第5話

「おはようございます、アイラ様」


「おはよーリオさん。昨日は泊めてくれてありがと」


「いえ、執務室は誰も使いませんので。一応馬車を用意することが出来たんですが、その·····スクール生の遠足と被って相席になるんですが·····」


·····えぇ、まじですか。


「げぇっ! シロガネ・アイラ!」


·····そしてまた君か。


「わぁ! アイラ様だ!」


「ユーゴ、アイラ様と知り合いなのか!?」


馬車に先に乗っていたスクール生。

顔見知りが1人と全く知らない2人。

ちなみに、空いてた席は顔見知りの隣だけ。

ちょっと気まずい。


「はいっ! アイラブユー!」


「「生アイラブユー!!」」


「·····やっぱ、納得いかねぇ、どうしてそんなふざけてるのに強えんだよ」


「そりゃ、愛の力よ少年。誰かの事を思うだけで強くなれるのさ」


得意げに言うとユーゴは呆れた様な顔をする。


「まぁ、師匠の受け売りだけどね。私は8歳から師匠の近くで鍛えてたから他の子よりちょっぴり強いんだ」


「「「はっ、8歳!? 」」」


「うん」


「8歳っていったら、俺達は普通に遊んでたぞ!?」


「アイラ様凄すぎ!! なんで!? なんで弟子入りしたの!?」


「師匠がかっこよかったから。惚れた女を守るため戦ってた師匠はまじで、かっこよかった·····それに憧れて勝手に師匠って呼んでたら魔法とか教えてくれたんだ」


「「アイラ様まじパネェ! 」」


向かいの子供達が目を輝かせる。


「·····おっ、お前なんでそんな理由で」


「だから、愛の力だよ。私の好きな人の隣に立つ為に頑張ってるの。セイバー様のヒロインの元ネタになる為なら命もかけれる」


「タダの厄介オタクじゃねーか!!」


「そうだよ、何が悪い少年」


「つーかなんで、お前アイドルやってんだよ!!」


「元ネタになる為、知名度を上げてたの。最初の頃は冒険者家業も忙しくなかったから副業でやってた」


「空いた口が塞がんねえよ·····」


「ユーゴ君も強くなりたいなら、愛を知りなさい、愛を。守れる人や目標があると強くなるから」


「·····お前とお前の師匠だけだろ」


「酷っ!」


「ごめんアイラ様それは俺も同感」


「私も」


申し訳なさそうに手を挙げる2人。


「あーうんうん、そうだよねーあはは。でも皆いずれわかる日が来るよ」


「ひひィーン!!」


「「「うわっ!?」」」


突然馬が悲鳴をあげたと思ったら、急に馬車が倒れる。


「あっ、あああああ!!!!」


男の悲鳴と共に、血飛沫が窓に飛び散った。

御者何かに襲われた!?

ちょっと、やばいかもなこれ!


「皆ちょっと、そこから動かないで」


横たわった馬車から飛び出て外の状況を確認する。

御者の近くには、気持ち悪い緑色のモンスター


「よりによってヒツゴブリンか·····あんま戦いたくないけどやるっきゃないっ!」


ヒツゴブリン。

繁殖することしか考えていない小鬼のモンスター。

美しいものと交尾しようと考えているため、種族問わず襲いかかる。


「ライトニング・バースト!!」


ヒツゴブリンは光の波動で消し炭になった。

·····ざっこ! 手応えなさすぎない?

まぁ、早く倒せてよかったけど


「御者さん大丈夫? 傷薬かけるから待ってて·····」


「あっ、·····だめ、逃げっ」


「なにどうした」


「アイラー!! 後ろっ!」


「ユーゴ! 出てくるなって、えっ? 後ろ?」


生暖かい荒い風が、一定間隔で私の髪を撫でる。

ふしゅーふしゅーって、嫌な予感がするんだけど·····

恐る恐る後ろを見ると、そこには豚のような鬼が、ヨダレをたらし鼻息を荒くしてた。


「げぇええ! ゴブリンキングとゴブリンプリンセス!!」


ゴブリンキング・ゴブリンプリンセス

ヒツゴブリンの親玉。

苗床を探し見つけたらすぐに襲う。

ヒツゴブリンよりも悪質。


·····おいおい、苗床って言ってもちょうどいいのはいな·····いや私か!

