第36話 高校生ハンター競技会 全国大会(5)

 準決勝の激闘の余韻に会場が浸っている。


 決勝の開始まであと僅かとなった頃、高槻さんが話し掛けてきた。


「勝ってね」


 短い言葉だったが想いは十分伝わってきた。


「勝つよ」


 俺はそう返す。高槻さんが微笑む。


「さぁ、いよいよ残す試合も決勝戦のみとなりました!対戦する2人は何と親戚同士!!

 昨年度ベスト4の九条美優と突如として高校生ハンター界に現れた九条蓮!

 高校生No.1はどちらがなるのか!?」


 俺は闘技台にあがり、先にあがっていた美優と目を合わす。


「まさか蓮と戦う日がくるなんてね」


「俺もそう思ってる。

 悪いけど、今日は勝たせてもらうよ」


 そこから俺たちは黙り、審判の合図を待つ。


 試合開始の合図とともにお互いが駆け出す。


 そして闘技台の中央でお互いの剣がぶつかる。


 俺は剣を交えたことで美優の身体能力を大雑把にだが把握した。


 身体能力は俺の方が優位だな。


 ただ、このまま押し切れるわけはないな。


 美優のホーリーソードに対して俺のファイヤーソードが通用するのかそこが鍵となる。


 美優が距離をとり、一瞬のための後、光魔法を放ってくる。


 ビームのような光線が俺を襲う。


 間一髪のところで盾での防御が間に合った。


 危ない、一撃で戦闘不能になる所だった。


「凄いね!これを初見で防ぐなんて!」


 美優が素直に褒めてくる。


「もう少しでやられる所だったけどな」


 いまの魔法は注意がいるな。


 ただ魔法を放つには少しだけ時間がかかるようだ。


 俺はウインドカッターを放つ。


 余裕を持って避けられる。


 魔法での勝負は分が悪いかもな。


 やはり剣術勝負に持ち込むしかないか。


 俺はファイヤーソード、ファイヤーシールドを唱え、接近戦に持ち込む。


 向こうも望むところとばかりにホーリーソードを唱える。


 2本の剣がぶつかる。


 ファイヤーソードはホーリーソードに負けなかった。


 闇属性の黒炎になっているのが負けなかった理由だろうか。


 よし、これで勝てる芽がでてきた。


 俺は連撃を繰り出す。


 美優も負けじと競り合ってくるが、一撃の威力は俺の方が上だ。


 少しずつ俺に戦況が傾いてくる。


 傾いた流れを逃さないように俺は攻撃を続ける。


 そして、ここで魔法を織り交ぜる。


 ファイヤーボールを美優に向けて放つ。


 美優の意識が一瞬ファイヤーボールに向かう。


 その一瞬の隙をつき、俺は全力で剣を振り下ろす。


 美優は盾での防御を選択する。


 盾で攻撃を受け取めるが、あまりの衝撃に手から盾が離れる。


 これで終わりだ。


 俺は全力の一撃を放つ。


 美優は防御できず、吹き飛ぶ。


 俺の勝ちだ。


「高校生ハンター競技会 全国大会の優勝者は九条蓮選手だー!!」


 スタジアム全体から拍手が贈られる。


 美優が立ち上がり、よろよろと歩いてくる。

 俺は駆け寄り、ヒールをかける。


 見た目の怪我は治ったようだ


「強いわね、蓮。負けたわ。でも、次は負けないわよ」


 美優はそう言うと、闘技台からおりていった。


 俺も闘技台からおりると、高槻さんが抱きついてきた。


「おめでとう!」


「ありがとう」


 俺は応える。


 その後はギルドの皆がきてくれた。


 本当に勝ててよかった。


 このあと、表彰式が行われる。


 俺と美優、高槻さん、雷光くんが順番に表彰台へあがる。


 優勝メダルを首に掛けてもらう。


 そして優勝者のスピーチを行う。


「こんにちは。九条蓮です。

 この大会で優勝することを目標に日々鍛錬してきました。

 観てくれた方が少しでも楽しんでもらえたなら嬉しいです。また来年も、ここに戻ってこられるように、またこれから頑張ります。応援ありがとうございました」


 また拍手を貰う。


 ギルドの皆も拍手してくれている。


 大会が終わった。


 あっという間の2日間だった。


 ライズギルドとしては優勝とベスト4という申し分ない結果を残すことができた。


 これで世間での認知があがり、入りたいという人が増えてくるかもしれない。


 今回高校生では1番になれたが、俺はもっと上を目指したいと思う。


 この仲間とならやれると信じている。

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