第9話

ところ変わって、仕事中のアイラ。


「アイラさんのここ3年の活躍は目覚しいものばかり! ゲルドナドラゴン盗伐その次の日にゴブリンキング・プリンセスの討伐、その功績で国から勲章を授かり、次の年にSS級冒険者に! 最近では新種のマンドゴラを見つけたとか!」


「そうなんですよー! 引っこ抜いたらすごい悲鳴でー、だけどすりおろして食べたらお肌ツルツル! 今度美容食品として売り出すみたいなんですぅー!」


あー早く終わんないかなあ。

いつもなら、楽しんでやれるんだけど、今日ばかりはほかのことが気になって、仕事に集中できない!

だって今年じゃん、ユーゴが冒険者になれるのって!

てことは、うちに私を倒すために来るんでしょ!

いやぁ、楽しみすぎる可愛い弟分が自分を超えるって!

自分がラスボスになったみたいで、超絶ワックワク!

ラスボス系ヒロインアイラ、なんでいい響きなんだ!


「本当にすごいっ! どうしてそんなに強くなれるんですか!?」


「決まってます! 愛の力です! 愛の力はサイキョーですし!」


カメラに向かって指でハートを作ってウィンクしてファンサービス。


「でたっ! 決めゼリフ! ちなみに愛の力の源は!? アイラさん好きな人は誰なんですか!」


「またぁ、いつも言ってるじゃないですか! フォルトナのセイバー様ですぅ!」


フォルトナとは私の好きな漫画である。

ホウエン一売れてる漫画の主人公であるセイバーは私の嫁いや私が嫁なのだ。

これを言うといつも引かれる、とても悲しい。

ちなみに今も引かれた、悲しい。


「あっ、あははは·····い、一旦コマーシャ·····」


「ここにいましたのね! シロガネ・アイラ!!」


スタジオの扉を開けたのはボロボロの縦ロールのお嬢様。

後ろにオマケで執事もついている。

えっ、ちょっ、何?

誰この人達!?


「·····はぁ、はぁ、一番乗りしたのはいいけど、警備の数が多すぎて骨が折れましたわ·····」


「お嬢様·····頑張ってくださいあと少しです」


「ちょっと! 生放送中ですよ! 勝手に入って来ないでください!!」


慌てて追い出そうとするスタッフ達。


「お黙りなさい! 私達はそこのアイラさんに用があるのです!」


「彼女を連れて行かないとお嬢様がギルドに入れないのです!」


「邪魔するやつは、吹き飛ばしますわ!」


彼女が扇子を降ろすとスタジオ中な風が吹き荒れる。


「·····なんの用か知らないけど私ちょっとピンチ?」


「スタッフー! スタッフー! 侵入者どうにかしてー!!」


隣の司会者が慌て始めてすぐに今度は右側の扉が開く。


「ここか! シロガネ・アイラは居るか!!」


「アイラ様みーつけた、ごめんなさい一緒に来てくれますか?」


別の扉から白髪の少年と黒髪の女の子がスタジオに入ってくる。


「もしかして、私攫われかけてる? やだー! 超絶ヒロインって感じ! でも私攫われるほどヤワな女じゃないんだわ!」


「ひいっ! 戦う気ですか! 私は戦いたいわけじゃ!」


「おもしれぇ! SS級とやれるんだ! 面白くなってきたぜ!」


「アイラ様には申し訳ありませんが全力でいかせて貰いますわよ!」


「申し訳ありません、お嬢様のためです。私も全力でやらせてもらいます」


·····だっるー。

何で仕事中に狙ってくるかなー冒険者の風上にも置けないわね。

見たところ、新人みたいだなー初仕事に大変なの選んじゃって。

依頼人は馬鹿なのかしら·····まったく、よりにもよってこんな時に。


あー!早く帰りたいのに!!


「いいわ、全力で来なさい。ロベルトさん、番組内容変更よ、CM明けからは、アイラVS新人冒険者、勝つまで帰れま10よ!」


「ええっ!? ちょっ! アイラさん!?」


「よし来た! 全魔力回路解放! 異次元の宝物庫から天の裁きを!」


「ううっ、推しは傷つけたくないけどやるしかないっ! 闇よ我の問いかけに応えよ! かの者を闇に落とせ!」


「セバス、いくわよ」


「はい、お嬢様」


「轟け雷鳴!」


「吹き荒れろ、暴風!!」


おおっ、すごい魔力!!

この子達将来は凄い冒険者になりそう!

私のギルドにいたら絶対退屈しないよこれ!

でもなー、私のこと仕事で狙ってるんでしょー、嫌だなー仲間にしたいなー。


『宝剣乱舞!!』


影の国への強制追放クリミナル・ダン・スカー


『『風雷夢想!!』』


ステージに描かれた魔法陣から、無数の影の手が飛び出て私に絡みつく。

空からは容赦なく武器が降り注ぐ。

そして真正面からは竜巻と雷が一直線に私向かって放たれた。

正直いって、全部私一人を消せる威力だ。

あれ? この子達私を殺しに来たの?

だけど、ここで負ける私じゃないっ!


全てを飲み込む悲しき終わりトリステッツア・カンツェラーレ!!』


アイドルスマイルを決めて、マイク使って高らかに叫ぶ。

背後に浮かんだ魔法陣は眩い光を放ち全ての攻撃を浄化する。

術者達は絶望した表情を私に見せる。

その後は簡単、愛刀を抜き思いっ切り一振


戦乙女の斬撃ヴァルキリア・スラッシュ!!」


その衝撃波に彼らは吹き飛ばされて壁に打ちつけられた。


「この私を、連れ去ろうなんて100年早ーい!!」


満足しながら笑って剣を床に刺して、カメラの前で言ってやった。

ふふん、どーよSS級になった私の力は!

前の浄化魔法を改良して編み出した、無効化魔法! あらゆる魔法を浄化して無効化する、最強の技!

ちなみに、バカ魔力食うので1戦闘につき1回しか使えないけど!


「·····ばっ、馬鹿つえー」


「ううっ、アイラしゃま·····お慈悲をお慈悲を下さいいい!!」


「セバスぅ·····まだ立てる?」


「えぇ、何とか·····ですがギリギリです」


「きゃー! 私強すぎ! 見てました!?全国の皆様! この私可愛くて最強な愛の宣教師、シロガネ・アイラの勇姿を!きゃはっ☆」


カメラをマイクを持ってウインクする。

これぞ勝利の決めポーズ、キラッ☆

さて勝った第3部完、帰ろ、帰ろ~これ帰っていいよね?


「あー! やっと見っけた!」


はぁ、またお客様? ·····いい加減にしてよ


「シロガネ・アイラ! 俺と一緒に来い!」


「新手の告白か何か?悪いけど、私心に決めてる人がいるの、それ以外は全部受け付けないから!」


「うっわー、もしかしてまだ厄介オタクなのお前? 20歳じゃん」


「じゃかしい!! つーか、その呼び方するなんてお前私のファンじゃないな!!」


「·····ファンじゃねーよ、昔っからお前は俺の倒す敵だ!」


「ふーんなるほどね、じゃあアンタもこのお客人と同じって訳だ」


倒れた4人を見ながら、私は戦闘態勢に再び入る。

この金髪赤眼野郎を滅多打ちにしないと私の気がすまない!

だけど、なんで少し悲しそうな顔をしたんだ?

さっきの4人とちょっと違う気がするけど·····でも関係ない!

私はこいつをぶっ倒す!

理由はなんかムカつくから!!

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