第63話 周辺ギルドとの軋轢

 ある日、ギルドホームで書類作業をしていると、ライズダンジョンの受付スタッフに呼ばれる。

 精算時に支払いを拒んでいる人がいるみたいだ。今までそういう人がいなかったので遂にきたかと緊張しつつ、俺はダンジョンの方へ向かう。


 受付に着くと、ハンターが4人おり受付の人と話していた。全員が20代後半くらいの男性でそこまで強そうではない。

「全然思ってたダンジョンじゃなくてよー。これで金取るっていうのも無理があるんじゃないのって言ってんの」

 4人のうち1人が文句を言う。


「お客様が入場されてから6時間経っており、かなりのモンスターを倒されたと思うのですが、まったく成果はなかったということでしょうか?少し荷物を拝見させていただいてもよろしいですか?」

 スタッフの女性が毅然とした態度で話す。


「あー、何?お姉さん、俺達が嘘ついてるって思ってるの?」

 相手は大声をあげてくる。

 そこで俺は間に入る。


「お客様、それ以上は私どもとしましても看過できなくなります。所属のギルドを教えていただけますか?」

 冷静に話しかける。


「あー、何だ?

餓鬼じゃねえか。餓鬼は引っ込んでろ。

俺はこのお姉さんと話してんだよ!」

 相手は凄んでくる。


「ここを管理しているライズギルドのギルドマスターの九条です」


 俺が名乗っても相手の態度は変わらない。


「お前があの九条かよ。本当に餓鬼じゃねえか。こんなのにアビスギルドは負けたのかよ!あのギルドも大したことなかったみたいだな」


「アビスギルドのことをどうこう言うのは止めませんが、初対面の相手に失礼な物言いは大人としてどうかと思いますよ」

俺は素直に思ったことを言う。こういう大人にはなりたくないなと思う。


「ガハハ、言われてるぜ、間宮」

男の名前は間宮というらしい。まぁ興味は無いが。


「俺はもうすぐスレイヤーズギルドで幹部になる予定だ」

間宮は凄んでくるが、何が言いたいのだろうか。


「あー、そうなんですね、凄いですね。

で、それがどうしたんですか?」


間宮の顔が険しくなっていく。

「こっちは県内でも有数のギルドだぜ!

こんな出来たばかりの弱小ギルドなんか目じゃないぜ。

どうせメンバーも貧弱なんだろ?」


ピキっ!

自分自身を馬鹿にされたりする分には慣れているから気にならないが、メンバーを馬鹿にされるのは、慣れていない。


「間宮さん、あなたの発言はスレイヤーズギルドの発言として捉えて大丈夫ですか?責任取れますか?」

俺は努めて冷静に言う。


「弱小ギルドを弱小って言ってる何が悪いんだ?責任なんかとってやるよ、ギルドマスターは俺の兄貴だからな。どうせ何も出来ないだろう?

あー、けど女は良いのが揃ってるな。女だけは貰ってやろうか?」


決めた。スレイヤーズギルドを潰そう。

県内のギルドとは友好的にやっていこうと思っていたけど、こんな奴が幅をきかせているギルドなんか要らないだろう。


「分かりました。ライズギルドはスレイヤーズギルドに攻城戦を申し込みます。

もちろん受けますよね?」

攻城戦は4年に1度のギルド対抗戦でも採用されている方式で、20人対20人で行う、お互い陣地の旗を取り合うギルド対決の定番である。


「おい、間宮。さすがにこれはやばいから受けるなよ」

間宮の仲間のハンターが言う。

逃がすものか。


「あれ?幹部になるような人がこんな餓鬼との勝負からにげるんですか?」

俺は煽っていく。


「受けるに決まってるだろう!!」

よし、乗ってきた。


「では、対決の日取りを決めましょう」


俺はその場で正式な対決の契約を交わした。

これでもう相手は逃げられない。


対決は2週間後となった。


内容としては、勝ったギルドは負けたギルドを傘下ギルドにするか、解散できる。

参加ギルドにする場合はギルドマスター及び幹部を派遣できる。


間宮(弟)は余裕のある顔で言う。

「馬鹿な奴らだ。20対20のルールで勝てるわけないだろう。お前らは20人もいないはずだからな」

意外とこちらのことを調べているみたいだな。


「そういうことにしておきましょう。

今日の支払いも、もういいですよ。お帰りください」


間宮(弟)たちは余裕な表情で帰っていった。


俺はギルドメンバーを臨時で集め、ミーティングを開く。

先程のやり取りを伝え、攻城戦を2週間後に行うことを伝える。


「戦闘職は全員参加を考えているので、準備をしっかりしておいてください」


思いもよらない形での他ギルドとの攻城戦だが、これを足がかりに県内での立場を固めていきたい。

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