第29話 工房の役割
昨日オーディションを行い、生産職の人材確保に目処がついたため、ギルドとして工房をつくりにいこうと思う。
昨日の今日で申し訳ないが、橘兄妹に責任者となってもらうこともあり、建築士との打ち合わせに同行してもらう。
昨日の帰りに話しを打診した際には、契約したばかりなので、すぐに工房を作る話が出るとは思わなかったと言われた。
2人にギルドホームに来てもらい、建築士と話す前に、ライズギルドの工房の今後の方針を伝える。
ライズギルドとしては、今後メンバーを継続的に増やしていき、規模を大きくしていく。
そのためにはお金が必要になる。
新規事業として、ライズダンジョンで採取した素材を使った製品の販売を考えている。
目処がついているのは、トレントの木片を使った木工製品の販売である。
鍛冶師のほうも、まずはメンバーへの武器、防具提供を行い、次に販売までいきたい。
なので、今後も腕が良くて、一緒に頑張れる人がいたらどんどん雇っていく方針だ。
この部分を2人に伝え、建築士との話し合いに臨んだ。
ギルドホームの時もお願いした建築士に今回も依頼する。
同行した2人の意見を取り入れつつ、間取りや必要な設備を詰めていく。
それなりのお金になりそうだが、いまのギルドの運営状況なら特に問題ない。
大枠はまとまったため、建築士に持ち帰って案を練ってもらう。
その後、俺はあかねさんから要望されたこともあり、工房としてやりたいことを細かくあかねさん、りょうさんと共有していく。
そして、トレントの木片を加工販売した際の試算結果を渡す。
あかねさんは資料に目を通し、
「たしかにこれなら上手く行きそうですね。ただ、人が足りないので私も友人の木工師とか信頼出来るところに声を掛けてみます」
と言ってくれた。
りょうさんから戦闘職の人の中には、装備が少し貧弱に見えた人もいたので、早く揃えてあげたいと言われた。
ギルドとして装備を提供できるのは、戦力アップになると同時に、ギルドの魅力として外にアピール出来るため、早く実現したい。
「鍛冶師は当面は3人で回ると思うので、まずはダンジョンで良質な素材の確保ですね」
とりょうさんが言った。
いまギルドで保有する素材を見せつつ、どんな装備が出来るかを相談する。
「ロックドラゴンの素材があるんですか!
これなら盾とか良いのが作れますよ」
りょうさんが驚きつつ、そう提案してくれた。
駆け出しのギルドの認識だったので、B級モンスターの素材があるとは想像していなかったようだ。
話し合いが終わったところで、他のメンバーに2人を紹介する。
メンバーを紹介され、あかねさんは
「話しには聞いていたけど、本当に皆さん若いですね。私たちが最年長か…」
と少し凹んでいた。
それをメンバーが慰めていた。
今日のお礼も兼ねて昼食を作って振舞った。
2人とも普段は外食が増えていて、とても喜んでくれた。
夕食は定期的に振舞ってますよ、と伝えると食べたいですと食い気味に言われた。
食事をとりつつ、りょうさんに話し掛ける。
「俺以外男性がいなかったので、入ってくださって嬉しいです」
「これからよろしくね。
これだけ女性が多いと気も使うしね。
で、どの子が本命?」
そんなことを言われてもなー。
「いや、そういうのじゃないですよ」
と返事をすると、
「いやいや、高校生でこんな可愛い子達に慕われて何にも思わないなんて無いから!
あっ、ただあかねはやめとおけよ。あれは見た目が女性なだけだから」
そんなことを話していると、りょうさんの後ろに目が笑っていない笑顔のあかねさんがいた。
「りょーうー!ちょっと兄妹でおはなししましょう」
そう言い、りょうさんは部屋の外へ連れていかれる。
りょうさんとは仲良くやって行ける気がする。
ギルドがどんどん賑やかになっていくのは嬉しいな。
信頼出来る人をどんどん増やしていこう。
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