第24話 高校生ハンター競技会 地区予選(3)

 ベスト8に残った選手の中で一人強そうな人がいた。


 3年生の女子で、去年のこの競技会を2年生にして優勝した人だ。


 名前は高槻さんだったかな。


 俺と同じような剣士で魔法も使うタイプのハンターだ。


 地元の新聞とかで天才剣士現ると特集されていて覚えている。


 無表情で相手を倒していくことと氷魔法を使うことから、アイスドールと呼ばれている。


 全国大会でもベスト8に入った実力者だ。

 彼女とは1度戦ってみたいと思った。


 準々決勝が始まる。


「さぁ、ベスト8が出揃った今大会。

 次の試合は優勝候補の対抗馬、九条選手と

 鉄壁の守備で粘り勝つ、守山選手の戦いです」


 試合が始まり、相手は早速守備から入るようだスタイルのようだ。


 誘いに乗るように俺は攻撃を開始した。


 丁寧に相手の隙を狙っていく。


 攻撃を続けていくと最初は余裕の表情だったが、すぐに焦った表情へと変化した。


 鉄壁の守備も、剣術+のスキルで最適化された俺の動きについてこられなかった。


 僅かな隙をついて、相手にダメージを与えていく。


 それを繰り返し、相手はいつの間にかボロボロになっていた。


 最後は盾を真っ二つにした所で、相手の心が折れ、棄権した。


 これでベスト4だ。



 この後はゆうりさんと高槻さんの試合だ。


 試合が始まると、ゆうりさんは防戦一方となる。


 高槻さんの剣はなんと言うかとても華麗な剣だ。見ていて惹き付けられる何かがあった。


 ゆうりさんも食らいついていくが、如何せん実力差が大きかった。


 徐々にダメージが蓄積していき、途中で棄権した。


 やはり強いな。


 俺は試合が終わったあとのゆうりさんに一声かけにいく。


 試合会場の隅にいるゆうりさんを見つけた。


「お疲れ様」


 そう声をかける。


 こちらを向いたゆうりさんは泣いていた。


 急にゆうりさんが抱きついてきた。


 震えている。よほど悔しかったんだな。


 俺はゆうりさんを抱きしめつつ、頭を撫でた。


 数分後、ゆうりさんは落ち着いたようで、そそくさと俺から離れていった。



 準決勝、俺の対戦相手は魔法使いの男子だった。


 結果としては圧勝だった。


 相手の得意魔法が火系統であり、俺はファイヤーシールドを使って簡単に防ぐことができた。


 相手にとっては、相性が悪かったとしか言い様がない。



 決勝の相手は予想通り、高槻さんだ。


 俺は気合を入れ直すと、試合前にインタビューを受ける。


 精一杯やるだけですと、本音で話す。


 時間となり、決勝が始まる。


「いよいよ、地区予選の決勝戦となりました!

 対戦相手を華麗な剣術と魔法で倒してきた高槻選手と、対戦相手にトラウマを植え付けてきた九条選手の対戦です!」


 台にあがり、お互いに礼をする。


 改めて高槻選手をみる。


 こんなに綺麗な人があんなに強いんだもんな。


 俺は少し笑ってしまった。


「なに?」


 高槻選手が聞いてくる。


「いや、なんでもないです」


 びっくりした、話しかけてくるとは思わなかった。


「そう」


 高槻選手はそう言っていたが、その目はこちらをじーっとみている。


 変な誤解を与えちゃったかな。


 審判の合図で試合が始まる。


 俺は先手をとって、攻撃を仕掛ける。


 俺の剣術+スキルを持ってしても、彼女を捉えきれない。強いな。


 だけど、やるしかない。


 俺はさらにギアを上げていく。


 少しずつ、彼女が防御をし出す。


 もう少しで一撃入るという所で、氷の塊が飛んでくる。


 もう少しだったのに。良いところで魔法を使うな。


 今度は高槻選手が、攻撃を仕掛けてくる。


 俺はそれを何とか捌いていく。


 一撃はそれほど重くは無いが、なにせ手数が多い。


 冷静に対応しなくては。


 今のところは互角といった感じで試合は進んでいる。


 ここで攻撃パターンを少し変えていく。


 剣術主体から魔法主体へ切り替える。


 少し距離をとり、ファイヤーボールとウインドカッターを使い分ける。


 これには高槻選手も少し困惑したようで、魔法を避けつつ機を伺っているみたいだ。


 高槻選手が動いた。


 今までで1番素早い動きで、魔法を掻い潜り、俺に近づく。


 やっぱりもう一段階速く動けたんだな。


 俺は近づく高槻選手を見ながらそう思った。


 俺も呼応するかのようにもう一段階速さをあげる。


 そして、ファイヤーソードを唱え、全力をだす。


 剣が黒炎をあげ、黒く輝く。


「綺麗…」


 そんな声が高槻選手から聞こえた。


 俺はかまわず攻撃を繰り出す。


 一撃の重さの差で俺が優位に立っていく。


 そして遂に高槻選手を捉えた。


 首先に剣を当てる。


「降参」


 高槻選手が言う。


 よし、勝ったぞ、優勝だ!


 俺は勝ててほっとしていた。


 そこに声をかけられる。


「あなた、強かった。

 貴方に興味が湧いたの。ギルドやっているのよね?私も入団させて」


 いきなりそんなことを言われて俺は驚いた。


 高槻さんが入ってくれたら、相当強くなるぞ。


 そのあと、表彰式の合間に連絡先を交換し、ギルドに見学に来てもらうことにした。


 表彰式が終わり、優勝者からのスピーチの番だ。


「九条蓮です。今日は優勝出来て、とても嬉しいです。

 全国大会でも良い結果を残せるように、また努力していきたいと思います。

 最後にライズギルドというギルドを運営してまして、メンバーのオーディションを行いたいと思います。

 興味がある方は会場から出て少し歩いたところで団員がチラシを配っていますので受け取ってください」


 これで、地区予選は終了した。


 結果としては満足のいくものとなった。


 競技会が終わり、結果を残した選手のもとにスカウトが集まっている。


 ゆうりさんの所にも来ているが、俺のギルドに入るのでと言って断っている。


 どのギルドも優秀な人はいくら居ても良いので、あの手この手でスカウトしている。


 俺もスカウト活動をあとでしておこう。


 次の全国大会は3週間後になるため、準備をしっかりしていこうと思う。

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