第35話 高校生ハンター競技会 全国大会(4)

 午後から準決勝が始まる。


 俺の対戦相手は、ハンター養成分野で全国屈指の実績を持つ名門校の3年生の男子だ。


 槍と盾を持ち、魔法も使う万能タイプのようだ。強敵だな。


 お互いに闘技台へあがる。


 礼をする前に相手と目が合う。


「九条君、わたしは君が欲しい」


 急に告白された…。


 俺が困惑していると、


「失敬。正確に言うと私の一族で経営している企業に入って欲しいという意味だね」


「君がギルドを運営しているのも知っているよ。どうだい?この試合で私が勝ったらギルドごとうちの傘下に入るというのは。」


 俺が断ろうとしたら、


「決まりだね。私が負けたら君のギルドに私が入ってあげよう。ついでにギルド関連の子会社と提携させよう。」


 全く話を聞いてくれない。


 会話が成立せずに試合開始となる。


 俺は気を取り直し、試合に集中する。


 相手と対峙してみてわかるがこの人強いな。


 俺は剣で攻撃を仕掛ける。


 うまく槍で対応される。


 厳しいところへの攻撃は盾でしっかりと防がれる。


 逆にその隙をつかれて反撃に合う。


 こちらも盾で防ぐ。


 序盤の攻防としては、互角だった。


 俺は魔法も織り交ぜながら、攻撃する。


 ファイヤーボール、ウインドカッターを相手の気を引くように放つ。


 相手は冷静にそれを避けつつ、こちらを警戒している。なかなか隙がみえないな。


 相手からも雷魔法を返され、ギリギリ避ける。


 魔法もレベルが高いな。


 何度か攻防を繰り返す。


 ここまでの強敵ならあれにも耐えられるだろう。


 俺は意を決してファイヤーストームを放つ。


 相手は危険を察知し、避けようとするが炎の範囲が広く、避けきれない。


 俺はファイヤーソードを唱えながら、一気に距離をつめる。俺は剣を振り下ろす。


 相手も槍で応戦しようとするが、ファイヤーストームのダメージからか反応が鈍い。


 俺の攻撃があたり、相手は降参した。


 俺の勝利となる。


 強かったな。


 俺がそう思っていると、相手が近づいてきて、


「まさか私が負けるとはね。いやー、君は私を退屈させないね。

 私は雷光らいこう英輝ひでき。あの雷光グループの跡取り息子さ。

 約束通り、君のギルドに入ってあげよう。

 細かい条件などはまた後で秘書を寄越すとしよう」


 そう言って行ってしまった。


 雷光君か、かなり強烈な人だったな。


 雷光グループって自動車、銀行、食品といったものから宇宙開発まで出かける巨大グループだよな。


 本当にギルドに入るのかな?


 ギルド的にはかなりの戦力補強になるから嬉しいけど、うまくやって行けるのか?


 俺は一抹の不安を覚えた。


 何にせよ、次は決勝だ。


 高槻さんか美優のどちらかとの戦いになる。


 どちらがきても厳しいものになるな。


 時間となり、高槻さんと美優の対決が始まる。


 昨年の大会のリベンジマッチとなる。


 闘技台にあがる2人の顔は緊張感のあるものだった。


 序盤は高槻さんが攻め、美優がそれを防ぐ展開となる。


 高槻さんの素早い攻撃にも美優はしっかりと対応している。


 美優が戦っているところは初めて見た。


 美優は剣と盾を持つ剣士タイプで、光魔法を使うらしい。


 序盤から高槻さんが攻めていたが、美優が魔法を使うと状況が一変した。


 美優がホーリーソードと唱えると、美優の剣は光を放ち、輝き始める。


 高槻さんもアイスソードで応戦するが、ホーリーソードの方が攻撃力が高く、打ち合う事に劣勢になっていく。


 高槻さんは、状況を変えるため氷魔法を織り交ぜるが、美優の光魔法に阻まれる。


 次の剣での打ち合いで高槻さんが吹き飛ばされ試合終了となった。


 高槻さんでも勝てないか…


 毎日高槻さんとトレーニングしてきたから、彼女の努力を俺は知っている。


 俺は彼女の分まで、決勝で暴れてやろうと心に決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る