参ったなーたしかに最高かわいいアイドルだしなーまいった·····


「うわあああ!!!」


「きゃああああ!!!」


ゴブリンは私に目もくれず、馬車の中にいた子供達を奪い去ろうとした。


「こんの、ロリショタがああああああ!!!!」


あまりにも自分が恥ずかしくて、理不尽な怒りをゴブリン共にぶつけた。


「·····性癖によって襲う対象変えるとか本当に気持ち悪いっ!」


ゴブリン共をぶっ飛ばした拳が少し赤くなった。


「すっげー、あれがS級冒険者」


「かっこいい·····」


「アイラ·····まじで強えのかよ」


「ぐぎゃあああ!!」


「ふっ、悲鳴をあげるだなんて、王の風上にもおけな····」


その声に反応するかのように、そこらじゅうから増えてくるヒツゴブリン。

それに加えて、スライム、タコ型のモンスター、オーク、がぞろぞろと私達の前に現れた。


「なんで、同人三銃士みたいなモンスターが出てくるんだよ!! 援軍呼ぶとかまじでせっこ! 王様なら一人強く圧倒的にでしょ!!」


このままだと、皆揃って魔物の親だ。

ひいっ、ドラゴンよりも恐ろしい!

死ぬより酷い目にあわされる!


「ぎゃああああああ!! 」


「「ああ!? ユーゴ!!」」


姫の方に連れてかれた、ユーゴ。

いやー可愛いショタだから仕方ないかー

プリンセスいい趣味してんね、金髪赤眼。

将来はおそらく可愛い系のイケメンだ。

つーかキングの方は根性ねーなー、吹っ飛んで壁にめり込んでる、まるでやむ·····って、言ってる場合か!! 助けないと!!


「全魔力回路解放!! 死に物狂いでユーゴを取り返せええ!!」


魔獣の群れに、剣を振りかざして思い切りダイブ。

切り下ろした瞬間その衝撃波で地面が割れる。

ついでに何体か消し炭になる。

そして、第2攻撃。

振りかざした時に魔法陣を描き、空中に浮かぶ魔方陣から流星が降り注ぐ。


「凍れ! スライム! ヘルブリザード!」


ガチゴチにスライム固めて、足場を作る。

その後は、口から火を吹いて豚を丸焼きに、タコはたこ焼きに。


「プリンセス! お前は攫うんじゃなくて、攫われるがわでしょ!」


「グギャアア!!」


獲物は渡さんと言うばかりに、彼女は魔法を撃ってくる。

地面から鋭い根っこを出したり、殺傷力が高い泥団子飛ばしてきたり、当たったらやばい攻撃を出してくる。

だけど私は彼女に近づいていく。


「アイラ! 逃げろ! 俺なんかいいから!」

|(いくらアイラでも、この怪物に勝てるわけ·····発情期のゴブリンプリンセスなんてS級が束にならなきゃ敵わない·····)


「砲撃展開!一斉砲火! ダイナミック・フォイア!!」


手を合わせて、念じると私の背後に重火器が次々と異空間から放出される。

私の合図とともにそれらは敵へと放たれる。

至近距離からの攻撃で、彼女は逃げることが出来ずユーゴを庇うように私に背を向ける


「ちょっ! バカアイラ!! ころすっ·····えっ?」


だけど着弾する前に、捕まっていたユーゴは別の私が助け出す。


「秘技、影分身の術」


助け出した直後に砲撃は彼女な命中する。

分身を私と融合してユーゴを腕に抱える。


「うわぁ·····よく燃える」


「燃えてるって言うか、消し炭になってんぞ!? つーか森吹き飛んでるし!!」


ミサイル等が着弾した場所はボッコボコのクレーターに。


「あっ、愛の力はさいきょーだって、いった、おえっぷ」


「ちょっ! アイラ大丈夫か!?」


「·····大丈夫、フルバーストモードだったから、その反動」


おっえー気持ち悪っ、一気に魔力使いすぎると反動がでかいのよねー。

私もまだまだだなぁ·····


「·····なんでそんなに」


「·····ユーゴが幸せに生きる為。あんなのに掴まっちゃ死ななくても幸せな人生は生きれるわけないからね」


「·····!!」


「おえー気持ち悪っ、ユーゴーごめん、降ろしていい?」


「そんなんなら早く降ろせよ! たっく、支えてやるからしっかりしろ!」


「あははごめーん」


ふらふらになりながらも、私達は馬車へと戻った。


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