第53話 狙われた理由
前島との模擬戦当日に、模擬戦の動画が配信された。三橋さん達が頑張ってくれた。
番組の視聴率はとても高く、世間で注目を浴びている。
これにより、前島に関わっていた協会職員およびアビスギルドのギルドメンバーは世間から大きなバッシングを浴びている。
八雲さんにバッシングがいかないように動画で事の顛末を俺から話すこともした。
そのため、今のところ八雲さんの責任を追求するような流れにはなっていない。
ライズギルドにもテレビ局や新聞社からの取材がきている。俺は取材に応じ、マスコミを味方につけた。
この一連の騒動により、ハンター協会は関わった職員を処分することを発表している。
アビスギルドはメンバーがどんどん辞めており、もうギルドの運営は困難になっている。
また、辞めていったメンバーもアビスギルドに所属していた記録が残るため、他のギルドに加入することが困難となっている、自業自得だな。
○
俺はいま八雲さんに呼ばれ、ハンター協会の応接室にいる。部屋には俺と八雲さんと小早川さんがいる。
「忙しいところ済まないね。今日は浜島への聞き取りから分かったことを君と共有したくてね」
「ありがとうございます。俺も気になっていたので助かります」
「なぜ浜島が君の昇級を邪魔してきたのかがわかったよ。
わたしも聞いて驚いたんだが、ハンター協会の本部からの指示だったみたいだ。正確には浜島が所属する派閥の上からの指示だね」
「そうですか」
俺はそれを聞いて、やはりと思った。
「心当たりがあるようだね」
「はい、ただ自分でも少し整理したいのでそれが終わったらお話します」
「わかった。整理がついたら教えて欲しい」
「ありがとうございます」
俺はそう言って部屋を出る。
部屋を出たあと、小早川さんが追いかけてきた。
「蓮くん、大丈夫?」
小早川さんは心配してくれているようだ。
「大丈夫ですよ、心配してくれてありがとうございます」
「わたしにできることなんて心配することくらいだから…」
「そんなことないですよ、いつも感謝しています。落ち着いたら、またご飯でも行きましょう」
俺はそう言って協会のビルをあとにする。
俺は少し頭の中を整理するために、駅までゆっくり歩く。
やはり協会本部なのか…、このまま隠していくのは無理だな。
俺はギルドメンバーに状況を共有することにした。
夕方、ギルドホームにメンバー全員が集まる。
全員いることを確認して、俺は話し始める。
「集まってくれてありがとう。今日は俺から皆に伝えたいことがあるんだ。
これを伝えずにギルドにいてもらうと後々後悔する人がいるかもしれないから、遅いかもしれないけど、いま伝えさせてもらうね。
これを聞いてギルドを辞めたいと思う人がいたら、そのときは言ってください」
俺は自分の家族のことについて話し出す。
俺は3年前までは父さんと母さんと3人で暮らしていた。
父さんと母さんは2人ともハンターだった。
20年前のハンター黎明期から活躍していた両親はハンターの中でも指折りの存在だったらしい。
父さんはA級の剣士で、母さんはA級の炎の魔法使いだったらしい。
多分俺が剣術と火の魔法をそれなりに使えるのは2人の影響だと思っている。
何人かには両親は交通事故で亡くなったって伝えたと思う。けど、違うんだ!
あの2人は交通事故なんかで死ぬ人達じゃない!!
常人とは耐久性が異なることを警察やハンター協会の人に訴えたけど聞いてもらえなかった。
あの時の対応が不自然で、俺はいつか真相を明らかにしたいと思っていた。
ただ両親がいなくなって、実家で生活するので精一杯な俺はそんな気持ちも忘れてしまっていた。
そんなとき、運良く実家にダンジョンが出来て、ハンターになれて、皆とギルドで出会えた。
そしてこの前の戦いでハンター協会の上層部に俺を疎ましく思う人物がいることがわかった。
当時俺の両親はハンターの中でも発言力があり、協会設立にも関与していたらしい。
その時に少し衝突があったことは両親からそれとなく聞いていた。
だから、俺は協会の上層部に両親を殺した犯人がいると思っている。
ただハンター協会は大きな組織だから生半可なことでは無理だと思った。
だから、強くなり、ギルドを作り、有名になることで少しずつ真実に近づいていけないかと思っていた。
ただ今回の件で、双葉さんが被害にあって怖くなった。
このまま真実に近づくと傷つく人が出るかもしれないことに気づいた。
だけど、どうしても両親の死の真相を突き止めたいんだ。
俺は2人を尊敬していたし、大好きだった。そんな2人を殺した犯人を俺は許せない。
これが俺の伝えたいことで、俺はこれを止めるつもりは無い。
たとえ1人でも真相を突き止めたいと思ってる。
俺が話し終わると、ヒデキが口を開く。
「私は問題ない。このままライズギルドにいさせてもらうよ」
そう言ってくれた。
他の皆も同じように残ることを選択してくれた。
「ありがとう」
俺の頬を涙が伝う。
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