第13話
カタカタ揺れる馬車の中。
「ふんふふーん♪」
楽しそうなアイラと
「·····」
「·····」
地獄のような雰囲気の俺の前に座る二人。
「はぁ、アイラ様とユーゴと一緒なのはいいけど、なんでこの女と」
「それはこっちのセリフですわ!! そもそも、私チームを組む覚えはなくってよ!」
「それなら大丈夫! 今回の仕事は3人で別れてやってもらうから! 完璧な個人の仕事です!」
ニコニコしながらアイラがそう言った。
「だって初めての仕事だもんねー、分かる分かる、最初くらい1人でやりたいもんね! そこは先輩として配慮してるよ!」
「ずっとボッチだろアイラ」
「孤高の一番星だから」
ドヤ顔を俺に見せてくるな、腹立つ。
「·····それで仕事内容はなんですの?」
「1人は私のお付き、もう1人はパーティーでの警備、最後の一人は王子の想い人の警護」
「「「·····!」」」
真面目に語るアイラを見て俺達は思わず息を飲む。
「何驚いてるの?」
「だって、アイラが真面目に言うから」
「えぇ、ふざけた内容で連れてくと思いましたわ」
「信用なっ! まぁ、だからわざとふざけて師匠には依頼かけたんだどねー·····だって、これ結構極秘任務だから」
極秘任務と聞いて更に室内は緊張した空気が張り詰める。
普段おちゃらけてるアイラがちゃんとしてるだけでも怖いのに、極秘って、これ俺達やばい仕事に行くんじゃ·····
「この任務は第3王子直々の依頼でね、今日の舞踏会は全王子の正妻と妾を決めるパーティーなの。と言っても出来レースらしいけどね。婚約者は彼らの父親である国王がもう決めていて、実際は側室を探す感じ、でも第3くんは心に決めた人がいるから、お父様を裏切ってその子の名前を呼ぶんだって。でも、すっごくその子可愛いから他の王子達に取られないようにして欲しいんだってさ」
「·····なるほど」
「そう、あと王様は気に食わないやつを直ぐに消すから、もしもの事があれば女の子も第3くんもすぐ捕まっちゃうでしょ?だから、2人とも護衛する感じ」
「それ大丈夫ですの? 依頼されてる私達まで危険に·····」
「大丈夫!大丈夫! 何かあったら全部私の責任でいいから!まぁ第3くんも王子だしちゃんとやるべき時はやるって!」
お姉さんに頼っていいのよと言わんばかりの笑顔でそう言うアイラ。
「·····なぁ、なんでそんなリスクがあるのにワザとおちゃらけて、俺達新人を連れてきたんだよ·····」
「だってちゃんと話したら、中堅冒険者選んじゃうでしょ。私は新人君達に経験を積んでもらいたいと思って連れて行きたかったんだよね、皆も早くSS級になりたいでしょ?」
ということは、アイラは俺達を育成しようとしてるのか。
「·····そりゃ、光栄だけど、なんで俺達を·····」
「私が期待してるから」
その俺に向けた微笑みは、心臓を止まる程の衝撃だった。
多分前の二人も同じだろう。
胸の鼓動が激しくなり、体が熱くなる。
「それとも、私の期待は重すぎるかしら少年よ」
何言ってんだ、あのシロガネ・アイラが期待してくれてんだろ?
そんなのよぉ·····
「いや、最高の愛だ」
親指をぐっとあげて、キメ顔でそう言ってやった。
それを聞いたアイラは、瞳をキラキラと輝かせ
「その返し花丸満点」
手を上げて大きな丸を作って満足そうに笑った。
「あっ、アイラさん! 驚きましたわ! 貴方がそれほどまで私達を思ってくれてたなんて!!」
さっきまで怖い顔をしてたエルメが手をぎゅっとして感激している。
「自由奔放で、自分の都合しか考えてないトラブルメーカーだと思ってましたが、その行動には色んな意味が含まれてたんですね!」
「ぐふっ!?」
アイラに何本かの矢がグサグサと刺さった気がした。
「さすがSS級冒険者感服しました! 私達も精一杯がんばりますわ!」
「うっ、うん、やる気出してくれたのはいいけどちょっと複雑」
·····どんまいアイラ。
「アイラ様、わっ、私も頑張ります!」
「うん、ミソラも頑張って。貴方の事も待ってたんだから」
「あっ、アイラ様!」
·····ミソラも感激してる。
そういや、ミソラとアイラにも接点があったんだな。
「ふーん、貴方もアイラさんのお気に入りでしたの」
「何よその言い方」
「別に、ラッキーでギルドに入って、SS級にも可愛がられてるなんて羨ましいと思っただけですわ」
·····うわっこいつらまだ喧嘩してたのか。
「運も実力のうちって言うでしょ、それに私だって強いんだから」
「へーそうですの? じゃあ、その力ちゃんと発揮しなさいよね、せいぜい私達の足でまといになるんじゃないわよ」
バチバチと火花が散る二人の座席。
あのアイラも思わず苦笑い。
「えーっと、とっとりあえず、仕事の割り振りするね」
「それなら私、想い人の警護やります」
「あら? アイラさんの隣でなくていいの?」
「えぇ、私の魔法なら絶対に彼女を守れるから」
自信満々にミソラはそう言った。
「じゃあ、それはミソラで」
「ヘマしたら承知しませんわ、では私は城の警備で」
エルメは嫌味を言いながら手を挙げて提案する。
「うえっ!?」
「あら、何かご不満が?」
「べっ、別に! 貴方ならアイラさんの隣で活躍するのは私ですわ! とか言いそうだったから以外って思っただけよ!」
「そこまで目立ちたがり屋じゃありませんわ。貴方と同じで私の魔法はこの仕事の方が役に立ちそうですわ」
「じゃあ、余った俺はアイラとか」
「うん、と言っても戦闘になったら私とは別行動、ユーゴ1人での仕事になるから頑張ってね」
「おう、任せとけ!」
「よしじゃあセンタ王国に着くまでおっ喋りだー! 皆恋バナしようぜ!」
·····センタ王国に着くまで、地獄のような時間が始まった
愛に落ちるのは倒されてから!! あぱろう @apa6gou
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