第10話
·····まじか、アイラ俺の事忘れてやがる!
えっちょっと待て、3年だぞ!?
たっ、確かに背は伸びたし声は低くなったが、分かるだろ!
「後悔すんなよ、少年!」
でも、あのアイラと一戦やれるのか·····なら思い出すまでやりあってやる!
まぁ、それまで俺が持つかだけど!
「後悔なんてないぜ! アイラ! お前とやるのを楽しみにしてたんだ!」
「·····?」
すっげー首傾げてる。
会ったことないのに何言ってんだこいつ、みたいな顔してる。
「って! 違う違う! アイラ! 一緒に俺とギルドに帰るぞ! そうしないと俺がギルドに入れない!」
あっぶねー、当初の目的忘れてた!
これはアイラを連れ帰るだけのミッション!
あそこに伸びてるアホ4人は放っておけば、俺は赤星の欠片に入れる!
「·····いや、さっぱり何言ってるか分かんない、やっぱ切るか」
慈悲がねぇ!!!
一瞬考えたけど、分かんなくて面倒くさくなりやがった!
かっこいい大剣を俺に向けてなんかブツブツ言ってる!
これ、戦わなきゃ俺が死ぬっ!!
『
ステージ上から早く鋭い斬撃が飛んでくる。
それを避けるために慌ててしゃがむ。
『
動きがにぶってるところに、追加攻撃。
空から降る数多の星達。
避けられない弾幕を作るとか鬼かあいつは!
「·····っ! 魔力回路部分展開、武装鉄拳!」
魔法を使うと、俺の拳は鋼鉄のように硬くなり、見た目もサイボーグのように変わる。
そして飛んで来る隕石を打ち砕き彼女の前に詰め寄った。
·····これ、こいつらに当たるよな。
ついでに、危ない場所にいる4人の同期を端っこに寄せて。
「·····ふーん、少しやるじゃんここで潰すのが勿体ない」
言い方不穏!!
だけど俺、アイラに褒められた!?
努力したかいあったー!!!
こんな時じゃなかったら思いっきり喜ぶわ!
「ちょっと、なんで嬉しそうなのよ。もしかしてあんたすっごい面倒臭いファン?」
「お前が言うな!!」
「·····それにしても、君私に相当馴れ馴れしいのよねー、どこかであった? でもなー、そんな顔の性格の悪い男の子なんて知り合いに居たっけ?」
「やっぱ忘れてんのかアイラ·····」
「·····??」
「いいです、いいです、大丈夫です。覚えてなくて結構です」
「いや、そんなイケメンにしょぼくれた顔させるとか私罪な女すぎん? えっちょっと待って本当に誰? 私の技初見で回避するファンボーイとか覚えてなきゃいけないのに」
剣をステージに刺し顎を乗せて渋い顔をするアイラ
「はー! やっと追いついた!! って何これ!?」
扉を開けて入ってきたのは6人目の挑戦者。
うわっ、ミソラ! 追いついたのか!
まずいぞ、先に来たやつ伸びて脱落してラッキーって思ったのに、こいつが来たら競争率が上がる!
「あっ! アイラ様だ! アイラ様ー!! お久しぶりです! ミソラです! ミソラ・ミストラルでーす!!」
ぴょんぴょんしながら、アイラに手を振るファンガール。
それを見つけると嬉しそうな顔をするアイラ。
「えっ! ミソラちゃん!? やっべーすっごい美人! えっなになに!? なんでここにいんの!? 」
「
「えー! 何それ! あっもしかしてマスター仕事行ったのすっげえ怒ってる感じ? あちゃー手土産でも持って帰んなきゃ」
「そういや、アイラ様ここにもう5人誰か来てませんか? 私ビリケツだったから、もうアイラ様連れてかれたかと思いましたよー!」
「えっ? ·····もしかしてこの人達全員赤星の入団希望者!?」
ニコニコしてた顔が急に青ざめるアイラ。
「そーですよ!! あと、ユーゴ来てません? 私より先にテレビ局来てたと思うんですけど·····」
ミソラの言葉を聞いて、俺を見つめるアイラ。
「金髪、赤眼·····」
穴が空くほど見つめて、彼女は脳内で俺の成長を予想する。
「·····じゃあ、もっもしかして君は·····ゆっ、ユーゴ!?」
「気づくのが遅せぇよバカイラ」
コロコロ表情が変わって忙しいやつ。
さっきと打って変わって、とても幸せそうな顔で俺にこいつは飛びついてきた。
「ユーゴ!! ちょっとそんなに強くなったの!? まって私の魔法砕いたとか嬉しすぎんだけど! あっでもまって、顔全然可愛くねー! なんでキリッとしちゃった訳!? イケメン顔じゃん! まってまって、愛くるしい感じで育つと思ったのに! いやーゴブプリもビックリな成長だよ!」
「余計なお世話だ!」
「げぇええええ! 背も高くなってる!よしよし出来んじゃん!」
「知るか!! つか、離れろ! お前アイドルだろ!」
「あっやっべ! 未成年に抱きつくとか事案じゃん! やっべーこれカットできます? ってこれ生放送じゃん!! 」
SS級冒険者兼アイドル シロガネ・アイラ(20歳)!!!
20歳!!
「たはー、ごめんごめん、久々に弟分に会えたから嬉しくなっちゃった! いやぁ·····本当に来てくれて嬉しい!」
「·····おっ、おう」
見た事のないくらい眩しい笑顔に、少しだけ戸惑った。
笑ってるだけなら本当に可愛·····って、何言ってんだ。
「あっ、アイラ様!! そのっ! 私達と一緒にギルドに帰ってくれると嬉しいなーなんて!」
「あっ! そっか! おっけー! 今から帰ろっか! おーいマスター、見てる!? この子達全員合格ね! ギルドで待っててー!」
カメラに向かってそう言うと彼女は伸びてる4人を担いでスタジオを飛び出した。
「2人とも、早くっ! 行くよっ赤星の欠片に!」
誰も見た事のないアイドルスマイルを振りまいて彼女は駐車場まで走った。
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