第12話 C級ハンター昇級試験
清水商店との提携の話が決まってから、俺は精力的にハンター協会の依頼を受けていた。
D級はもちろん、E級の溜まった依頼も受けられるものは受けた。
夏休みが残りあと10日くらいのところでD級の依頼達成が20件となり、昇格試験を受けられることとなった。
ハンター協会の受付で申し込む。
D級からは数が少なくなるので個別で対応してもらえるらしく、ちょうど試験官の都合が空いたため、すぐ受けることが出来た。
訓練施設で待っていると見知った人が現れる。D級昇級試験でも試験官だったB級ハンターの八木総一郎さんだ。
「おー、九条。もうC級か。ソロのハンターはやっぱり早いなー」
総一郎さんはそう言うと、試験内容の説明を始める。
今回は試験官との模擬戦で、制限時間は無しらしく、純粋にタイマンだな。
前回それなりに手の内を見せていることもあり、ステータスが劣る分、不利かもしれない。
俺たちは闘技台に上がり、模擬戦がスタートする。
前回同様にまず総一郎さんが仕掛けてきて、俺が防御すると力量の差が少し感じられた。
感触としては、前よりも差が縮まっている気がする。
俺はファイヤーボールを唱え、様子をみる。
単純な戦闘力としては総一郎さんにも負けていない気はするが、圧倒することはできない。
あと1歩が足りない。
その1歩を埋めるため、俺は切り札を使う。
俺はファイヤーボールを連射し、総一郎さんの目を撹乱する。
そのつぎに総一郎さんの左側に回り込む。
「ファイヤーソード」
鋼の剣から炎があがり、刀身が紅く輝く。
俺は上段から剣を振り下ろすと、総一郎さんは盾で受けようとした。
剣が盾と触れた瞬間、盾が砕けた。
これには俺も驚き、剣を振り下ろすのを止める。
ギリギリ総一郎さんの首寸前で剣が止まった。危なかった。
「死ぬか思ったぞ。すごいスキルだな」
総一郎さんは興奮した感じで言う。
「あはは、俺も驚きましたよ」
本当にあともう少しで殺してしまうところだった。
俺たちは闘技台をおり、少し話しをする。
試験はもちろん合格だった。
これでC級ハンターとなり、ギルドを設立できるようになったので、受付でギルド設立について話を聞いた。
次の条件をクリアする必要がある。
1.代表者がC級ハンター以上であること
2.団員が3名以上在籍すること
3.準備金として10万円を支払うこと
が条件のようだ。
入ってくれる人を2人以上探さないと。
あと実家のダンジョンもそろそろ下の階を探索するか。
実家のダンジョンを一般開放するにあたり、他のハンターの意見が聞きたいな。
ひなたさんとか、双葉さんを誘ってみるか。
俺は2人に連絡をし、都合を聞くと2人とも明日で良いと返信がくる。
○
次の日、俺は最寄りの駅まで2人を迎えにいく。
先にひなたさんが到着していた。
「久しぶり。今日は誘ってくれてありがとね」
ひなたさんが笑顔で言う。
ひなたさんと少し話していると、双葉さんが到着した。
「おはよう、今日はお誘いありがとう」
双葉さんがはにかんで言う。
「ひなたさん、紹介するね。今日一緒にダンジョンに潜ってくれる仁科双葉さん。色んな人から意見を聞きたかったから2人を誘ったんだ」
2人の目が会った瞬間、一瞬だが何かピリッとした空気が流れた。なんだ?
微妙な雰囲気は最初だけで、歩いているうちに打ち解けたようだ。
良かった、雰囲気微妙なままダンジョン探索とか辛かったからな。
俺は2人に実家について庭のダンジョンについて説明する。
また今後俺がやろうとしていることを掻い摘んで説明した。
「ギルドを作って、ダンジョン経営…凄い」
とひなたさんが言うと、双葉さんも、
「強いだけじゃなくて、将来に向けてしっかり考えているんだね」
と言ってくれた。
2人とも、ギルドが出来たら入りたいと言ってくれた。
これは非常にありがたい。
信頼できる人は何人いても足りないため、俺は2人に是非入って欲しいと伝えた。
ダンジョン前に着いたので、準備をして、早速ダンジョンに入る。
前衛を俺、後衛をひなたさん、双葉さんという布陣で進む。
今回は各階の雰囲気だったりを見てもらうためなので、地下4階くらいまでを案内する。
2人とも各階の広さに驚いており、この広さなら結構な数のパーティーが入場できると言ってくれた。
地上に戻ってからは、潜った感想や意見を言ってもらった。
その中で、清水商店と提携できるならダンジョンの横にショップがあると便利という意見をひなたさんが出してくれた。
確かにそうだな。
亜希さん達も考えているかもしれないが、一応伝えておこう。
良いアイデアだと思う。
あと双葉さんから、トレントが出るエリアだけは、あえて開放しないで木片を収集する事業をしてはどうかというものだった。
トレントの木片は貴重なので資源として採取してギルドとして加工して売り出した方が利益が出るというアイデアだ。
これも面白いな、相談してみよう。
「亜希さんにも相談するかな」
俺がぽろっとその名を言うと、2人がこちらをみて何かボソボソ呟いている。
「まだ他にも女の子がいるみたい…ライバルが多いわね」
俺には聞こえない声で話している。
話し合いが終わると、お昼の時間になったため、手料理をふるまった。
とは言っても簡単なもので、肉じゃがを作って食べてもらった。
2人は終始笑顔で食べてくれた。
食後のコーヒーを飲んだところで2人は帰宅した。
良い意見を聞けたので、運営に取り入れていきたい。
そういえば双葉さんは何か言いたそうな顔をしていたが、なんだったんだろう。
今度聞いてみるかな。
午後からは庭のダンジョン探索を再開しようと思う。
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