第57話 地域のダンジョン管理のお手伝い

 俺はこの前のダンジョンブレイクを経験したことで、現状でのダンジョンの管理体制の危うさを再認識した。


 協会の手が全部には回らないのは明らかだ。

 この地域で活動するギルドとして協力出来るところは協力していきたい。

 それがゆくゆくはギルドのためにもなると信じている。


 俺はこの問題に対し、解決方法を考えてみた。

 やはり素直に探索を無料、または格安で行い、その代わりドロップ品と魔石は貰うとかかな?

 ただこれは協会や他のギルド、ハンターとの関係性が拗れたりする可能性もある。

 依頼料のうち何割かは協会の取り分であり、重要な資金源になっているはずだからだ。またハンターにとっては仕事の減少につながる。


 他には、自分たちでモンスターを倒したい人たち向けに、ハンターとしての技術を教え、レベル上げまで面倒をみる道場を開く。

 これならそこまで反発も起きないかもしれないな。


 あとはダンジョンごと買い取ったり、譲ってもらったりして、ダンジョン運営をするくらいかな。

 これはライズダンジョンとの位置関係なども影響するため、なかなか難しい。


 こんな所か。これをギルドメンバーも含めて、議論しよう。


 ○


 俺は次の日、ギルドホームにメンバーを集め、俺の案をベースに議論していく。


「道場って無料?有料?」


「無料だと実際には困ってない人とかも来ちゃうかも。そうすると手が回らないよね」


「少しだけ月謝って形で貰ったら?そうすればひやかしの人は来ないし、本気なら払うと思うし、しっかり教えていけば良いと思う。厳しいようなら最初はライズギルドで探索してもよいし」

 意見がどんどん出てくる。


 道場が1番現実的で効果もあるという結論となり、まずこの案を進める方向で検討していく。

 ほかの案も道場の進み方次第で検討したい。


 道場の件は、総一郎さんに担当となってもらい、ハンター協会との調整などをお願いした。

「よし、わかった。任せておけ!」


 実際にダンジョンを所有しており、ハンターに依頼している人や自分でモンスターを倒している人にヒアリングを行ったりしていく。やはりニーズとしてはありそうだ。


 また、しっかりフォローしてもらえるなら多少の月謝も問題ないという結果が得られた。計画に反映していく。


 総一郎さんに計画を詰めてもらい、ギルド内で報告してもらう。メンバーからも良い計画だという評価を得た。


 ○


 ライズギルドからの提案として、八雲さんと話すこととなった。これには俺も同席する。


 総一郎さんが計画の概要を説明する。

 道場での目的が達成されると見た目には協会への依頼が減るため、協会の収入減少につながるとなりかねない。

 そこは丁寧に説明していく。

 最初は依頼が減るが、そもそもダンジョンブレイクの可能性が減らせること、実力のあるハンターが増えることなどのメリットもある。

 説明が終わり、八雲さんからの質問に答えていく。


 八雲さんの了承を得ることが出来た。

 俺と総一郎さんはガッツポーズをする。

 八雲さんからもハンター協会も地域のダンジョンの管理が安定する可能性が高まることは歓迎すべきことだと言ってくれた。

 また、ここまで地域のことを考えているギルドは他に無いと言われた。俺は嬉しく思った。


 あとは詳細を詰めていくだけだ。

 俺は早く道場を始めて、みんなが自分の手でダンジョンを管理できるようにする手伝いをしたいと思った。もうちょっと頑張るか。

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