が来ていたみたいで、駆け寄ってくる。
「蓮、うちのメンバーがごめんね」
「あぁ、いいよ。俺も良い勉強になったし」
「大曽根さんにも勝つなんて、相当強くなってるわね」
「とりあえず駅まで送るわ」
俺はやっと帰れると思ったが、ここで年配の男性に声を掛けられる。後ろにはSPなのか、黒のスーツの男性が4人立っている。
「すまないね、少し良いかな」
「はい、大丈夫です」
「私は権藤と言う。ハンター協会の会長をやっていてね、見所のありそうな若者がいたから声を掛けさせてもらったよ」
この人が権藤か。俺は怒りが込み上げてくるのを必死で抑える。
「はじめまして、ライズギルドの九条 蓮と言います」
「大曽根くんに勝つなんて素晴らしいね。
そのまま頑張って強くなっていって欲しいね。
美優ちゃんとは親戚かね?」
「ありがとうございます。頑張ります。
はい、そうです、いとこです」
「ハハ、そうかい。九条という苗字は珍しいからね」
その後少し世間話しをして権藤は離れていった。
まさか目的の人物と会えるとは思わなかったな。
「蓮が切りかかるんじゃないかって心配だったよ」
「まさか、そこまで馬鹿じゃないさ」
俺たちは車で駅へ向かった。
「じゃあ、今度こそちゃんと帰ってね。
またねー」
「あぁ、またね」
俺は新幹線の改札を抜け、大阪方面の新幹線をホームで待つ。
今日は色々あったけど、権藤を見れたのは収穫だな。
まず協会本部の状況について調査していくか。まだまだ道のりは遠いな。
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