第51話 B級昇級 模擬戦(1)

 B級昇級の模擬戦の日がやってきた。


 放課後、俺はハンター協会のビルに着く。

 中に入り、受付で小早川さんと話していると、男性に声を掛けられる。


「君が九条くんかな?初めまして、私は浜島という。ここの副支部長だ。よろしく頼むよ」


 浜島さんと少し話しをしていると、提案を投げかけられた。

「君は八雲と仲が良いんだっけ?あれはやめておいた方がいい。どうだい、私ならギルドの拡大にもチカラを貸せるよ。小早川くんも一緒にどうだい?可愛がってあげるよ」


 あー、この人が八雲さんの敵対派閥の人か。そしてアビスギルドと繋がりがある。下品な人だ。


「結構です。八雲さんは信頼できる人なので。あと、女性にそういった発言をするのは失礼では?あなたを頼ることは無いと思います」


「そうかい?あとで泣きついてきても知らないよ」

 そう言って浜島は去っていった。


 時間が近づいてきたので訓練施設に向かう。

 そこには何人か人がいた。八雲さんもいる。


 1人強いひとがいる。若い小柄な男性だが、隙がない。


 少し時間が経ち、八雲さんから今回の模擬戦の趣旨を説明される。


 途中で浜島が口を挟む。

「意見したわたしが話した方が良いでしょう。

 九条くんのB級昇級は、前例のないスピードで、あまりにも早いとランクシステム自体の信頼性に関わる可能性がある。ただ、私としても昇級させないのは少し可哀想だなと思う。

 そこで我々にB級以上の資質を見せてくれれば喜んで昇級に賛成しよう。協会が用意した対戦相手に勝利するだけでいい。わかりやすい条件だろう?」

 浜島は意気揚々と話す。


「俺は構いません」

 俺は答える。


「よし、では対戦相手を紹介しよう。この支部の中でも実績のあるギルドのアビスギルドに対戦相手をお願いした」


 アビスギルドの関係者が話し出す。

「アビスギルドのギルドマスターの前島だ。今回の対戦はこの俺がやらせてもらいたい」


「ちょっと、待ちたまえ。君はなったばかりとはいえA級ハンターだろう。今回の条件に合致しない」

 八雲さんが抗議する。


 ここで浜島が話しだす。

「あぁ、すいませんね。相談が遅くなりました。本来今日模擬戦に出る予定のハンターが午前中に怪我をしてしまいましてね。

前島くんから相談を受けて、わたしがOKしました。

九条くんには2週間も前から連絡していたので直前でキャンセルだと興醒めしてしまう。なので少し前までB級だった前島くんならと。どうです?外野がやんや言っても仕方ないでしょう。九条くんに決めてもらったら。

どうだい、九条くん?」

浜島が俺を試してくる。俺の答えはひとつだ。


「問題ないです」


模擬戦が30分後に始まるとなり、八雲さんが近づいてくる。

「どうして受けたんだ。さすがにA級はおかしいだろう」

八雲さんは心配してくれているようだ。


「大丈夫です、勝ちます。俺はアビスギルドに怒ってるんですよ。

それにギルドマスターが高校生に負けたとなれば、ギルドとしての面子は潰れますよね?」


「それは、そうだが…。とにかく無理はしないようにね」

八雲さんはそう言って離れていく。


ヒデキが話しかけてきた。

「レンには不要な情報かもしれないが、一応知らせておくよ。

前島は剣士タイプで水系の魔法を使うようだ。Aランクには2ヶ月前に上がっており、単独での飛竜討伐を実績にA級に昇級していいる。ただ、単独ではなく、パーティーで討伐したんじゃないかという疑いがあるみたいだね。とはいえ、強敵には違いないね。

とにかく、幸運を祈るよ」


「ありがとう、ヒデキ」

この情報は正直助かる。どんなタイプかを知るだけでもとても大きい。


この戦いは負けられない。双葉さんを傷つけた代償を絶対に払わせる。

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