第28話 ギルドメンバーオーディション

 ライズダンジョンの地下10~12階をC級ハンター以上のパーティーのみに開放してから、いまのところ事故は起こっていない。

 一安心だ。


 俺はいま今週末に予定されているギルドメンバー募集オーディションに向けて、説明資料などを作成している。


 秘匿な箇所はぼかしつつ、ライズギルドの魅力を詰め込んでいく。


 あとは当日の進行表をつくり、実際にどの程度で進行できるか軽くリハーサルをする。


 うん、問題なさそうだ。


 当日が楽しみだ。いまのところ応募は30名くらい来ているが、実際何人来てくれるかな。


 ○


 オーディション当日、10時前にはギルドホーム前に人が集まっている。


 受付時間となり、ギルドホームの中で受け付けを行い、会議室に入ってもらう。


 20人か。駆け出しのギルドにしてはかなり来たな。


 この前の競技会での優勝スピーチのお陰かな。


 時間になったため、俺は前に出て挨拶する。


 まずはギルドの説明を行う。


 この説明を真剣に聞いているかで熱意がわかる。半分くらいが真剣に聞いているな。


 事前に亜希さんには、説明会での態度をみて、チェックリストにチェックをお願いしてある。


 ここで即落とすことはないが、減点対象ではあるな。


 説明が終わり、何人かの質問に応える。


 それが終わると、各人の自己紹介のあと、軽い面接を行う。


 ここからは戦闘職と生産職のグループに分け、4人ずつ、5回に分けて面接を行う。


 戦闘職が4グループ、生産職が1グループとなる。


 面接官は俺と惣次さんの2人で担当する。


 順番に面接を行っていく。


 面接をしたところ、戦闘職の1~3グループは未経験者が殆どで、競技会のテレビ放送をみて応募してきた人が多かった。


 経験は無くても、ポテンシャルによっては入ってもらいたいけど。


 4グループ目は4人とも経験者であり、ここは期待できる感じだ。


 この後の実技が楽しみだ。



 生産職のグループの面接が始まる。


 このグループは3人が鍛冶師で1人が木工師として工房などで働いている人達だ。


「木工師のたちばなあかねです。24才です。いまの工房からの独立も考えていたんですが、こちらのギルドが新規で木工師を募集していると聞き、興味があってきました。よろしくお願いします」


 ハキハキしていて、好印象だ。


 木工師は、トレントの木片のこともあり、非常に入って欲しい職種になる。


「鍛冶師の橘りょうです。24歳です。

 私もいまの工房からの独立を考えていたんですが、こちらの話しを聞き、興味が湧いたのできました。よろしくお願いします」


 あれ、何か木工師の橘さんと似ているな。


 苗字も同じだし。


 気になったので聞いてみると、双子の兄妹だそうだ。


 妹さんの方がライズギルドの募集を見つけて、お兄さんを誘ってみたそうだ。


 他の鍛冶師の2人も同じような理由だった。


 面接が終わり、実技に移る。


 戦闘職はライズダンジョンの1階への移動する。


 本格的な模擬戦をやる施設がなかったが、それならダンジョンでやれば良いのではと気づいた。


 こちらは、ここからはゆうりさんが試験官で、彼女に攻撃をいれられるかをみる。


 生産職は、まだ工房がないので、清水商店に移動してお借りする。


 生産職の実技は時間が掛かるので、俺は戦闘職の実技を終えた後に、清水商店に移動するつもりだ。


 ダンジョンに入り、試験をみる。


 未経験者は誰もゆうりさんに攻撃を入れられない。


 これは仕方ない。ただ入れられないまでも何か光るものがあるかをみている。


 1人高校生の男の子から、技術はまだまだだがセンスを感じた。


 この子も合格にしよう。


 経験者の4人は、全員がゆうりさんと同じか少し上の実力だっため、攻撃を入れていた。


 もう少し実力をみたいため、経験者は俺も試験官として参加した。


 剣士タイプが3人のタンカータイプが1人であり、どの人も基本がしっかりしていて問題なかった。


 こちらからの攻撃に対してもしっかり反応できている。


 俺は経験者は4人とも合格で良いと判断した。ゆうりさんも同じ考えだった。


 俺は試験結果を各人に伝えると、未経験者の子はその場で入ることを決め、契約を結んだ。


 天霧あまぎりあおい君で俺と同じ高校の1年生だ。


 明日から入団となった。


 経験者は、少し考えさせて欲しいということで後日返答となった。


 うーん、やはり簡単には入ってくれないものだな。


 年下が上にいるってのも難しいのかな。


 気持ちを切り替えて、俺は清水商店に移動する。


 清水商店の工房につく。


 工房には。色々な道具がびっしりと並んでいる。


 工房をつくるお金も用意しないと。


 実技はあと少しで終わりという所だった。


 内容は木工師のあかねさんにはトレントの木片を加工してもらっている。


 鍛冶師の3人には、鋼材を加工してもらっている。


 作業が終わり、作品をみたがあかねさんの技術は素晴らしかった。


 加工の難しいトレントの木片が巧みに加工されていた。惣次さんも褒めていた。


 魔力操作スキルをもっているようだ。


 鍛冶師の方は3人とも働いてほしいレベルだが、りょうさんが頭一つ抜けているというのが惣次さんの考えだった。


 鍛冶師のまとめ役にりょうさんで、その下に他の2人という形でそれぞれに打診してみるかな。


 俺は考えたことを惣次さんとすり合わせていく。概ね同じ考えのようだった。


 結果をこの場で各人に伝える。


 あわせて契約内容を確認してもらう。


 結果、全員働きたいとのことで、この後ギルドに戻り契約に移る。


 生産職全員が来月からライズギルドに入団となった。


 生産職は一気に人員が充実したな。


 工房を作るほうを進めよう。


 それまでは清水商店の工房をお借りしたいことを惣次さん相談し、了承を頂いた。


 ギルドの屋台骨が強固になっていくのを感じる。これからが楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る