第16話 夏休みの終わり、新学期突入
庭のダンジョンの地下9階を探索した日から2週間がたった。
この間にショップはほぼ完成し、いつでもオープンできる状態となった。
ギルドホームは建築家の方から提案されたパターンのうちの1つに決め、いま工事が始まっている。
工事のあいだは、近くのアパートで過ごしている。
かなり急ピッチで作業してくれており、1ヶ月程で完成するとのことだ。
なのであと2週間ちょっとの辛抱だ。
俺は2週間のうちに協会でC級の依頼をコツコツこなしていた。
C級から歯ごたえのある依頼が増えてきた。
ダンジョン探索の依頼でも強いモンスターが出てくるようになり、俺は順調に強くなっている。
レベルは2つあがった。
九条 蓮
レベル : 18
HP : 77
MP : 70
攻撃力 : 57
防御力 : 55
素早さ : 40
魔力 : 41
運 : 39
スキル : 【気配察知】【剣術】【気配遮断】【盾術】【身体能力強化】【シールドカウンター】
魔法 : 【ファイヤーボール】【ヒール】
【ファイヤーソード】【ウインドカッター】【ファイヤーシールド】
称号 : 【ダンジョンの管理人】
シールドカウンター : 相手の物理攻撃に対し、盾での防御タイミングが合った場合、50%の確率で攻撃を反射し相手にダメージを与える。
新しいスキルのシールドカウンターはタイミングがシビアだが、防御に回らないといけない戦いでも状況を変えられる可能性がある。
今後のためにもどんどん試していきたい。
実は夏休みが昨日で終わり、今日から新学期だ。
なので、高校へ行かなくてはならない。
憂鬱だ。鮫島が絡んでくるに決まっている。
一度話しをした方が良いかもしれない。
俺は、制服に着替え高校へ向かった。
高校があと少しというところで、亜希さんとばったり会った。
亜希さんが嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。
「おはよー、蓮くん!」
俺はおはようと挨拶をかえす。
ちょっと周りから見られてるな。
亜希さんに早く行こうと言い、歩き出す。
高校の門をくぐると視線は更に増えた。
厄介事が無ければ良いけど。
俺は職員室に用があったので下駄箱の前で
で亜希さんとわかれ、職員室へ向かう。
職員室に入り、2年の学年主任の先生をみつけ、ハンターになったので届け出を出したい旨を伝えた。
先生から紙をもらい、必要事項を記入した。
ハンターライセンスを確認してもらい、受理された。
これで高校への届け出は問題ない。
俺は職員室をでて、教室へ向かう。
教室について、中に入った瞬間、クラスメイトの視線がこちらに向く。
朝の亜希さんとの事を聞きたいのだろう。
ただ直接話しかけてくるやつはいない。
午前中は何とか平穏に過ごせた。
やっと昼休みといったところで、鮫島が登校してきたらしく、
「おいっ、九条!おまえ、清水さんと話してたらしいな。調子に乗るなよ!お前なんか相手にされる訳ない。清水さんには俺みたいな男じゃないとな!」
現れていきなり一方的に話していく。
「亜希さんとは友達だ。友達と話して何かいけないのか?」
俺は冷静に言った。
「だから、おまえみたいな貧乏で弱いやつは清水さんとは釣り合わないんだよ!」
そう鮫島は喚く。話しが通じない。
鮫島の取り巻きの近藤が俺の態度に苛立ったのか、俺の胸倉を掴もうとしてきた。
少し牽制しないと無理か。
そう思い、俺は近藤の手首を掴んで捻った。
近藤は痛がりながら動けない。
「鮫島さんはD級ハンターだぞ、逆らうのか」
と近藤が言ってきた。
「だから何?関係ないね」
俺はそう言いながら、近藤の手首を離してやった。
近藤は手首を押さえつつ、鮫島に助けを求める。
鮫島が俺の前に立つ。
俺は、前はこいつをみて、少しびびっていたなぁなんて呑気なことを考えていた。
鮫島が殴りかかってきた。
