第73話 情報収集 月華ギルド

 俺はいま東京行きの新幹線に乗っている。


 親戚の正則まさのり叔父さんと、いとこの美優みゆに会うためだ。


 美優と連絡をとっている時に正則さんと美優が同じギルドに所属していて、正則さんがギルドの幹部だということを知り、俺から話が聞きたいとお願いした。


 東京のギルド事情やハンター協会の本部についても知りたいためだ。


 地下鉄を乗り継ぎ、最寄りの駅に着く。

 駅の改札から出て、駅前のロータリーに向かうと、1台車が止まっており、後部座席の窓が開き、美優が顔を出す。


「蓮、ここよー」


 俺はその車に乗り込む。


「迎えにきてくれて、ありがとう」


「いいのよ、わざわざ東京まで来てくれたんだから」


 俺たちを乗せた車は駅前を出発し、5分ほど走ったところで停車する。


 美優たちのギルドホームについたらしい。


 このビルか。結構高いなぁ。


「ここが月華げっかギルドのギルドホームよ」


「いい場所にあるんだね」


「数年前に移転したのよ。まぁこれでも東京で序列4位のギルドだからね」


 美優が少し誇らしげに言う。


 東京で4位か、凄いな。


 うちの地域より更に熾烈な競争があるんだろうな。


 ギルドホームの中に入る。


 中はしっかりとした造りで機能性を重視した印象を受ける。


 20代後半くらいの男性が1人こちらに近づいてくる。


「おう、美優!そいつが言ってたいとこか?」


「そうよ、大曽根おおぞねさん。

 蓮はこう見えて強いから失礼のないようにね」


「へぇ、そうか。それは気になるな」


 大曽根さんはニヤッと笑う。


 勝手に勝負でもさせられそうな雰囲気になるので、止めておく。


「美優、今日は正則さんと話しをしに来たんだけど」


「そうだったわね。

 そういう事だから。大曽根さん、勝負したいなら、また今度ね」


 俺たちは会話を切り上げ応接室へ向かう。


「悪く思わないでね、あの人いつもあんな感じなの。戦闘狂バトルジャンキーに近いの」


「あぁ、うちのギルドにもいるよ」


 応接室につき、中をに入ると正則さんと奥さんの朱美あけみさんがいた。


「正則さん、朱美さん、お久しぶりです。

 今日は招待していただき、ありがとうございます」


「あらいやだ、蓮ちゃんったら!

 そんな他人行儀じゃなくて良いのよ!

 家族みたいなものなんだから」


 朱美さんが昔と変わらない感じで話してくれる。


「今日は正則さんと話すと思ってたんですが、朱美さんもギルドの関係者なんですか?」


「あれ?美優、蓮くんに伝えてないのかい?」


 正則さんが美優に言う。


「あっ、忘れてた」


「そうか。

 蓮くん、朱美がこのギルドのギルドマスターなんだよ」


 俺は驚いて、朱美さんに確認する。


「本当ですか?」


「本当よー、わたしこれでもA級ハンターなのよ」


 全然知らなかった。


 美優のお母さんという認識しかなく、まさかハンターだとは思わなかった。


「だから、私も同席させてもらうわね」


 そこから、月華ギルドの紹介を聞いていく。


 もともと朱美さんが友人とつくったギルドで、正則さんは結婚した後に幹部になったそうだ。


 東京のギルドランキング4位であり、所属メンバーは500名ほど。


 A級ハンター2名、B級ハンター10名という戦力であり、C級以下の人数も多く、充実した戦力を有しているギルドだということがわかる。


 次はライズギルドについて3人に説明する。


「ギルド結成から1年経たずにその規模まで持っていったの?凄いわね」


 朱美さんが驚いている。


「ダンジョンをそこまで保有しているギルドも珍しいね。いまはモールまで建設しているのか」


 正則さんも少し驚いている。


「私は蓮がB級っていうのに驚いたけどね。高校2年でB級とか普通無理だからね!?」


 美優は俺のハンターランクについて考察している。


 俺はハンター協会の本部について聞いてみた。


「ハンター協会ねぇー、派閥争いが激化しててね。私たちにも影響が出てきてて面倒なのよ」


 朱美さんが愚痴る。


「会長と副会長が争ってて、もう結構な年数経つのよね。早く決着ついてくれれば良いのに」


 確か八雲さんがいた派閥が副会長側だったな。


「会長は権藤ごんどうさんと言うんだけど、結構権力で片付けようとする人でね。昔から周りとの衝突は度々あったんだ」


 正則さんが教えてくれる。


「わたし、あの会長苦手ー!

 会う度何かイヤらしい目で見てくるもん」


 美優も愚痴る。


「会長の権藤さんは長いんですか?」


「そうね、協会設立に携わっていて、最近やっと会長になった人よ。協会での年数だったら最長ね」


 朱美さんが答えてくれる。


「副会長の方は5年前くらいに協会に入った人で、協会の悪い状況を変えたいって主張して、今の状態になっているね」


 正則さんが情報を追加する。


 だんだん俺の相手が見えてきた気がする。


 権藤会長が怪しいな。


 俺の親の事件にも関わっているかもしれない。


 この辺の情報を調べる必要があるな。


 その後もギルド経営に関することを話していたら1時間ほど時間が経っていた。


「今日はありがとうございました。そろそろ帰ろうと思います」


「えー、もう帰っちゃうの?

 泊まっていけばいいのに」


 美優がそんなことを言う。


「明日もギルドの仕事があるからね。

 また今度時間見つけて来るよ。

 それに今年の冬にはギルド対抗戦もあるから、そこでも会えるよ」


 俺はそう答える。


 ライズギルドの次の目標はギルド対抗戦で優勝することだ。


 ここで名を上げてギルドの格を上げていきたい。


「あらっ、自信がありそうね?」


 朱美さんが聞いてくる。


「どうでしょうね?ただ負けると思って大会には出ませんよ」


「それもそうね。対抗戦では私とも戦うかもね。手加減しないわよ」


 朱美さんはかなりの強敵だ。


 更にレベルアップしていかないと厳しいだろうな。


「望むところです。昔の俺とは違うところを見せてあげますよ」


 俺は月華ギルドのギルドホームから出ると、車で駅まで送ってもらう。


 美優も一緒に車に乗り、少し走ると駅に着く。


「じゃあ、蓮またね。ちゃんと来なさいよ」


「ちゃんとくるよ。美優もこっちに来るといいよ」


 美優とわかれ、また新幹線に乗るため、改札に向かうと、声を掛けられた。


「おい、ぼうず!」


 面倒事の予感大な感じだ…

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