第70話 地域の有力者
今日は朝から少し緊張している。
最近は知り合った市長の門脇さんから連絡をもらい、知り合いの政治家さんを紹介してもらった。
今日はその政治家さんと会う日になっており、俺はギルドホームで到着を待っている。
黒塗りのセダンが駐車場に止まる。
中からスーツ姿の男性が2人降りて、後部座席のドアを開ける。
1人の男性がおりてくる。
さすがに貫禄があるなぁ。
俺は近づき挨拶をする。
「はじめまして、黒田先生。ライズギルドの九条です。本日はわざわざこちらまでお越しくださってありがとうございます」
「初めまして、九条くん。
会いたいと言ったのはこちらだからね。
今日はよろしくお願いするよ」
今日会うのはこの地域で最も有名な政治家である黒田先生で、いま4期連続で当選している国会議員だ。
30代で初当選し、いまは40代後半だったと思う。
地元でハンター協会に代わっていくことを考えると、黒田先生の協力を得ておくに越したことは無い。
まさかあちらから会いたいと言ってもらえるとは思わなかった人物だ。
これを機に仲良くしていきたい。
「地元で勢いがある人物と会ってみたくてね。
ちょうど門脇くんが仲良くなったと自慢していたものだから、私も会いたいと言ってしまったよ」
黒田さんは朗らかに笑う。
俺たちはギルドホームの会議室へ入り、話し始める。
俺がハンターになった経緯や今後やろうとしていることなどを話した。
黒田さんは静かに話しを聞いてくれ、大変な中頑張ったんだねと言ってくれた。
黒田さんからは、モール開発予定地の元々の建物を開発した際の話しを聞かせてもらった。
あの周辺は特に目立った建物が無い中、少しでも人を呼べるようにと店舗を誘致し建設したとのことだ。
ダンジョンが出現し、人が寄り付かなくなってしまった時は心が傷んだと話してくれた。
今回その土地が復活すると話しを聞き、とても嬉しかったと言ってくれた。
話してわかったことは、黒田先生がこの地域の行く末を案じてらっしゃることだ。
若い人が少なくなっていったり、地域の店が廃業したりといった日本のどこでも起きていることではあるが、これにどうやって立ち向かうか、うまく折合いをつけるかを常に考えられている。
そんな所に、ダンジョン化で使えなくなった土地をモールに開発しようとしている若者がいるという話しを聞き、俺に興味を持ってくれたみたいだ。
確かにいまは至る所がダンジョン化してしまい、死んでしまった土地が沢山ある。
もしこれらの土地を再生させられるなら、地域として願ってもないことだ。
「今後もやりたいように頑張って。その中で少し地域のためになることも考えてくれたら嬉しいよ」
「もちろんです」
「ありがとう。
もし、困っていることがあったならすぐ言ってくれ。私の方としても最大限協力しよう」
黒田先生はそう言ってくれた。
勝手なイメージだが、政治家の人って本当に皆のことを考えているのかなと思ってしまっていた。
だが、黒田先生とお話させてもらい、本気で皆のことを心配している政治家もいることを知れた。
出来る限り協力していきたい。
俺たちは最後に握手をしてすると、黒田先生たちは部屋を出る。
「今日は有意義な時間をもてたよ。ありがとう。また話しをしよう」
「こちらこそありがとうございました。是非お願いします」
黒田先生は車に乗り込み、帰っていった。
黒田先生と知り合いになれたのは大きいな。
もう少し話しをしたりして、信頼を得た際にはハンター協会の件を相談してみようと思う。
俺がそんなことを考えてギルドホームに戻ると
「お疲れ様。黒田先生が来るなんて思わなかったわ。ハンター協会にもほとんど来たことないから」
と瑞希さんが声を掛けてくれた。
「瑞希さんもお疲れ様。
本当にラッキーだね。なかなか会えない人だと思うから。こうやってどんどん人と会って仲間を増やしていかないとね」
「そうね。でも無理はしないようにね。
貴方はすぐ無理をするから」
俺は苦笑いをしてその場を離れ、外に出る。
黒田先生との会話を思い出す。
俺もあんな風に人のために頑張れる格好良い人になりたいな。
そのためにもっと頑張っていかないと!
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