俺は軽く避ける。
さすがにステータスの差があり過ぎるみたいだ。
その後も何度も殴りかかってくるが俺には届かない。
その時、
「こらっ、何をしているんだ」
担任の教師が教室に入ってきた。
鮫島は急に笑顔に変わり、
「先生、俺が一般人に手を出すわけないじゃないですか~」
そう言った。
「うん?あぁ、今日提出されたから皆知らなくて当然か。九条もハンターになったみたいだぞ」
担任が普通に個人情報をバラしていく。
別に隠すこともないが、わざわざ言う必要もないと思うが。
鮫島の方をみると、何か悪いことを思いついた顔をしている。
「そうなんですね。なら九条も高校生ハンター競技会に出るよな?」
鮫島がそんなことを言う。
毎年、高校生のハンターの全国一位を決める大会がテレビで放送されている。
トーナメント形式で1対1の戦闘を行っていく大会だ。
地方予選から実施され勝ち進むと、全国大会が東京で行われる。
俺も存在は知っていたが、出る必要は無いと思っていた。
鮫島は、そこで俺よりも良い成績を残して面子を守りたいみたいだな。
俺が断ったら卑怯者だって言えば良いだけだしな。
「そうだな、出ようかな」
俺はそう返した。
「じゃあ、決まりだな!精々予選なんかで落ちないようにな!」
鮫島はそう言うと教室から出ていった。
残っていた教師、クラスメイトも散っていく。
やっと昼食が食べられる。
俺は残り少ない休み時間で、弁当を口にかきこんだ。
午後の授業は静かに過ぎていった。
時たま鮫島やその周りの取り巻きがニヤニヤこっちを見てくるぐらいだ。
授業が全て終わり、帰宅時間になった。
急に周りがざわつきだす。
どうやら亜希さんが俺を迎えにきたらしい。
俺は亜希さんの方に向かう。
2人で歩き出した時、鮫島たちが声を掛けてきた。
「清水さん、こんなやつ貧乏人じゃなくて俺と一緒に帰ろうよ。
もしかして、そいつに何か弱みでも握られてるんじゃないの?」
「まじか?それヤバくね!」
周りが騒ぎ立てる。
「あなたは蓮くんの何を知っているんですか?蓮くんは私の大切な友達です。」
亜希さんは、静かに、だがはっきりとそう言った。
「いや、俺が言いたいのは…」
鮫島がまだ何か言いかけたところ、亜希さんが遮った。
「わたしは人のことをそうやって貶める人は軽蔑します」
これが効いたのか周りも含め、静かになった。
鮫島は俯いている。
「いきましょ、蓮くん」
俺たちはそこから離れた。
「九条!!絶対許さねぇ、絶対にだ!」
鮫島のそんな言葉が聞こえた。
亜希さんとともに高校をでて少し歩いたところで、突然謝られた。
「ごめんなさい、わたし勝手なこと言って。蓮くんに迷惑かけちゃったね」
と俯いている。
「いや、ああいう風に言ってくれてありがとう!嬉しかったよ」
俺は素直にそう言った。
両親が居なくなってから、余裕なく過ごしてきた。
最近はまた生活を楽しめている気がする。
それは亜希さんだったり、ひなたさん、双葉さんたちのお陰だ。
亜希さんはそこで顔をあげ、良かったと呟いた。
俺は感謝の言葉を言い、2人で家に帰った。
亜希さんはショップの方の準備に向かい、俺は着替えてから庭のダンジョンに潜る。
低層階のモンスターを間引いて、今日の活動を終える。
18時ぐらいに亜希さん、ひなたさん、双葉さんも活動を終えて、アパートにやってくる。
今日の活動報告兼食事会だ。
俺は手料理を振る舞いつつ、皆が頑張ってくれていることを労う。
「はぅ、胃袋を掴まれてる」
双葉さんが小声で何か言っている。
俺は今日高校であったことを話し、大会に出ることを告げる。
皆そんなやつ、やっつけちゃえと応援してくれた。
すぐにネットから参加を申し込んだ。
地方大会は1ヶ月後だ。
それまでに更に強くなろうと心の中で誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます