第8話

街のど真ん中にある大きなギルド。

その前に集まるのは希望を持った志願者達。


「うひょー今年も大量だなー」


「そうね、イチヤくん」


「これも全て俺のおかげだな!」


「違うでしょ、うちの子達が頑張ったからここまで大きくなったの!」


「いててて、耳を引っ張るなよミーヤちゃん!」


「マスタ~、痴話喧嘩もいいけど、そろそろ挨拶するっすよ~皆したで二人のイチャイチャガン見してるっす」


「何っ!?」


銀髪の女がゆるふわとギルドマスターに注意するまで、俺たちはずっと彼らをぼーっと眺めていた。


「あーコホン! よく来た! 冒険者の卵達! 帝国一のギルドにようこそ! とりあえず今日の試練をクリアしたもの全員、入団していいぞ! じゃ、よろしくな」


「「「挨拶それだけ!?」」」


「いやー俺はどうも、硬っ苦しいのは苦手で·····本来なら俺の一番弟子がキラキラっとやってくれるんだったが、今テレビの収録に行っててなー」


·····まじかよ、アイラ。

こんな時でも仕事か。


「まぁ、とりあえず試験を始めるから、志願者達よ頑張りたまえ」


「今回はどんな試験なんだ」


「去年は集団面接、一発芸披露からのバトルロイヤルだってよ!」


「なんだよその試験イカれてんのか!?」


「······一発芸だってユーゴなんかできる?」


「······なんだってやってやら、つーかアイラはこんなやべぇ試験クリアしたってのか!?」


「ちなみに、今回の試験は、テレビ局のアイラを連れてくること。アイツめ仕事があるからって自分の仕事を放棄しやがって·····というわけで、アイラを連れて来たら即入団。オーケイ未来のギルメン諸君」


「「「うおおおおお!! やる気しかしねぇ!」」」


「ちなみに、アイラがいるテレビ局には、S級冒険者クラスの憲兵が派遣されてるから気をつけろ。テレビ局には何も話してないから」


「「「ええっ!?」」」


「じゃっ、そういうことで健闘を祈る」


ふざけた内容の試験内容に慌てふためく挑戦者達。


「なんだ、簡単じゃない。行くわよセバス」


「はい、エルメ様」


お嬢様 エルメ・アーチロイド|(15歳)

その執事 セバス・クリスチアーノ|(18歳)


「あのS級を連れてくるのか、骨が折れそうだぜ」


「反撃してくるのかなぁアイラ様·····大人しくしてて欲しいなぁ·····頑張らなきゃ」


強気な男 ライズ・アルカンタ|(15歳)

根暗な女 サイゴウド・シェル(19歳)


「アイラ様に会えるー!! よぉし、父さんに鍛えられた私の力惜しみなく発揮するぞー! ユーゴも頑張ろうね!」


「言われなくても頑張るっての! じゃあな! 先いくぜ!」


「ちょっと! 置いてかないでよ!」


こうして始まった入団試験。

我先にとテレビ局に向かう志願者達。


「オーッホッホッホ! お先にごめんあそばせ!」


「あっ! ズリィ! リムジン乗ってやがる!!」


「車なんて持ってないのに!」


「使えるものはなんでも使う、これがアーチロイド流ですわ! セバスもっと飛ばしなさいな、魔力ならいくらでも回復してあげますわ」


物凄い速度で走る黒い高級車。

まじかよ、あんなのありか!?


「おい! お嬢様! そんな長いもんじゃ小回り効かねぇぜ!」


追いかけるように車体を擦り付けて煽るバイク。


「ちょっと! 何すんのよ! これ高いのよ!」


「高いもん乗ってくるのが悪ぃんだよ!!」


おいおい、もう差をつけられてるぞ。

早くテレビ局に行かないと!


「·····我、闇を司るもの·····」


「やべっ! ここから離れるぞミソラ!」


「あっ、ユーゴ!!」


怪しげに光る地面に危険を感じてその場から逃げた。


「かの者達を生贄と捧げ! 我の血肉となれ! 闇よ全てを取り込め!ダークネス・エボルヴ!!」


その直感は当たり、地面の魔法陣がブラックホールに変わり、中からウネウネと触手のような闇が志願者達を飲み込んだ。


「行く前にライバル達を消滅させなきゃ·····就職しなきゃ、皆に怒られる·····頑張らなきゃ、落ちこぼれじゃないって証明しなきゃ」


ブツブツいいながらパーカーの女は近くの馬を奪ってテレビ局に向かう。


「やばっ······あんなのいるなんて聞いてない」


「落ち込んでる場合か! 行くぞ!!」


「うっ、うん!!」


俺達も遅れをとるまいとテレビ局まで走り出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る