第18話 庭のダンジョン一般開放

 ダンジョン探索部のアドバイザー就任が決まり、俺は予定よりも探索部の部員達と一緒に活動することが増えた。


 部員達と一緒にダンジョンに潜ったりするうちに、人から頼られるのは嫌いじゃ無いことに気づいた。


 もちろん、それ以外の活動もしっかり進んでいる。


 主なところとして、ダンジョンを一般開放したことがある。念願の一般開放だ。


 ダンジョンの名前はギルドネームからとってライズダンジョンとした。


 一般開放前にダンジョン探索部の部員達を引き連れ、ダンジョン探索を行った。


 その際に初級者が主戦場にするであろう地下4階位までの低階層は、簡易的な道を整備した。


 道があれば、もしもの際に迷うリスクが減るはずだ。


 部員には、タダでダンジョンに入れる代わりに、資材の運搬や道の整備をやってもらった。


 まぁ、結局この道に助けられるかもということで、部員達は進んで作業してくれた。


 そのお陰でかなり安く、早く整備が完了した。


 ダンジョンの入場料だが、入場者から潜った階層に応じてお金を最後に集金する形式とした。


 どんどんダンジョンにチャレンジして欲しい思いがあるので後払いにした。


 最悪ダンジョンで手に入れたアイテムを最後にショップに売って得たお金で払ってもらえれば問題ない。


 また、ダンジョン各階の地図を無料レンタルしている。


 あとは1度入場するとポイントカードを作ることができる。


 入場毎にスタンプを押していき、決まった個数集めると特典を受けられるというものだ。


 特典は回復薬だったり、次回入場無料だったりする。


 そして最後の1つは、ダンジョンの入口の横には清水商店のショップがあり、アイテムの購入やドロップ品の買取にも対応できるようになっている。


 冒険者にとって至れり尽くせりのダンジョンだ。


 今のところこんなサービスをしている一般ダンジョンは聞いたことがない。


 一般開放初日は次の土曜日に設定した。


 休日の方が人が多いと思ったからだ。


 少しでも良い日にできるよう準備を頑張るかな。


 〇


 土曜日になった。


 俺は朝から準備をし、そのときを待っていた。


 一般開放開始の9時の少し前には庭の敷地に20人程度の人が来ていた。


 ハンター協会の受付や清水商店にダンジョン一般開放を知らせるチラシを置かせてもらった効果だな。


 時間になったところで受付を開始していく。


 基本はショップのスタッフがダンジョンの説明を行い、地図を渡し、入場となる。


 一般開放記念として、この土日は入場料は無料とした。


 クチコミで評判が広がってくれることを期待している。


 俺は事故など起きないようにダンジョンに入り、この日の午前は監視員として危険がないか監視していた。


 特に問題なさそうなので、午後からはまた地上にもどり、お客さんの様子をみつつ、受付を手伝ったりしていた。


 ショップのスタッフは清水商店のスタッフであり、テキパキ作業をこなしていた。


 この人たちがいないと運営できないからな、たまに差し入れとかを持ってくるようにしよう。


 最初のハンターが入場してから数時間が経過したところで、ダンジョンからパーティー1組戻ってきた。


 表情を見る限り、それなりに成果があったみたいだ。みんな笑顔で話している。


 ハンター達はそのまま隣のショップに入り、アイテム査定をしてもらっている。


 ダンジョン横にショップがあるのはかなり便利だ。


 アイテムはかさばるから、ここから更に移動だとかなり面倒になる。


 なので、ほとんどのハンターがショップでアイテムを売却してくれる。


 初日は事故もなく、入場したパーティーは全員戻ってきた。


 クレーム等も特になく、運営の第1歩として良いスタートをきれた。


 〇


 次の日も同じように朝から人が溢れていた。


 列に並んでいるハンターの中に見慣れた集団がいた。


 ダンジョン探索部の部員達だ。


 高校生ハンター競技会に向けて、実力を上げていかなければならないので、このダンジョンを使い倒して欲しい。


 部員中から1人こちらに向かってくる。


 副部長のゆうりさんだ。


「おはよう、九条くん。

 ちょっと相談があるのだけれど、少し良いかしら?」


 俺は特に急ぎの用はなかったため、相談に乗ることにした。


「いま進路について考えていて、最初は大学に行きつつ、ハンターとしての可能性を探ろうと思っていたの。

 けど、あなたが部活に参加してくれて、ライズギルドというものを知っていくうちに、ここならハンターとして成長できるんじゃないかと思って。

 私をライズギルドに入れてもらえないかしら、お願いします」


 まさかのギルドへの入団希望だった。


 俺としては、どこかのタイミングでゆうりさんをスカウトしたいと思っていたため、快諾した。


 ただし、いまは競技会の前であり、このタイミングで入団を発表すると他の部員に悪い影響を与えてしまう可能性がある。


 競技会が終わったタイミングで部員へは報告するということになった。


「わかったわ。それなら絶対に競技会で良い成績をとらないといけないわね」


 ゆうりさんは言った。


 やる気になってくれたなら良かった。


 ゆうりさんは話しが終わると、また部員達の方へ戻って行った。


 時間となり、ハンター達が順番に受付を経てダンジョンへ入っていく。


 思った以上にハンターが来てくれるため、ダンジョンの各階層はフル稼働している。


 早く下の階を開放した方が良いな。


 あと2レベル上げれば地下14階までが開放されるため、更なる高レベルパーティーを呼び込めるはずだ。


 そう考えた俺は、今後はレベル上げを目標に活動することを決めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る