第32話 高校生ハンター競技会 全国大会(1)

 競技会の地区予選から3週間が経ち、今日から全国大会が東京で開催される。


 俺は高槻さんと2人で新幹線に乗り、東京へ向かう。


 ゆうりさんは用事が別であったため、先に東京へ行っている。


 高槻さんとは初めて会ったときより、会話も増え、普通の友達のような感じだ。


 あっという間に時間が過ぎ、東京駅へ到着した。


 メイン会場である多目的スタジアムに移動する。


 観客が最大6万人収容できる大きな会場だ。


 全国大会も地区予選と同じで、2日間で行われる。


 予選から始まり、トーナメント戦で1位を決定する。


 会場に入ると、出場選手が続々と集まっており、独特の緊張感が漂っていた。


 周りの出場者が俺をみて、こそこそ話す。


「おい、あれが九条だ。アイスドールに勝ったっていう。戦った相手みんなトラウマになるっていう奴だ」


 何か盛大な勘違いをしている人がいた。


 そんな噂が流れているのか…、訂正したい。


「蓮くん?九条蓮くんじゃないかい?」


 後ろから男性に声を掛けられ、後ろを向く。


正則まさのりさん…」


 俺は言葉に詰まる。


 そこには昔お世話になった叔父の九条正則さんがいた。


 そうか、どこか忘れたけどギルド関係者だったな。


「最後に会ったのは2年前になるね。元気にしてたかい?」


「はい、おかげさまで普通に生活できてました。」


「それなら、良かった。そうだ、この大会に美優みゆも東京代表で出てるから会うといい。美優も会いたがっていたよ」


「そうですね、機会があればそうします」


 俺は静かに言う。


「うん。じゃあ、またね」


 そう言って正則さんは離れていく。


「大丈夫?」


 高槻さんがそう言い顔を覗き込んでくる。


「大丈夫だよ。ちょっと久しぶりに会ったから驚いただけだよ」


「それならいいけど…」


 高槻さんは心配そうにしている。


 少し時間が経ち、司会者の挨拶と大会の説明が行われる。


 初日は予選とトーナメント2回戦まで行う。


 予選は12人1組での模擬戦だ。闘技台から落ちたら失格となる。


 地区予選の順位が反映され、強い選手同士があまり重ならないように配慮はされているが、地区予選の2位の選手も強い選手は多そうだ。


 予選といえども気は抜けない。


 実際高槻さんと同グループの他地域の1位は不運だな。


 試合数が多いので、別会場も使い、試合が行われるようだ。


 テレビ放送用の演出なのか、司会者から有力選手8名が説明され、会場の大型ビジョンに写真が映される。


 俺と高槻さんも入っていた。


 あと、美優もいた。


 そうか、彼女もハンターになっていたんだな。全然知らなかった。


「あの子に去年負けたわ」


 高槻さんが悔しそうに言う。


 そうか、美優はそんなに強いのか。


 いけないな。感情的になっている。落ち着かないと。


 その後、俺も高槻さんも別会場なので、移動する。


 ゆうりさんとは合流出来なかった。


 移動先の会場も大きい陸上競技場で、闘技台が3面設置されていた。


 俺は順番がくるまでストレッチなどをして準備する。


 最初の試合を観戦する。


 事前に地区予選の順位からある程度の実力がわかるため、上の順位の人に対して、協力しグループを作って戦う選手達がいた。


 あれは俺も気をつけないとな。


 さすがにC級ハンター3、4人相手だと苦戦する可能性がある。


 今見ている試合は、上位の人がグループを組んだ選手達をギリギリ倒し、最後に1対1で決着をつけていた。


 どこの地区かは分からないが1位だった人が勝ったみたいだ。


 俺の順番がやってくる。


 闘技台にのぼり、周りをみる。


 周りの出場者が俺を意識しているのがわかる。


 最初に主導権を握らないと面倒だな。


 地区予選と同じ方法でいくか。


 何人かが怖気付いてくれれば良いし。


 俺は試合開始の合図とともに少し本気をみせる。


 ファイヤーソードを唱え、構える。


 こちらに飛びかかろうとしていた選手が黒炎を纏う剣をみて、怖気付いて方針を変えたようだ。


 結局俺以外の選手が戦い始める。


 そして最後に残った1人と俺は戦い、危なげなく勝つことが出来た。


 俺は予選を突破し、決勝トーナメント進出を決めた。


 高槻さんはどうかな?


 別会場なのでまだ分からない。


 試合が終わり、メイン会場へ戻る。


 高槻さんも戻ってきていた。


 問題なく勝ったらしい。


 1人ずつボコボコにしたみたいだ…


 ゆうりさんともここで合流する。


 予選であと1人までいったが負けてしまったようだ。


 落ち込んでいる。


 これで全ての予選会場での試合が終わり、午後からトーナメント戦が始まる。


 ゆうりさんの分まで頑張りたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る