第11話 探索 D級管理ダンジョン(2)

 ハンター協会のD級管理ダンジョンの探索中に俺はポーターながら戦闘に参加した。


 結果もう1人のポーターの仁科さんを助けることができたので、その判断は良かったと思う。


 探索のリーダーからはお礼を言われた。


 何か小言を言われると思ったが、そこは大人なようだ。


 野営ポイントの洞窟についたため、辺りを警戒しつつ野営の準備を始める。


 みんなテントなどをテキパキと設置する。


 さすが慣れている感じだ。


 あと洞窟の入口にモンスターが嫌がる匂いを放つ匂い袋を置いておく。


 これがあるとモンスターが寄ってこないらしい。


 今度機会があれば参考にしよう。


 食事をして、順番に寝ていく。


 しっかり寝ないと見張り番が出来ないからな、早く寝よう。


 テントに入ると、仁科さんがいた。


 テントは2つあるが、スレイヤーズギルドとそれ以外となっており、順番的に俺と仁科さんの2人がこのテントで寝る番だった。


 少し気まずい雰囲気が流れる。


 こんな時は早く寝るに限る。


 そう思い寝袋に入ると、後ろから小さな声が聞こえた。


「助けてくれてありがとう」


 すぐに仁科さんは逆を向き、寝てしまった。


 暗いテントの中でわからないはずだが、どうしてかその顔が赤くなっているような気がした。


 俺もほどなくして眠りについた。



 3時間寝て、俺の見張り番だ。テントから出て、スレイヤーズギルドの前衛のハンターと交代する。


 もう1人はリーダーの人だ。


 見張り番をしながら、少しリーダーの人と話をした。


 スカウトの橋本さんから俺の事を聞いていて、今回の探索に名前があることに気付いていた。


 スレイヤーズギルドのスカウトを断ったことを生意気だと思っていたと伝えられた。


 ただ仁科さんを助けた場面をみて、衝撃を受けたと言われた。


 少なくともC級以上だと感じ、スレイヤーズギルドが振られた理由も納得したとも。


 この会話で少しは緊張した雰囲気が緩くなった気がした。


 俺は時間がきたので、見張りを交代し、また眠りについた。


 朝起きて、軽く食事をとったらすぐ探索を再開した。


 このあとはスムーズに探索が進み、10階のマッピングも完了した。


 帰りは最短で登っていくだけであり、時間はそれほど掛からず地上へ戻れた。


 ダンジョンから出るとバスが待機しており、協会まで移動した。


 協会で依頼完了の報告を行い、解散した。


 帰り際に仁科さんが近寄ってきて、連絡先を交換したいと言うので交換した。


 ポーターが必要な時は連絡してと言われた。


 今すぐは機会が無いが、庭のダンジョンも深い階までいくときは必要になるかもしれない。


 家に帰ろうとした時、携帯に連絡が入った。


 清水さんからだ。


 庭のダンジョンの検査が終わったようだ。


 検査結果を伝えたいから時間のある時に、お店に寄って欲しいと。


 今から行く旨を伝え、清水商店へ向かった。


 清水商店に着き、店内へ入る。


 店員さんが俺をみると、応接室に案内される。


 中には亜希さんと亜希さんの父親の惣次そうじさんがいた。


 ソファーに座り、会話を始める。


 惣次さんが話し出した。


「よく来てくれたね、九条くん。君の家のダンジョンの調査結果が出たので共有させてほしい。

 まず結論からだが、是非とも提携させて欲しい。地下9階までと階層は多くないが、各層の広さは申し分ない。出てくるモンスターも悪くない。あれなら入場パーティー数に気をつけていれば経営は回ると考えている」


「ありがとうございます。結果が良くて良かったです。こちらこそ是非提携で進めさせてください。」


 今の依頼件数からしてもC級へは今月中に上がれるんじゃないかと踏んでいる。


 ただ何かの拍子に遅れると惣次さん達に迷惑を掛けてしまうので、一旦再来月までにギルドを作って提携という流れにさせてもらった。


 残りの夏休みも依頼業務をバンバンこなすとするか。


 打ち合わせが終わり、店を出ると亜希さんが小走りでやってきた。


「折角だから少しお話しない?」


 俺はいいよと頷いた。


 近くの公園のベンチに座り、提携のことや今後の進路のこととかを話した。


 高校に入ってからこんな風に誰かと話すことがあまりなかったなと今更ながら思った。


「ねぇ、九条くん。下の名前で呼んでも良いかな?」


 亜希さんは微笑みながら言う。


「いいよ」と俺は答えた。


 俺はもともと惣次さんと区別することもあり、亜希さんと呼んでいたので抵抗はない。


「ありがとう、今日は話せて楽しかった。また来てね、蓮くん」


 笑顔でそう言い、亜希さんは店へ戻って行った。


 俺は亜希さんの最後の笑顔に動揺していた。


 危ない危ない、勘違いする所だった。


 でもあの笑顔は破壊力があるな。


 提携の話は亜希さんのためにもなるし、頑張ってまずはC級にあがるか。


 俺は早くなる鼓動を抑えつつ、次の行動について考えた。

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